左サイドからのチャンスメイクと中央攻撃

 Jリーグはオフシーズンということで、久々に真剣にサッカーを見た気がします。
 アジア杯がこの時期にあることは、サッカーファンにとっては良いのかもしれません。
 しかし、やはりW杯直後の冬にアジア杯というのは、選手の体調面において心配な面もありますが…。


 日本代表はアギーレ監督に関して、ずいぶんと騒がしい状況になってしまっています。
 実際に何が起こったのかはわかりませんが、何にせよ日本代表においてピッチ上で作り上げてきたチームに関しては偽りはないはずで、ひとまずは静観してアジア杯に集中したいところではないかと思います。



 アジア杯開幕前の練習から日本代表は、サイドからのクロス攻撃に関して積極的に取り組んできたようです。
 これまでの試合でもアギーレ監督はサイド攻撃を狙っていた印象があるのですが、クロスを上げられてもチャンスを作りきれなかったことが多かったですし、アジア杯でもそこが1つの注目点ではないかと思っていました。
 アジア杯初戦となったパレスチナ代表戦でも、サイドからの攻撃は上手くいっていたのではないでしょうか。


 特に左サイドからの形が、しっかりと組織立って作れていた印象です。
 CBから森重や長谷部が、長友の後方から持ち上がってチャンスを作っていく形。
 森重が左前に出ても長谷部が下がってサポートするなど、3バックのような形でビルドアップを形成していました。
 それに反応して長友が飛び出して行って、乾が外から中に入って長友の前を開ける。
 あるいは中央よりの乾や香川がくさびを受けることで、相手サイドを中央に引き寄せる。
 その流れがスムーズに出来ていた印象です。



 実際の試合でもキックオフ直後から左サイドでチャンスを作ります。
 長谷部が左サイド後方から持ち上がると、左SHの乾がすっと中に入って長友の前を開けます。
 長谷部から長友に長いパスをつなぐと、長友は切り返して右足でクロス。
 中央の岡崎がすらして、ファーの本田がゴールを狙いますがオフサイド
 しかし、中央の関係が非常によく、良い展開だったと思います。 
 その後も日本は、左サイドからチャンスを作ります。


 そして、前半8分に遠藤がミドルシュートを決めて日本が先制。
 このシーンも森重が左に開いて長友が前に出ていった瞬間に、森重が乾に縦パス。
 乾が反転して間を向いて、遠藤が受けるという動きでした。
 パレスチナの守備の甘さも目立ちましたが、それまでに左サイドから攻撃を作っていたからこそ、相手が長友の動きを警戒して中央の乾が空き、乾が前を向いてボールを受けたことで、今度は遠藤が空いたのだと思います。
 サイドを攻めておいてインサイドを使う形はこれまでの試合でも見られたと思いますし、1つの狙いと言えるのではないかと思います。



 前半25分にも、森重から長友へ裏を突いた浮き球のパス。
 これを長友が粘って折り返して乾が触り、香川がシュート。
 これを岡崎が頭に当てて、2点目のゴールとなります。
 前半44分には左サイドからのCKでショートコーナー唐つないでいくと、香川がペナルティエリアで倒されます。
 これで得たPKを本田が決めて3-0で試合を折り返します。



 後半開始からは、乾に代えて清武を投入。
 その清武がらしさを見せたプレスからボールを奪うと、香川につないで遠藤に展開。
 遠藤が先制ゴールを上げた位置に近いところからミドルシュートを放つもこれはGK正面。
 そのシュートで得たCKからショートコーナーでボールを受けた香川が反転して相手をかわし、センタリングを上げると吉田がフリーでゴール
 これで4-0となり、早くも勝負は決まったと思います。
 

 その後は前半あまり作れなかった、右サイドからの攻撃の形が何度か出来るようになります。
 前半から本田がかなり中央寄りの高い位置でプレーしており、酒井高の前を開ける形になっていました。
 本田がゴール前でプレーすることでゴール前の厚みを増やすこと、酒井の前を開けることによって左で人数をかけて右に大きく展開という狙いがあったのではないでしょうか。
 しかし、その右サイドからの攻撃上手く作れなかった。
 そこを改善するために、後半からは酒井にボールが渡った際に、遠藤が近くでサポートする形が増えていた印象です。



 けれども、後半13分にその遠藤が交代してから、試合は停滞状態になってしまいました。
 試合も5-0になって、両チームの選手共にモチベーションが下がったという面もあったでしょうし、運動量も落ちていったという部分もあったと思います。
 しかし、そういった状況だからこそ、遠藤の作るような緩急が欲しく感じる展開でした。
 もちろん今後の大会を考えれば、遠藤を休ませたのは正解だろうと思いますが。


 そのままのタイプでいけば柴崎を使った方がよかったのかもしれませんが、柴崎はインフルエンザ空けでしたし、無理をさせなかったのかもしれません。
 また、左サイドを争う乾、清武、武藤といって選手をあえて使い、今後も途中投入される可能性があるであろう豊田も使って、モチベーションを上げていこうという意味合いもあったのかなとも思います。
 しかし、遠藤のそのままの代役がいないのは仕方ないとはいえ、柴崎がいなくとも長谷部、香川、本田といった選手はいたわけで、もう少し試合をうまくコントロールしたいところだったのではないでしょうか。
 特に残念だったのは攻め焦って、パスミスなどが増えていったところだったように思います。



 とはいえ、4-0というスコアを考えれば仕方のない部分もあったのかもしれません。
 試合内容がいまいち盛り上がりきらなかったのも、日本の出来以上にパレスチナが攻守に強みを見せられなかったところに大きな問題があったのではないかと思います。
 中東のチームは守備組織はアバウトでもカウンターは怖い…なんてことがあったりしますが、そういった部分もあまり感じなかったですね。
 それでも中盤のラインを抜けられると対応が後手に回ることが多いのは、現在の日本代表の課題の1つとなっていますが。


 アジアのレベルが上がってきたとはいえ、日本の立場を考えればこういった試合になることこともあるでしょう。
 その中で何が見つかったかが重要だと思うのですが、まず心配されたコンディションに大きな問題はなさそうで安心しました。
 欧州、日本とは逆の季節になるオーストラリアでの開催で体調管理も難しいと思うのですが、思ったよりも選手たちは動けていたように思います。


 また、サイド攻撃の連携に関しては、今まで以上にスムーズになっているのではないでしょうか。
 今までは長友をうまく生かしきれなかった印象もありましたが、この試合では左サイドから多くのチャンスを作れていました。
 乾も調子は良さそうで仕掛けの切れはもちろんのこと、うまく連動して長友の動きを活かせていたと思います。
 その左サイドが警戒された時に中央を使う形も出来ていましたし、もう少し効果的に右サイドを使いっていきたいといったところが今後の攻撃のポイントでしょうか。
 もちろん左サイド、中央に関してもより強い相手と対戦した時に機能するかどうかはわかりませんが、やろうとするサッカーの形ははっきり見えた試合だったように思います。
 それ以上のことは相手との力差もあって何とも言いにくい試合ではあったと思いますが、まずは4-0ですし順調と言っていい滑り出しということになるのではないでしょうか。