2014シーズンを振り返る キム・ヒョヌン編
キムは一昨年ジェフに加入し、プロ入り1年目にして25試合に出場。
2014年はリーグ戦35試合に出場し、天皇杯でも5試合出場と、主力選手の1人として活躍しました。
5月3日の第11節群馬戦ではプロ入り初ゴールも決め、合計でリーグ戦ゴールをあげてセットプレーのターゲットの1人にもなっていました。
ここ2年間のジェフで、最も成長したのがキムだったのではないかと思います。
もともとフィジカルが強く、スピードもあって、空中戦にも強いDFということで、近年のジェフにはいなかったタイプの選手だと思います。
それだけに個人的に将来性をかなり期待していたのですが、一方で当初はプレーに粗の多い選手でもありました。
キック力もあるし足元の技術がないわけではないと思うのですが、ボールを持つと戸惑って判断が遅れたり、トラップが流れたりすることが多く、落ち着いたパス回しが出来なかったり。
守備でも相手のマークについていきすぎて、その裏を取られてやられることがあるなど、長所であるフィジカルの強さを上手く使いこない部分があったと思います。
それに加えて2013年序盤は慣れないSBでのプレーも多く、評価の分かれる選手でもあったと思います
それでも我慢して起用し続けていった結果、試合をこなしていく中で成長していき、攻守にプレーが安定。
2014年はシーズン序盤こそ体調不良もあったそうで周りから出遅れてしまいましたが、5月以降に大岩からポジションを奪うかたちでCBのポジションを勝ち取ると、監督交代後もそのままレギュラー選手として活躍しました。
多くのレギュラーメンバーが欠場した天皇杯にも5試合出場したことから考えても、替えの利かない選手として高く評価されていたのではないでしょうか。
特に守備面で相手との間合いの取り方が上手くなってきた印象で、相手としっかりと競り合えるようになったように思います。
裏を取られて後追いになるようなケースも少なくなり、イージーなミスも減っていきました。
手を使って留めてしまうプレーに関してはまだ目立つところもあるので、もう少し改善してほしいところでもありますが、徐々に減ってきているようにも思います。
公式戦での出場経験を積んで自信が付いてきたのか、ボール扱いに関しても前ほど判断に迷うことは少なくなってきたように感じます。
シーズン終盤は地上戦でも空中戦でも相手に勝てるキムの存在が非常に大きくなり、10月の4連勝に大きく貢献した選手だと思います。
相手のエースをマークして封じる"エースキラー"として、機能していたと言えるのではないでしょうか。
5月からほぼ毎試合出場してきた状況で、大きくコンディションを落とさなかったことも、見逃せないポイントではないかと思います。
ベテランが多くシーズンを通して安定したプレーが出来ない選手が多い中で、若く体力的にも優れたキムの存在は際立っていたと言えるのではないでしょうか。
シーズン終盤の活躍を見ると、2014年のジェフMVP候補の1人と言ってもいいのかもしれません。
また、前年から感じていましたが、チームが劣勢になったり味方選手が油断した時にこそ頑張れる選手で、「ここぞ」という時の攻撃参加や守備への戻りにおいて全力でダッシュする姿も印象的です。
「メンタルが強い選手」というと声で味方を鼓舞したり身振り手振りで周りを盛り上げる選手の方が一般的な印象がありますが、キムのように苦しい時にプレーで見せる選手もまた「メンタルの強い選手」と言えるはずです。
むしろそういった選手こそが本当の意味で「メンタルの強い選手」と言えるのかもしれませんし、"戦える選手"ということになるのではないでしょうか。
近年のジェフにはそういった選手が少なく、周りの雰囲気に左右されがちな選手が多い印象があるだけに、キムのようなタイプの選手は極めて貴重な存在ではないかと思います。
その点は周りの選手も、もう少し見習ってほしいところではないかと思います。
同年代の日本人CBでは、なかなかここまでフィジカルに強い選手はいないのではないかと思います。
空中戦だけに強い選手やスピードでは負けないといった選手はいるかもしれませんが、両面で計算できるCBというのは数少ないのではないでしょうか。
監督からしても、使い勝手良い選手として育ってきたと言えるのではないかと思います。
以前、ジェフが育成型のチームとして評価されていたころは、こういったケースが少なくなかったと思います。
若く粗さが残る選手でも、ポテンシャルがある選手を我慢して起用し、育てていく。
ベテラン選手を補強する予算もなかったのでそうせざるを得なかったという面もあったのでしょうが、そうやって少しずつでも成長していく選手を見守るのが好きだというファンやサポーターも多かったと思います。
それだけにキムの成長を見守る経緯は、懐かしくもありました。
現在ではある程度の選手を獲得できるだけの予算のあるクラブになったとはいえ、J1レギュラークラスの選手を獲得できるようなレベルでもないわけで、やはり今回のようなケースをもっと増やしていかなければいけないと思います。
もっとも、ただ若い選手を起用すればいいというわけでもないはずですし、その選手がどれほどのポテンシャルがあるのか、どこまでの伸び代があるのかを見定められるかどうかも重要だと思います。
そういった意味においても、現時点では育成に成功したと言えるであろうキムの例は、貴重であると言えるのではないでしょうか。
ただ、キムは韓国籍選手であり、兵役が控えていることになります。
2年間の兵役中もプレーするためには、尚州尚武か警察庁サッカー団に加入しなければならないはずです。
尚州尚武の場合は28歳までに移籍しなければいけないようですが、そのためには前年Kリーグでプレーしなければいけないため、Jリーグでプレーする韓国籍選手の多くは27歳になる年にKリーグに移籍することが多くなっています。
そこがどうしても難しいところではありますが、それだけ悩ましいのもキムがここまで成長してくれたからこそ。
まだ兵役までは時間がありますし、ひとまず2015シーズンはDFラインの主軸としての活躍を期待したいところではないでしょうか。