ケータハムとマルシャがアメリカGP欠場

 ケータハムとマルシャがともに経営難に陥り、アメリカGPを欠場することとなりました。
 両チームともに今後の見通しは立っておらず、このまま消滅する可能性も十分に考えられるでしょう。


 両チームともに2010年からF1に参戦。
 一時期は"ワークス時代"とも呼ばれるほど数多くの自動車メーカーがF1に挙って参戦しましたが、2007年に起こった世界金融危機もあってトヨタ、ホンダ、BMWなどが相次いで撤退。
 チーム数の減少が懸念され、新規参戦チームを募りました。
 多くの団体が名を上げましたが、そこから選別され参戦となったのが、ロータス(現ケータハム)、ヴァージン(現マルシャ)、HRTでした。
 名称が変わっていることからもわかるように、それぞれここまで運営の変更など様々な道のりを歩んできました。



 その中でもケータハムは、イングランドのサッカークラブQPRも所有するエアアジアのトニー・フェルナンデスが代表を務め、活躍の期待されたチームでした。
 しかし、なかなか結果は出ず、ついに今季途中チームを手放すことになりました。
 トニー・フェルナンデスは度々サッカーとF1を比べ、サッカーはF1と違い下位チームでも一定の収入が得られること、サッカーの方が投資に見合った成績が出せることなどを話していました。


 その後、ケータハムは中東とスイスの投資家によるEngavest SAという実態不明な団体に買収されます。
 けれども、大きなスポンサーは増えることなく、ドライバーを頻繁に変えて持参金獲得を狙うような行動をとっていました。
 チーム代表として雇われた元F1ドライバークリスチャン・アルバースは、チームのやり方に不満を持って辞任。
 最近ではパーツの耐久問題も出て、可夢偉に走行を止めさせるほど事態は苦しくなっていました。


 日本GP前にはケータハムのファクトリーが差し押さえられ、新パーツも届かない状態に。
 ロシアGPの後にはマシン差し押さえを恐れファクトリーにマシンを戻さず、実質的なオーナーとも言われるコリン・コレスの施設に移送したといわれています。
 そして、ついに10月21日、先にファクトリーを運営するケータハム・スポーツ・リミテッドが、破産宣告を申し立て。
 続いて10月23日、チーム運営を行っていたケータハムF1チームが、リリースを発表しました。


 それによると、チームを買収したもののフェルナンデスがチームの株式を譲渡していないことを理由に、今後のF1活動から撤退する可能性を表明。
 それに対してフェルナンデスは予定されていた資金(債権分)が振り込まれていないため、株式を譲渡していないことを明らかにするなど、両者のやり合いがありました。
 今後裁判沙汰になるのではないかと思いますが、このタイミングでのチームの発表、フェルナンデスが株式を譲渡しない理由が他にないことなどを考えても、正しいのは後者ではないかと個人的には推測します。


 その後、ケータハムF1チームはケータハム・スポーツ・リミテッドと同じ管財人の手に渡り、今後新たなオーナーを探すこととなります。
 F1を牛耳るバーニー・エクレストンはアメリカGPとブラジルGPの2戦の欠場を許可したといわれており、その間に新オーナーが見つかるかどうかが今後の焦点となります。
 しかし、もしオーナーが見つかったとしても、小林可夢偉が参加できるかどうかはわからない状況ですね…。



 時を同じくして、マルシャも突如破産要請をしたことを発表。
 次期オーナー候補と交渉をしているということですが、アメリカGPの欠場が決まりました。
 マルシャは当初ヴァージン・グループがチームの株式を所有し、ヴァージン・レーシングとして参戦していましたが、その後ロシアの自動車メーカーであるマルシャが株式を買い取り現在のチーム名になっていました。


 長らく資金難に苦しんでいましたが、ここにきて急遽破産宣告。
 鈴鹿ではジュール・ビアンキの大クラッシュもあり、ロシアGPは一台のみしか出走できませんでしたが、それも予算の問題があったのか。
 それともビアンキのクラッシュもあって、スポンサーが手を引いた可能性もあるのでしょうか。


 ただ、ケータハムと状況が違うのは、今季マルシャは2ポイントを獲得しておりコンストラクターズランキング9位にいること。
 これによりマルシャは今シーズンを乗り切れば3500万ポンド(約37億円)もの分配金を受けられることになるといわれており、それを狙った新たなオーナーが現れる可能性もあるかもしれません。
 分配金に関してはより下位チームに分配すべきだという話もあるわけですが、分配金だけを狙う名ばかりのオーナーが現れたこともあるだけに、悩ましい状況になっています。
 ケータハムを買ったEngavest SAも、分配金などを狙っていた可能性があるかもしれません。



 相次いで破産するチームが出ている原因としては、エネルギー回生システムを含むパワーユニットの予算高騰なども言われています。
 しかし、一方でHRTも12年に撤退していますし、これにより2010年からの新規参戦3チームがいなくなったことになります。
 それだけF1は、新参者には厳しいものがあるのかもしれません。
 タバコ広告の禁止やトップチームが自前でドライバーを育てはじめ下位チームが育成する必要性がなくなったこと、F1人気の陰りや単純な景気の問題など様々な要因が考えられるようにも思います。


 F1自体、高級感やブランドイメージを重要視しているスポーツだと思うだけに、下位チームの生き残り策が難しくなるというジレンマを抱えているように思います。
 一方でプロモーターやテレビ放送局とは本来マシン20台が出走するという契約をしているといわれています。
 実際、一定数のチームが出走しなければレースも盛り上がらないだけでなく、急遽チームが撤退した場合のリスクマネジメントもしなければならないでしょう。


 1チーム3台体制などの噂も出ていますが1チームが表彰台を独占するのもどうかと思いますし、今後のF1のかじ取りは難しくなりそうです。
 来期も新規参戦予定チームはいるわけですが、今回もうまくいくかどうかあやしい部分がありますし、来期以降F1がどのような道を歩むのか悩ましいところではないかと思います。