GK山岸の劇的なゴールで山形がPO決勝へ
プレーオフ準決勝磐田対山形。
この試合の勝者が決勝でジェフと対戦することになります。
磐田はリーグ戦ラスト6試合で勝ちなし。
リーグ終盤にここまで結果が出せずにプレーオフに突入したクラブというのは初めてだと思いますし、ジェフが3位に上がれたのも磐田の失速が非常に大きかったということになります。
その磐田がプレーオフに入って変われるのか。
一方の山形は最終節東京V戦に敗れたものの、リーグ戦ラスト8試合で6勝2敗と好調で、先日は天皇杯準決勝でジェフ戦にも勝利。
ただ、天皇杯による過密日程であることと、順位が磐田よりも下だったためアウェイゲームで、引き分けでは敗退といった条件がどのように影響するか。
ここ数試合の試合内容・成績で行けば山形が有利ではないかと考えられますが、磐田も個人技のある選手が多いし、一発勝負では何があるかわからない。
決勝で待ち構える形となったジェフとしても、注目の一戦となりました。
■山形が押し込むも同点で折り返す
磐田は前節札幌戦で途中からCBに移ったボランチの藤田を、スタートからCBで起用。
前節途中出場した田中裕人を、スタメンで使ってきました。
また、松浦に代わって山崎がスタメンに。
山崎も前節途中から出場して積極的な仕掛けを見せ、攻撃のアクセントになっていました。
両選手ともスタメンは久々で、田中にいたっては今季初スタメンとなったようです。
一方の山形は 天皇杯で出場停止だった當間が復帰。
松岡が負傷ということで、かわりにロメロ・フランクがスタメン出場となっています。
他のボランチ候補には舩津などもいたと思うのですが、この試合勝たなければいけないということで、攻撃的な選択をしてきたということでしょうか。
試合は序盤から激しい立ち上がり。
球際で激しく、攻守の切り替えが速い展開になっていました。
山形はディエゴ、川西、山崎の前3人で攻撃の形を作り、相手の守備が中央に固まってきたらサイドアタックを仕掛ける。
磐田は松井や山崎などSHの個人技を中心に、サイドから個人技でクロスを上げていく展開。
両チーム、シーズン終盤の戦い通りのサッカーになっていたと思います。
前半9分、磐田左SB岡田からのクロスを山形DFがクリアミスし、山崎が拾いシュートを放つもGK山岸が片手ではじき出します。
前半13分、今度は山形の川西が中央でタメて、磐田の左SBとCBの間を通すスルーパス。
そこに山田が飛び出していってシュートを放つも、GK八田が対応します。
前半20分には磐田が左サイドでパスを回すと、山形守備陣が同サイドに寄ってしまい、中盤中央が空いて宮崎がミドルシュート。
GK山岸が目の前に弾くも何とか反応し、得点ならず。
組織的に攻撃の形を作れていたのは、やはり山形だったと思います。
守備置いても前からのプレスが機能していて、攻守に積極的な姿勢を見せていました。
山形の方に勢いを感じる立ち上がりだったと思います。
しかし、山形は押し込まれた守備に、怪しい部分がある。
天皇杯でも感じましたが、人がボールに食いつきすぎて、その外が空いてしまう印象がある。
中盤のサイドでパスを繋ぐと中央が、SHが中央寄りにタメを作っていくとサイドの大外が空く傾向に。
先日のジェフ戦でも谷澤がタメを作ると中村が簡単に空いてしまうところがありましたが、この試合でも同様の傾向が見られました。
さらにこの試合では松岡不在で、ますます中盤の守備でバランスをとる選手がいなくなってしまったように思います。
それでも、スコアが動いたのは前半26分。
裏に走り込んだディエゴへのボールを、GK八田がクリアミス。
これを山田が拾ってピンポイントのクロスを上げ、ディエゴが頭で合わせてゴール。
これで1-0とします。
前半30分には磐田が右サイドでパスをつないぐと、中盤左にいた宮崎が開いて小林に縦パス。
小林のパスは相手に接触しますが、山崎が拾って抜け出すもゴールならず。
先制された磐田は同点ゴールを狙いに行きますが、その後はなかなかチャンスが作れない。
磐田は攻撃で連動した動きが少なく、単発での縦への動きばかりで、攻撃に厚みを感じない状況でした。
山形は守備での一歩目のアプローチが速く、その縦へのボールを封じ、相手にチャンスを作らせませんでした。
前半44分には山形のカウンター。
川西、山田と右サイドでつないで、山田がグラウンダーのクロス。
ディエゴがピタリと足元で止めて、振り向きざまにシュートを放ちますがポスト直撃。
山田のクロスをディエゴが足元で受けてシュートというパターンは、天皇杯でも見られましたね。
このまま1-0で折り返すかと思われた、前半ロスタイム。
駒野のパスを中央の宮崎が受けてシュート。
これを松井が中央で触って、最後は山崎がゴール。
駒野のパスもパスミスのように見えましたし、運もあったゴールだったと思います。
ディエゴのシュートが決まらなかったシーンも含めて、磐田にとってはラッキーな面も合っての1-1だったかなと思います。
ただ、このシーンでも宮崎がフリーになっていたこと。
押し込まれてラインが下がり過ぎていたことは、山形の問題とも言えると思います。
■GK山岸によるヘディングでのゴール
前半ラストに磐田にゴールが生まれたものの、全体的な流れは山形だったと思います。
攻守に連動した動きが出来ており、意図の感じるサッカーを展開していました。
前半終了間際に同点とされ、山形が後半攻め込むかと思われた流れでしたが、後半序盤は磐田ペースでした。
後半2分には、磐田が左サイドからCK。
駒野の鋭いボールに、藤田がフリーで合せてシュートを放ちますがGK正面。
やはり山形はセットプレーの守備に不安がある印象です。
後半5分、磐田の小林が右サイド距離のある位置から、思い切ってシュートを放つもクロスバー直撃。
後半10分には磐田の山崎が中央でターンをしてキープ。
3人、4人と囲まれますがボールを奪われず、サイドから走り込んできた前田につないだものの、前田のシュートは大きく外れます。
しかし、磐田は駒野のキック、小林のセンス、山崎のドリブルといった個人能力の高さを見せて、山形ゴールに迫ります。
山形は天皇杯でも見られたように、後半序盤から一気に失速。
そして、後半12分には、この日先制ゴールをあげたディエゴが足を負傷して交代してしまいます。
その後も山形は足を釣るようなしぐさを見せていた選手がいましたし、やはり過密日程で体力的に厳しい面があったのではないでしょうか。
それでも、後半15分には山形の素早い攻撃。
右サイド後方からのロングボールを山崎がヘディングで落として、ディエゴに変わって入った中島へ。
中島は相手DFと1対1になり、中央の山崎も走り込んでフリーになっていましたが、シュートを選択。
山崎に渡しておけば決定的なシーンでしたが、シュートは枠外に飛んでしまいます。
山形は結果的に中島が入ったことで、前線の運動量が増し、全体のラインも上がっていきました。
攻撃でも裏へのスピードが増し、カウンターでの鋭さを感じるようになっていきました。
ロメロ・フランクも積極的に前に出ていき、得点を奪いに行く姿勢をみせます。
しかし、遅攻ではディエゴがいた時のように前線の中央でタメを作ることが出来ず、そこから外へといった展開も出来なくなっていき、攻撃に変化が生まれなくなっていきました。
一方でこの時間の磐田はしっかりと動けていて、守備でも集中できていたと思います。
後半27分、磐田が攻め込んだ後に、山形のカウンター。
左右にボールを振って、途中出場の伊東が中央で1-2。
完全に抜け出しGKと1対1になりますが、ここはGK八田が何とかセーブ。
後半35分には磐田左サイドからのFKを駒野が蹴り、藤田がヘディングで合わせるもポスト直撃。
山形は後半32分にロメロ・フランクを変えて萬代を投入し、1ボランチにして攻撃的に前に出ていこうとしていました。
しかし、山形の運動量はさらに落ちていき、チャンスを作れない状況になっていきます。
磐田の方が確実に走れていた印象で、このまま磐田がプレーオフ決勝進出かと思いました。
しかし、後半ロスタイム2分。
後がない山形は、右サイドからのCKにGK山岸が攻撃参加。
石川がその山岸を狙って、ニアにボールを供給。
相手選手がマークについている状況でしたが、山岸が空中戦に勝ちヘディングシュート。
このシュートが綺麗に決まって、土壇場で2-1に。
劇的な勝利でプレーオフ決勝進出を決めました。
■決勝に向けてのコンディションと怪我人の状況
ジェフはプレーオフ初戦免除となったので、高みの見物…と思っていたのですが、思ったより楽しむ余裕はなかったです。
ジェフが試合をしているわけでもないのに、両チームの選手たちの緊迫感が伝わってきて、手に汗握る展開でした。
いっそジェフの試合を見ていたほうが、緊張しないのではと思うほどに…(笑)
攻守にチームとして意図を感じるのは、山形の方だった思います。
中央の3人でタメて駆け上がってくるサイドに展開する形はこの日も迫力がありましたし、ハイプレスも走れていた時間帯では機能していた思います。
ただ、試合全体を通じてみると、この日の山形はあまり良い出来ではなかったのかもしれません。
スタミナが持たず後半は失速してしまったし、守備でも宮崎や岡田を空けがちでした。
山形としては、ここからの1週間でコンディションを回復できるか。
コンディションが戻れば、守備の課題も克服できるのか。
この辺りが決勝に向けての注目点ではないかと思います。
この試合を見る限りだと、天皇杯をベストメンバーで戦った問題が出ていたようにも思います。
しかし、メンバーを固定化しているからこそあそこまでの連携が作れているのだとも思いますし、天皇杯でジェフに勝っておいたことによって心理的な好影響を与える可能性もある。
逆にジェフとしては、あの敗戦を割り切れるかどうかも重要になってくるかもしれません。
逆に磐田の方は、ここ数試合より出来は良かったのではないでしょうか。
連携した攻撃はなかなか作れず前田をほとんど活かせなかったし、サイド攻撃に関しても中央で攻撃を作れないからサイドにいくしかないといった意味合いが強かったと思います。
それでもここ数試合より攻撃に人数をかけられていたし、守備面でも局面で戦うことが出来ていたのではないでしょうか。
ただ、やはり勝ちきれなかったですね。
磐田は後半残り8分といったところで攻めずに時間を使ったシーンがありましたが、「同点でも勝ち抜ける」ということもあって、引き分けを狙いにいったところがあったと思います。
そういった部分がちょっとした精神面に出てしまったのかもしれない。
そして、何よりもリーグ戦ラスト6試合で1敗5分。
最後の失点は仕方のない部分もあったのかもしれませんけど、勝ち切るという強さにおいて足りない部分が、この試合でも出てしまったようにも思います。
7試合勝ちなしでプレーオフ決勝進出…というのは、さすがに無理のあるストーリーだったのではないでしょうか。
これで、プレーオフ決勝の対戦カードが決まりました。
磐田と対戦すれば同じようなサッカーをする相手との戦いになるかと思っていましたが、天皇杯に続いて山形と戦うことになります。
山形に関して気になるのは、先ほど言ったようにコンディションがどこまで回復するのかと、ディエゴ、松岡が戻ってこれるかどうか。
2人の状態によって大きくチームが変わってくると思いますし、それによって対策も変わってくるのではないでしょうか。
劇的な勝利で勝ち進むことになった山形。
ジェフも勢いがあるとはいえ、それは相手も同じこと。
ここまで来たら、最後まで強い気持ちを持って戦えるかどうかの勝負になってくるかもしれません。
それを感じさせる、山形の勝利だったと思います。