途中出場のケンペスが2ゴールに絡む活躍

ケンペス「0-1で負けている厳しい状況での途中出場だったが、今日は時間が多くあったので自分のプレーをすることを心掛けた。残り時間は少なかったが、うまくゴールを決めることができて本来の自分のプレーを見せることができたと思う。」(J's GOAL

 群馬戦、途中出場のケンペスが2ゴールに絡む活躍を見せて、2-1で勝利しました。
 振り返ってあの試合を考えてみれば、ケンペス1人で勝った試合といっても過言ではないような試合展開だったように思います。


 山口智もこんな話をしています。

山口智「0-1にされて相手が逃げ切りに入ってくる中、勝つことが難しいゲームだったが、ケンペスがうまくゴールを決めてくれたことでチームが助けられた。」

 「ケンペスに助けられた」という表現を使っていますね。



 ケンペス投入直後のジェフの状況は、決して良くなかったと思います。
 ケンペスの代わりに町田が下がったことによって、運動量が減りパスが繋げなくなって、全体の動きが重い展開になってしまった。
 当初はケンペスと森本をターゲットにしてクロスボールを放り込む狙いだったのかもしれませんけれども、クロスからの攻撃ばかりで単調になり過ぎた上に、右サイドの山口慶はクロスの精度を欠き、左サイドからはクロスも上げられなかった。
 ケンペスの投入は逆効果だったようにすら見えました。


 しかし、相手の足が止まってきて、後方にスペースが出来たこと。
 兵働を入れて、パスをつなげるようになったこと。
 サイドからの展開ではなく中央から強引に攻め込むようになったことで、チャンスを作れるようになりましたね。



 悪い時のケンペスは下がって中盤の位置まで受けに来て相手に潰され、チーム全体のリズムを崩してしまうことが多いわけですが、あの試合の終盤においてはケンペスの下がって受ける動きに対して、群馬の守備陣が全く反応していなかった。
 1点目のケンペスのゴールもケンペスが相手ボランチ付近まで下がってほぼフリーでボールを受けてそこから反転して前を向けたし、オウンゴールにつながるクロスを蹴った際もケンペスを誰も見ていませんでした。
 群馬守備陣に疲れがあった部分は大きいのでしょうけど、あまりにもケンペスに対して無警戒でしたね。
 青木良太投入を準備していたとのことですからマンマークケンペスに付けるつもりだったのかもしれませんが、投入への決断も遅かったように思います。


 ただ、それにしても思ったよりケンペスの状態が上がってきたように見えたのは良かったですね。
 まぁ、ケンペスも波がある選手なので状態が読みにくいのと、試合終盤にビハインドの状況だと燃えるタイプの選手なので、そのあたりが出た試合だったのかもしれませんが。
 先週、森本が良くてもケンペスが良くないのなら、プラスはあまり得られないのではと話しましたが、ケンペスが調子を上げてきたのであれば、1つのオプションが増えるという意味で心強いですね。



 しかし、今度は肝心の森本が、ほとんど活躍できなかった。
 前節大分戦でのゴールシーンのイメージが、本人にも残っていたのでしょう。
 少し下がって前を向いてミドルシュートというパターンを何度も狙っていましたが、それを狙いすぎてしまって相手に読まれているように見えました。
 一度惜しいミドルシュートのシーンもありましたけど、GKはしっかり準備していましたし、大分戦のゴールパターンを警戒していたのでしょう。
 あれだけ目立ったシュートですから、相手が警戒してくるのも当然のことかと思います。


 やはり基本的にはあのシュートパターンは特別なものとして考え、他の形でのゴールパターンを作ってほしいところではないかと思います。
 ケンペスミドルシュートもかなり豪快なものでしたが、トップ下の位置まで下がって前を向いて相手をなぎ倒し、シュートまで持っていく形は以前から見られたものだと思います。
 ケンペスの特徴は何よりもフィジカルコンタクトだと思いますし、それを活かした1つの形だと思いますから、そこまでイレギュラーなものではなかったのではないでしょうか。
 「前さえ向ければ」という部分はありますし、ミドルシュートも外すことは多いとはいえ、ケンペスの形の1つであったことには間違いないと思います。


 森本にもそういった明確なゴールパターンが作れるかどうか。
 自身の強みを生かしたゴールが作れるかどうかが、今シーズンのみならず今後のチームや森本の選手人生にもかかわってくるのではないかと思います。
 関塚監督になってから個人技で打開する攻撃パターンが増えているだけに、FWへの要求はどうしても厳しくなるでしょう。
 それだけに森本もレギュラーを勝ち取ったとはいえ、来期以降を考えると現状ではウカウカしていられない状況なのではないかと思います。



 あの試合を逆説的に考えると、ケンペスや兵働といった守備や運動量などに課題はあっても、特別な武器を持つ選手たちがやはり必要なのではないかと捉えられなくもない試合だっただけに、そういった選手たちを活かせていない現状への不安も感じる試合だったように思わなくもありません。
 そういった選手たちを今からレギュラーに組み込むのは大幅な変化を伴うため、チームが勝っている状況なだけにリスクが大きく感じるでしょう。


 となると、今後ケンペスや兵働などをジョーカー的に使っていくことによって、レギュラーチームの足りない部分を補えるのか。
 それとも谷澤、森本、中村あたりが、特別な力をコンスタントに発揮できるのか。
 そのあたりが、今後の試合のカギを握ってくるのでしょうか…。