2014シーズンを振り返る 天野貴史編

 例年だと出場試合数の少ない選手はどうしても記述内容が乏しくなってしまうので割愛させてもらっているのですが、天野は新加入選手ということもあって取り上げさせてもらいます。
 昨シーズンのチーム全体を振り返る上でも、気になる存在の1人だったと思いますしね。
 結局、今回はほとんどの選手を、取り上げることになるかもしれません。



 横浜FMからレンタル移籍で加入となった天野。
 米倉、高橋が抜けて手薄になった右SBの選手として期待され、開幕戦でもスタメン出場を果たしました。
 しかし、結局出場試合数は7にとどまり、5月6日の第12節岐阜戦以来、出場機会はなく終わりました。
 多くのメンバーを入れ替えた天皇杯でも出番はなく、結果的に関塚監督になってからは1試合も出場しなかったことになります。


 右SBが本職の選手ということで、攻撃面やポジショニングなどはさすがと感じる部分がありました。
 クロスに関しても中村のように巻いたキックや米倉のようなライナー性の速いボールではないものの、素直で精度の高いボールを蹴ることが出来る選手だと思います。
 現メンバーの中では数少ない、右足でのプレースキッカーとしても可能性を感じる部分がありました。
 鈴木監督は得点力向上に関して「クロスからの得点」を期待しているという話をしていましたし、そういった意味でも当初のチーム作りにおいて重要な選手の1人だったはずです。
 前年左SBでプレーしていた高橋はビルドアップや守備面で重要な存在になっていたものの、クロスや仕掛けの面では物足りなさもあっただけに、両SBからクロスを上げられる状況を作って攻撃のバリエーションを増やしたいという思いがあったのではないでしょうか。



 しかし、守備においては課題の方が目立ってしまった。
 攻撃時の動きを見ても決して単純にスピードがないといった選手ではないと思うのですが、前を向いている状況で後方へ切り替える際の反転スピードが遅く、そこでやられてしまうことが多かった。
 決して予測などが間違っていたわけではなくしっかり反応はするのだけれど、一歩…または半歩遅れてクロスを上げられてしまう。
 身長162㎝とサイズが大きい選手ではなく跳ね返せるタイプのDFというわけでもないだけに、地上戦の一対一で後手に回ることが多いというのは、SBとしてかなり苦しい部分があったように思います。


 天野は2012年3月に、全治8ヶ月となる左膝前十字靱帯の損傷を経験しています。
 それ以降なかなか試合に出場できなくなったようですし、この怪我によって前後の踏ん張りが利かなくなったという部分もあるのでしょうか。
 もしそうだとしたら、非常に残念な話ではありますが…。
 


 天野が守備面で期待通りとはいかなかったことが、今シーズン序盤のチーム作りにおいて大きな足かせになってしまったと思います。
 天野、竹内、キムなどを試すも上手くいかず、5月以降コンディションの戻ってきたキムをCBに回し、大岩を右SBに移したことでようやく落ち着いていきました。
 しかし、その間に湘南に大敗もしてしまいましたし、状況を考えれば4月末までに監督交代の方向は決まっていた可能性もあるのでしょう。


 そして、関塚監督となって、シーズン終盤には右SBに山口慶がレギュラー選手として起用されます。
 広範囲へのカバーリング能力、気の利いた守備といった面では大きく貢献していましたが、プレーオフ決勝などを思い返しても攻撃面では課題が大きく残る結果となりました。
 シーズン終盤は左サイドからの攻撃を警戒されることも多かったので、右サイドの攻撃力の問題が目立つ試合が増えていたわけですが、プレーオフ決勝においては山形があえて右サイドをフリーにしていたようにすら感じました。



 結局、大岩で一度は固定化されていたとはいえ、シーズンを通して右SBは悩みの種となっていたと思いますし、監督が代わってもそこは変わらなかったと言えると思います。
 そう考えても、やはりクロスの精度を期待できる本職の右SBを補強しようという狙いは間違っていなかったと思います。
 天野以外のSBを考えても大岩、慶、竹内、キムと本職と呼べる選手はいませんし(大岩に関してはSBが本職になりつつあるようにも思いますが)、それによる弊害も感じるところは多かった。
 必ず本職の選手をそのポジションに起用した方ががいいかと言えばそうとも言い切れないでしょうが、本来はCBや守備的なボランチの選手を使わざるをえなかったことで、ボールの持ち方1つ取ってもうまく前におけなかったり、ポジショニング等にも迷いを感じる部分が出てしまうように思います。
 しかし、だからこそ天野の誤算は、2014シーズンにおいて大きなマイナスだったということになると思います。


 2015シーズンには、専修大から北爪が加入することになります。
 振り返ってみれば2013シーズンの米倉、高橋も本来はSBではなかったわけですし、天野に続いて期待のSBが加入することになります。
 しかし、2014シーズン終盤は右SBに慶を置いてカバーリングをさせて、守備の課題を埋めて言った印象でした。
 新人選手にそれを任せるのは酷ではないかとも思います。


 若手選手・新人選手が育つチームを作るためには、なるべく伸び伸びと自分が得意な分野でチャレンジさせられるような環境を作ってあげるべきではないかと思います。
 それを中堅やベテラン選手がフォローするような状況を作れれば理想ではないかと思うわけですが、2014年は戦術的な課題もあって若手とは言い難いですが中堅の大岩からベテランの慶に移った経緯があります。
 しかし、その慶も現役引退、竹内も退団。
 そう考えていくと、やはり新人の北爪獲得だけでは不安な面があるのではないかと思うのですが…。



 天野に関してはレンタル期間が1月末なので、そろそろ何かしらの情報が出てくるのでしょうか。
 現状だとジェフに残ってもあまり良いことはないと思いますし、かといって横浜FM復帰できるかどうか…といった状況だと思うのですが、新たに移籍先を探すことになるのでしょうか。
 とはいえ、トライアウトにも出場していないですし、どうなっているのかよく分からないですね。
 もしジェフ残留となれば、より一層守備面で頑張ってほしいところではないかと思いますが。


 なお、昨日今年初めてとなった移籍リストの更新が発表されましたが、ジェフの選手の追加はありませんでした。
 通常12月31日までに交渉を終え(1月1日から1月31日までの契約の場合、12月31日までに交渉を終えなければならない)、契約満了者はただちに移籍リストに登録しなければいけません。
 しかし、選手とクラブの合意があれば移籍リスト登録を延期することも出来るという決まりもあるので、必ずしも移籍リストに登録されるわけではないということになります。
 とはいえ、普通に考えれば、ジェフからは新たな契約満了者はいないということでしょうか…。
 ただ、どちらにせよ天野、山中、幸野といったレンタル移籍組の動向は何の発表もないだけに、来季の去就がわからないままとなっています。
 新体制発表会まで引っ張るようなことでもないと思いますし、そろそろ動向を知りたいところですね…。