2014シーズン後半を振り返る 後編

 間が空きましたが、前編に続いて。
 9月28日の第34節東京V戦で長らくレギュラー選手として出場していた井出を外し、8月にFC東京からレンタルで加入した幸野をスタメン起用。
 ボランチの一角にも兵働、ナムといったパサータイプの選手を使ってきましたが、勇人と健太郎のコンビになりました。
 また、右SBには9月14日第31節北九州戦から山口慶が、トップ下には9月20日の第32節岐阜戦から町田が起用されるようになっていました。


 東京V戦でスタメンとなった選手たちが、シーズン終盤のレギュラーになっていきます。
 町田、幸野、勇人、健太郎、慶と運動量豊富で、カバーリングができて守備で貢献できる選手が並んだことになります。
 その試合後にも話しましたが、これによってプレスが改善。
 特に一歩目のアプローチが早くフィジカルもある幸野の存在は、守備での貢献が非常に大きかったと思います。


 攻撃においてもボールを受ける動きが上手く、運動量豊富でパスワークの潤滑油になれる町田の起用によって、主にサイドでパスをつなげるようになっていきました。
 加えて幸野も動き回ることが出来てパスワークで貢献できる選手で、この2人によってパスワークの改善と2列目の流動性が増していきます。
 また、この頃から1トップの森本がサイドに流れて、パスワークに絡むパターンも稀に見られるようになっていきました。


 東京V戦では0-0の引き分けに終わりましたが、攻守に改善を感じその翌戦から4連勝を果たします。
 ベテランが多く夏場の疲れが解消されるのか、毎年10月前後には好調な時期が来るわけですが、今年もそれに合わせて成績を伸ばしたことになりました。
 結局この10月だけで勝点を大きく伸ばしたことになり、順位も5位にまで浮上しました。



 しかし、11月はラスト2試合に下位の富山、讃岐にこそ勝てたものの、2勝1敗1分と苦戦。
 井出、兵働などがスタメンから抜けたこともあって、シーズン終盤は攻撃において決め手に欠く状況になっていったと思います。
 得点面は試合終盤にケンペスを投入してパワープレー気味に狙う試合が多く、メインのスタイルではゴールが遠く感じる状況でした。
 守備面でも全体のラインが下がりがちになり、サイドやボランチがまた空くようになってしまいます。
 10月にはフレッシュな状態だった幸野や勇人の調子が、11月になって下降気味になってしまったことも大きかったのではないでしょうか。
 特に3バック相手へのプレスのかけ方、3トップに4バックがつられて外が空いてしまう問題は最後まで解決しないまま今シーズンを終えてしまった印象で、相手チームにサイドを狙われて苦戦してしまうことが増えていきました。


 結果的に北九州が4戦勝ち星なしの3連敗、磐田にいたっては6戦勝ちなしでリーグ戦を終えたため3位に浮上することになりましたが、最終成績ではJ2降格後の過去5年と大きく変わらず。
 内容も決して良いとは言えない状況で、プレーオフに臨むことになりました。
 そして、プレーオフ決勝では山形相手に0-1で敗戦。
 この試合に関しては、先週こちらこちらなどでも触れましたので、改めて深く言及することもないでしょう。



 ジェフはJ2生活が長引いたこともあって、ストレスが溜まった状況になっていたと思います。
 それを監督交代という手段によってどこかに責任を押し付け、それが結果的にチームの勢いに結び付いたところがあるのではないでしょうか。
 しかし、その勢いもあって結果を伸ばせた10月の4連勝以外は成績も大きく変わらず、プレーオフでも例年と同じように集中力の欠如と得点力不足で敗退。
 試合内容も大きく改善とは至らず、結局監督を交代しても根本的な問題は変わらずに、シーズンが終わってしまったというのが私の感想です。


 改めて振り返ってみても、関塚監督はコツコツと戦術などを積み重ねて右肩上がりにチームを成長させていくというよりは、選手の組み合せとモチベーションコントロールでチームの仕上げなどを任された方が良いセレクタータイプの監督なのではないかと感じます。
 だから、石崎監督がベースを作り上げていたのではないかと思われる川崎では成功し、世代交代に失敗したと言われていた磐田では苦労してしまったのではないかとも思います。
 どちらかといえば、代表向きの監督でもあるのかもしれません。


 それだけにやはり完成度の高い選手が必要になるのではないかと思います。
 それはセレクタータイプの監督には良くある傾向として言えるのでしょう。
 逆に守備に課題があるなど、穴のある選手は難しい。
 その結果、スタメンから外れていたのがケンペスであり、兵働であり、井出だったようにも思います。
 大塚も決して守備が得意ではなく運動量などには課題がある選手ですし、ナムあたりもまだ荒削りな選手と言えるでしょう。



 攻撃においては確実に崩すというより相手に隙があればどんな状況でも早くゴール前にボールを供給することを大事にしていますから、やはり組織力というより個人技が大事になってくるでしょう。
 守備においてもいかにCBがゴール前で跳ね返せて、その他の選手がカバーリングでスペースを潰せるかが重要になってくるのではないかと思います。
 反町監督は「千葉はJ1仕様」のチームと話していましたが、関塚監督になってからはJ2寄りになりつつある印象です。
 攻守に個人能力で戦いそこで勝てれば(あるいは相手がミスをすれば)勝点を得られるし、そうでなければ勝ちきれない…と。
 例えばJ1相手だと少しでもボランチやサイドが空けばそこからでも決定的なチャンスを作られてしまうし、攻撃でも緻密な展開が作れなければなかなかチャンスも作れないでしょう。


 鈴木監督は自分たちのサッカーを追究し足し算でコツコツとチームを作っていこうとしていた印象がありますが、関塚監督は結果的に相手との差分で勝負する引き算で戦っている印象があります。
 ジェフのJ2での状況を考えれば後者の方が効率はいいのかもしれませんが、それで最終的にどこまでチームを引き延ばせるか。
 J2ではある程度の有意差を持って戦えるかもしれない戦力でも、それ以上先を狙えるのかどうか。


 考えてみれば開幕前は「土台作り」という話をして鈴木監督を継続し、(たぶん)成績面で満足できず関塚監督を招聘したのでしょうから、それぞれの人選は間違っていなかったのかもしれません。
 けれども、まだそこまでベースも強いものではなかったし、結果的に昇格もしきれなかった。
 これでもし博打が当たって昇格できれば予算も増え良い選手も補強できたのだろうから、フロントからすれば狙い通りともいえたのかもしれません。
 逆にいえばそれだけ今年J1に上がることが重要だったのかもしれませんが、結果的にはその博打に失敗し来年もJ2で戦うことになったということではないでしょうか。
 どちらにしても地に足の着いたチーム運営とは思えず、石崎監督にもチクリと言われてしまいました。
 このようなことを現場の監督に言われたという事実は今後を考えても決して軽いものではないと思いますし、現実問題としてしっかりと受け止めなければいけないのではないでしょうか。



 今後を考えると、このオフでどれだけ完成度が高く個人能力の秀でた選手を補強できるかという点は極めて重要だと思います。
 10月のように勢いで勝ち抜く流れというのはフルシーズンは続かないと思いますし、より一層高い戦力が求められるのではないでしょうか。
 ベース作りの1つのあり方を放棄し早期の結果を求めて失敗したのですから、その分補強で何とかしなければいけないオフになるということが言えるのかもしれません。


 しかし、実際問題としては簡単なことではないでしょう。
 観客動員数などにも苦しんでおり、強化費も右肩下がりで落ちています
 そんな中でどれだけ予算を工面し、コストパフォーマンスの良い選手が取れるかどうか。
 選手の目利きも今以上に重要になってくることでしょう。
 来季ジェフが結果を出せるかどうかはそこにかかってくるのかもしれませんが、決して楽観視できる状況ではないはずです。


 ただ、今年昇格した3クラブを思い返しても、決して予算が豊富なクラブではなかったわけで。
 しっかりとしたビジョンを持ち、長期的な視野を持って、工夫を凝らしたクラブ作りが出来るかどうか。
 今季のJ2はそういったクラブが成功した年だったと言えると思いますし、逆にジェフや磐田はそこが足りずに昇格できなかったのかもしれません。
 シーズン中に監督交代をしたものの昇格という目標に達せなかったクラブとしては、今一度そのあたりを見つめ直さなければいけないのではないかと思いますし、一から出直さなければならないオフということになるのではないでしょうか。