動きの硬い試合を猛攻タイムで乗り切り辛勝
混戦となっているJ1昇格プレーオフ出場権争い。
ジェフ対富山戦の前に行われた試合で、大分が讃岐に、山形が磐田に勝利。
これによりジェフはこの試合に敗れれば、プレーオフ出場圏外に落ちるという難しい状況になっていました。
なんとか富山に勝ってプレーオフ圏内を死守したこととなりますが、最後まで冷や冷やする試合展開でした。
■動きの硬い前半のジェフ
ジェフは右SBを、大岩から山口慶に戻してきました。
大岩は松本山雅のセットプレー対策、高さ対策だったのでしょう。
また、ボランチは勇人に変えて兵働、右SHは幸野に変えて井出をスタメンで起用。
ボランチの変更はともかく、SHまで変えてきました。
松本戦で攻撃に課題があったこと、富山が守備を固めてくることなどを想定して、個人技で打開できる井出を起用したのでしょう。
しかし、ここ数試合井出は途中出場もなく、前節はベンチからも外れていただけにここでの起用は少々驚きでした。
一方で前節途中出場したジャイールはベンチ外となり、山中が控えに入りました。
ジャイールは怪我でもあったんでしょうか。
すでにJ3降格が決まっている富山の方は、来期以降も見据えてスタメンをいじってきたようです。
苔口は8月以来となるスタメン落ちだったそうで。
あえて温存してきたのか、それとも澤入GMも内定して来季の構想・交渉なども絡んでいるのでしょうか。
立ち上がり、富山は予想以上に積極的に前に出てきました。
守備でも後方を固めることなく、前にプレスをかけていく。
ボールを持っても勇気を持って繋いで、縦に運んでいく。
前節京都に押し込まれたことによる反省と、順位が決まっていることによる吹っ切れた部分を感じました。
一方のジェフは、前半の動きが非常に重かったですね。
前節松本戦でも試合序盤の動きは悪かったですが、松本戦以上に選手たちの動きが悪かった。
後方でパスを繋いでもなかなか前の選手が動き出さずにパスを前に繋げなかったり、守備から攻撃への切替が遅く攻めきれなかったりといった展開に。
守備においても前で追いかけはするものの相手を囲い込みきれず、パスコースを作ってしまうなどアバウトな動きが目立ちました。
それでもやはり個々の能力で富山は苦しいところがある印象で、大事なところでパスが通らなかったり、球際で奪いきれなかったりといった課題を感じました。
プレスも徐々に弱まっていき、前半15分あたりからはジェフがボールを持ち、富山を押し込む時間帯が増えていきます。
しかし、ジェフはサイドからの攻撃が多く、なかなかサイドでも裏を取れず、中央も崩しきれない。
大外からのアーリークロスや、ミドルシュートばかりが増えていきました。
けれども、積極的に狙っていった町田、兵働のミドルシュートは決定率が低いし、中村のアーリークロスも完全に読まれている…。
前半17分には、中村のアーリークロスが2連続で相手に読まれて、中村の目前にいた選手にブロックされるというような場面もありました。
前半41分。
森本が左サイドからパスを受けるもトラップが流れると、谷澤がそれを拾う形で受けて、前に仕掛けます。
マイナスのクロスまで持ち込むも中央で合わず。
チャンスらしいチャンスとも言えませんが、これが前半一番の見せ場だったのではないかと思います。
■失点後に2点奪い返し相手の攻撃に耐える
ハーフタイムを挟んで富山は再び息を吹き返し、前からの圧力が高まり、ラインも高くなりました。
一方でジェフの方は前半よりも早いタイミングで森本、町田を使うこと、積極的に前に動き出すことなどをしていこうという意思は感じましたが、大きく状況は変わりませんでした。
すると、後半8分。
中盤で兵働が交わされたところから、前方へスルーパス。
これを宮吉が受けてそのまま抜け出し、先制ゴールをあげます。
宮吉は前半からずっとこれを狙っていた印象でした。
ジェフCBの前から、斜めに走り出していくパターン。
ジェフは前半からSBが高い位置にポジショニングしていましたから、CBの位置から斜めに出ていってもそこにスペースがあり、チャンスが作れる。
そこを突かれて、やられてしまいました。
失点してジェフは、猛攻を仕掛けていきます。
しかし、スコアが動いた直後にも、宮吉は中盤からの裏へのボールを受けて完全に抜け出し、シュートまで持ち込みます。
このシーン、富山が右サイドに一度繋いで中盤の中央に戻したわけですが、ジェフの選手は誰もそこへの守備に行かない。
宮吉がトラップ時に若干時間がかかった分、智の寄せがなんとか間に合いましたが、ジェフからすれば命拾いをしたシーンだったと思います。
同点ゴールが生まれたのは、後半13分。
右サイドで後方から受けたボールを谷澤がうまく受けてキープし、町田が裏を抜け出します。
町田がセンタリングを上げ、森本がヘディングで同点ゴール。
ようやく相手の裏を取れたシーンでした。
ゴール前では森本が下がって合せたために、富山のマークがはがれていましたね。
その後一度ジェフの勢いが落ちたかに見えましたが、後半17分に兵働に変えてケンペスを投入。
すると投入直後のセットプレー。
FKにケンペスが飛び込んで、ヘディングシュートを放つもクロスバー直撃。
そのままジェフがボールを拾い、左サイドで中村がボールを持ちます。
谷澤がうまくスクリーンになったことで、中村が相手をえぐりセンタリング。
これにケンペスが再び合わせ、2度目のチャンスでゴールを決めます。
この5分間でジェフが2得点を奪って、2-1としました。
ケンペスはフリーでヘディング出来ていましたし、中村への対応も曖昧でした。
富山は失点をして集中力を欠いていたのかもしれませんね。
しかし、ジェフはそこから勢いが落ちてしまいました。
逆転された富山は苔口を投入。
前線に運動量を増し、攻撃的に攻め込んでいきます。
後半20分には、中盤で交わされて苔口がGKと一対一になりかけますが、智が何とかカバー。
この時間帯、兵働が抜けて健太郎の1ボランチ気味になっていました。
このシーンではジェフの右サイドからボールを持たれ、中途半端に井出、町田、健太郎がサイドに流れてしまって中央が空き、そこを使われて苔口にパスを出されてしまいました。
この試合通じてジェフは守備が非常にルーズで、CBだけで何とか対応するシーンが非常に多かったと思います。
ジェフはこの直後にも智が前に出ていって宮吉を潰せず、健太郎とともに置き去りにされる危ない形が作られてしまいます。
守備が安定しないジェフは、後半24分に守備の改善を図るため森本に変えて大岩を投入。
慶を一列上げて大岩を右SBに移します。
しかし、後半26分は大岩の裏を取られたところからスローインを取られ、井出が交わされて速いセンタリングをあげられます。
これがキムに当たって、あわやオウンゴールといった展開に。
後半30分には、久々にジェフの攻撃。
谷澤が左サイドからアーリークロスを上げて、井出が飛び込んで合わせますがゴールならず。
得点後のジェフのチャンスは、このシーンと後半39分に思い切ってケンペスが放ったミドルシュートくらいでした。
その後、富山の勢いも落ち着いては来ますが、ジェフの守備も中盤でプレッシャーをかけられず、最終ラインがずるずると下がり苦しい状況が続きます。
後半35分には、CKから秋元がニアで合わせてゴールを狙うも枠外。
後半42分にはジェフの下がったボランチの前でボールを持たれ、FWに向けて縦パス。
苔口がゴール前で受けてシュートを放ちますが、大きくふかしてしまいます。
後半ロスタイム1分には、ジェフの右サイドからボールを持ち込まれ、遅れて大岩が対応に行くも間に合わず、1-2の形で抜け出されセンタリングをあげられてしまいます。
やはり現状の守備組織ではSBがかなり広いスペースをカバーしなければいけないので、大岩だと難しいところがありますね。
その1分後にもジェフ左サイドからのクロスを宮吉が足元で納めて、そのままシュート。
うまくキムの寄せをいなしてのシュートで決まったかとも思いましたが、GK正面でなんとか失点を免れます。
後半ロスタイム4分にも、ロングボールを宮吉が落として苔口が良い形で受けますが、何とか中村が戻ってカバー。
ジェフとしては、富山の何とか凌ぎ続けて、逃げ切りました。
■守備の改善が課題に
ジェフとすれば3試合ぶりの勝利。
しかし、思った以上に、ジェフの選手たちの動きが硬い試合でした。
前前節の引き分け、前節の負けと勝ち星がない中で、ここにきてプレッシャーがかかってきているということなのか。
それにしても選手たちの動きが鈍く、試合を通じて危なっかしい内容だったと思います。
メンタル的な弱さは相変わらずということでしょうか。
結果的に後半の早い時間帯に、失点して良かったように思います。
あれでジェフの選手たちの目が覚めて、猛攻を仕掛けることが出来た。
あの失点がもっと遅い時間帯だったら、より焦りが出ていたのではないかと思います。
もっとも猛攻を仕掛けた直後に、ぽかっと空いた中盤から裏を取られるなど、紙一重な状況だったと思います。
あそこでもう1点とられていたら、試合は大きく変わっていたかもしれません。
2-1になってからの守備もひどかった。
サイドだけでなく中盤でも穴が数多くできていて、富山の選手がFWに向けてフリーでボールを出すシーンが非常に多かった。
全体的にラインが低く、前のスペースを与えすぎていました。
智とキムが間一髪のところで守る展開が何度もあり、お世辞にも良い状態での守備だったとは言えないでしょう。
これに関してはジェフの選手たちの動きの重さによる問題だけでなく、チームとして守備の課題があったように思います。
ともあれ、ジェフとすれば残り試合も少ないですし、このパターンで戦っていくしかないのかもしれません。
前半は攻めきれずも何とか戦って、試合途中からケンペスを投入するなどしてテンションをあげ、ゴールを狙うと。
今はこれしか、勝利パターンがないような印象です。
その中で気になるのが、やはり先週も言った通りその時のリスク管理。
この試合でも猛攻を仕掛けた直後にピンチを作ってしまいましたし、前節も攻め込んでいた時間帯に失点してしまっています。
攻めに転じている時間帯で、守備の集中力がプツッと切れる場面があるように思います。
また、失点してからでないと、猛攻を仕掛けられないことも気になります。
大分戦でも終了間際に同点に追いつかれたところからゴール。
群馬戦でも後半先に点を奪われたところから逆転。
この試合でも1点奪われてから猛攻を仕掛ける…といったように、先に相手のスコアが動いてから反撃にかかることが多いように思います。
自発的に猛攻を仕掛けられるようにしたいところではないでしょうか。
そして、その"猛攻時間"が短すぎるのも気になります。
この試合でも後半13分から18分の5分の間に2得点を奪ったものの、その後は勢いが落ちてしまった。
磐田戦でも後半10分、16分と点を取った後は、磐田の攻撃時間が長かった。
群馬戦でも後半41分、後半ロスタイムに点を取っての逆転…と猛攻を仕掛けられる時間が短く、その時間帯にしかゴールを奪えていない。
それによって、安定感のない試合運びになっているように思います。
リーグ戦も残り1試合。
昇格に向けてはプラス2試合があるか、ないか…。
そういった状況ですから、今から大きくチームを変えることはできないはずです。
その中でも出来る限り勝利の確率を高め、安定感のある戦いをしていきたいところ。
そういった観点で言えば、この試合は非常に危なっかしい試合で、不安の残る試合だったと思います。
現実的に考えると、守備の改善を計ることが、限られた時間の中でやるべきことなのかなといった印象です。