可夢偉「来年レースをするのはきついと思う」

 昨日最終戦アブダビGPの話をしましたが、あえて別枠で。
 可夢偉アブダビでのレース前にこのような話をしています。

可夢偉「来年レースをするのはきついと思うし、来年レースするのがきついということは、今後レースをすることもきついということもあるから、もしかするとこれがF1レース最後になるかもしれない、ということを踏まえて、これは思う存分、レースをしておくべきかな、と。」(STINGER

 実際、ストーブリーグはすでに動き出しているわけですが、現状のF1ははっきり2分化している印象です。
 トップでも指折りの実力があり、実績を残しているドライバーたちと。
 大口の個人スポンサーが付いて、チームに何億物資金をもついわゆるペイドライバーと。


 昔からそういった傾向はあったF1ですけど、今は中間がなくなっている印象です。
 以前はドライバー育成のために実力はあるけどまだ結果の出しきれていないドライバーや、ペイドライバーを支えるための中堅からベテランドライバーが中規模チームにいたと思うのですが、今はそういったドライバーの価値が薄れている可能性もあるのかもしれません。

アメリカでホンダへのアピールをしたわけですが、その後、特に進展がない状況だと思いますが、ホンダと同じ日本人としてどんな気持ちですか?
可夢偉「う〜ん、(言葉を選びながら)どうしたらいいんですかね。レースドライバーじゃないし、難しいところで、ボクが、こう、なにを言ったところで、なかなか社内的にいろいろな考え方の人がいると思うんで、そんな簡単じゃないなということがよくわかったんで、まぁ、できる限り自分の中で、可能性をつかめるように努力して、その結果、どうなるかな、という感じではあると思います。」

 「社内的に」と言うところが気になりますね。
 ただ、実際ホンダも長年ドライバー育成には、力を入れてきたわけで。
 その中でトヨタ出身の可夢偉を選ぶことに、難しさがあるということでしょうか。


 わからなくはない話だと思うのですけど、それならば1年間サードドライバーで働いてアピールできれば…なんて話も出ていました。
 しかし…。

可夢偉「でも、来年乗らなかったらボクは29歳でしょ、再来年30でしょ。30のオッサンが帰ってくる、といっても17とか18歳の若い子がレースしているところに入るというのは、けっこう現実的に、その歳でF1に戻ってくるというのはかなり何かが無ければまず戻ってこれないと思うし。」

 思った以上に現実的にとらえていますね。
 いろいろなことがあったからこそ、そうなったのかもしれませんが。
 ただ、実際レースをまともにすること、そしてF1で勝つことを考えると確かに簡単ではないのだろうなぁと思います。

やり残した感がある。
可夢偉「そう。そうです。まぁ、それだけです。なんとかそれで、次に来る人たちまでつなげればいいと思います。」

 「次に来る人たちまでつなげればいい」という言葉は深いし、重いですね。


 ホンダがどのように考えているのかはわかりませんが、実際に日本でのF1人気を考えると戦える日本人ドライバーが必要でしょう。
 可夢偉は歴代の日本人F1ドライバーの中でも、それが期待できる人材だと思いますし、本人が言う通り次につなぐためにも残ってほしいところだと思います。
 ただ、一方でホンダは佐藤琢磨の扱いにも苦労したところがあるし、マクラーレンと組むというところから考えても日本市場以上にまずはF1で勝つことを考えているのだろうとも思います。
 可夢偉も欧州での評価は高く十分貢献できるドライバーだとは思いますが、マクラーレンの意向も当然重要になってくるだろうし、先ほども言ったようにホンダ社内の考えもあるでしょう。
 そういったことを考えると、難しいのかもしれませんね。


 第3期ホンダ時に育った琢磨、トヨタがF1参戦に合わせて育てた可夢偉…。
 その次を考えると、なかなか出てこないかもしれない。
 そんな中で本人はまだ戦えると話している可夢偉が、志半ばでF1の舞台を退くとなれば非常に残念なことです。
 ザウバーで1勝でもできていれば、もう少しマネジメントがしっかりしていれば…など思いは尽きないですけど、それもレースというもの。
 可夢偉にとっても、ホンダや日本のレース界にとっても、良い形で"次"が迎えられればいいのですが…。