田代の1点を守りきり1-0でC大阪に勝利

 天皇杯はJクラブが出場する国内の公式大会では、唯一他カテゴリーのチームと対戦できる大会です。
 それだけに、ジェフにおいてもJ2に落ちてからは、J1クラブとの対戦が注目されている面があると思います。
 そこでJ2に降格してからのJ1との成績を、軽く調べてしまいました。


 2010年には当時J1の京都に0-4で大勝し、4回戦でFC東京に0-2で敗戦。
 2011年には3回戦で当時J1の磐田に1-0で勝利し、4回戦で清水に0-2で敗戦。
 2012年には準々決勝で鹿島に0-1で惜敗し、記憶にも新しい2013年は3回戦でFC東京に1-1でPK戦の末敗れています。


 改めて見ると、これまでのJ1との対戦、思ったよりも悪くない成績になんですね。
 12年、13年も勝てはしませんでしたが、僅差での敗戦で試合内容も手応えの感じるものでした。
 ただ、京都、磐田とジェフに負けている相手は、その後J2に降格している…と。
 偶然ではなく、それだけチーム力が落ちていたということが言えるのかもしれません。
 ということは柏、C大阪も、気を付けないといけませんね(笑)
 特にC大阪は後がない状況になっているので、冗談では済まされない話かもしれませんが…。
■攻撃の意図が全く見えてこないC大阪
 報道では大きくスタメンを変えるという話も出ていたC大阪ですが、予想よりもベストメンバーに近いスタメンでした。
 レギュラーで外れたのは杉本、永井、酒本、キム・ソンジュン、そしてU-19日本代表に選出されている南野あたりでしょうか。
 山口蛍は怪我で長期離脱中ですね。
 ジェフもこれまでの天皇杯でメンバーをガラッと変えてきていたので、比較的レギュラーを残してきた印象です。
 ケンペス、井出、戸島、兵働、田代あたりが、新たにスタメンに名を連ねました。
 週末に大事な大分戦を控えているだけに、勇人、谷澤などベテラン勢もスタメン出場したのは意外でした。



 C大阪はDFラインの押し上げこそ積極的で"J1基準"といった印象をうけましたが、2トップはフォルランカカウということもあってあまり前からのプレスは激しさを感じませんでした。
 それでもDFラインにはスピードのある山下がいるし、ラインが高い分中盤の寄せも早くなる。
 それもあって、前半は中盤での潰し合いが目立つ試合となりました。


 しかし、攻撃が移ってからが、かなり酷かったですね…。
 攻撃のほとんどが迷った挙句のロングボールといった感じで、その長いボールも前線にまったく合わない。
 サイドに振ってからロングボールを蹴るといった工夫すらないためジェフの守備陣は予測がしやすいですし、そのこぼれ球を誰かが拾うというような狙いも全くない。
 ビルドアップにおいても他の選手が棒立ちで、チームとしてどのようにパスを回すのかするのかという意図が丸っきり見えませんでした。
 なんとかグラウンダーでFWにボールを入れてもそこに反応する選手がいないから、結局元に戻すだけで終わってしまうことが多かったですね。


 最近のC大阪はじっくり見たことがなかったのですが、いつものこのレベルの内容なんでしょうか。
 この試合ではモチベーションなどの問題もあったのかもしれませんが、これを見る限りはJ1残留争いをしているのも納得…どころか、J2の方がまだ攻撃に明確な意図を作れているチームの方が多いですね。
 頻繁に監督が変わっている影響もあって、チーム作りが遅れているということなのでしょうか。



 一方のジェフは相手がJ1ということもあってか、モチベーションが高く、選手たちも動けていたと思います。
 ケンペス戸島ということでどういった前線になるのか気になりましたが、トップ下気味にポジション取りをする戸島が攻撃に移ると前に出ていって、ケンペスが自由に動く感じだったと思います。
 関塚監督になってからは森本とケンペスの時も森本を軸にケンペスを自由にやらせていましたので、基本的には同じような関係性ではないかと思います。


 また、守備に関してはDFラインの裏をカバーできる高木だけでなく、この試合では田代がCBにはいったこともあって、普段以上に高めのラインで守れていたと思います。
 こちらもケンペスが前線では守備をしないためプレスは期待できませんでしたけど、それでも相手がアバウトにボールを蹴ってくれたので大きな問題にはならなかった印象です。


 基本的にはC大阪の攻撃の問題もあって、ジェフが若干流れを握っていた前半。
 とはいえ、ジェフの方もチャンスはなかなか作れませんでした。
 C大阪のDFラインが高いため早めに裏を狙うことが多かったですが、相手DFにはスピードもあるためなかなか裏を取れませんでした。
 そして、遅攻面では相変わらずサイドまでボールを持ち込むことが出来たものの、中央で形を作れない。
 ボール回しがサイド一辺倒になり、相手の守備が読みやすい状況になっていったと思います。
 このあたりはパスワークの潤滑油になれる町田不在もあって、余計に目立ってしまった印象です。



 前半5分には中村のクロスから戸島がヘディングでゴールを狙うも、相手DFはしっかり寄せており枠外。
 前半13分にはケンペスが戻したボールを受けた井出がクロスをあげ、勇人がシュートを狙うもの決まらず。


 悪い流れが続くC大阪でしたが、前半終盤から巻き返していきます。
 前半40分、C大阪のカウンター。
 左サイドでアーリアがワンタッチヒールで縦パスを中央に落としたところから展開され、カカウPA前左でボールを持つと、逆サイドを走りこんでいったフォルランに展開。
 フォルランが絶妙なワンタッチで秋元に落とし、秋元がシュート。
 このシュートはGK高木を超えていましたが、田代がカバーリングして失点をしのぎました。
 両チーム通じて、前半で唯一の決定的なチャンスだったと思います。
■田代の1点を守りきり1-0で勝利
 前半のシュート数はC大阪が2本、ジェフが4本と動きの少ない試合展開。
 後半に入ってからは、両チームともに連戦の疲れからか、ラインが下がっていきました。
 これもあってC大阪が、ようやく中盤の低い位置でパスをつなげるようになりつつありました。


 しかし、試合が動いたのは後半9分。
 ジェフ右サイドからのCKから田代が競り合い、相手DFに当たってゴール。
 本人も話しているとおり、ラッキーな面もある「ごっつあん」ゴールだったと思います。
 ただ、C大阪の前半までの悪い流れが生んだゴールだったようにも思わなくもありません。



 得点直後、ジェフは勇人に変えて山口智を投入。
 田代を1列前にあげ、智がCBに入りました。
 スコアが動いた直後、一瞬C大阪のギアが上がりかけたかとも思ったのですが、状況は変わらず。
 むしろジェフがサイドから攻め込む時間が増えていきました。


 しかし、後半20分あたりからはジェフのラインがさらに下がって、C大阪が高い位置までボールを持ち込む時間帯が長くなっていきます。
 ジェフのDFラインが下がって中盤がチェックに行けなくなり、ボランチのエリアが空いていきました。
 後半24分にはアーリアと田代が小競り合い。
 横浜FMユースで同期だった2人ですね。
 アーリアは昨年に続いて、天皇杯でジェフと対戦したことになります。



 後半28分、C大阪が右サイドの秋元から楔のパス、フォルランポストプレーからの落としを楠神が受け、ワンタッチで前に縦パス。
 途中投入の杉本が裏に飛び出して、ボールをキープします。
 キム、大岩が杉本についていくと、マイナスに戻されたところで、秋元が完全にフリーに。
 前半40分に続き決定的なシーンですが、秋元の放ったシュートを高木がファインセーブ。
 また1列間をフリーにしてしまう問題がでてしまいましたが、失点は免れます。


 後半30分攻め込まれる時間が長くなったこともあってか、ジェフは兵働に変えて健太郎を投入。
 守備固めということなのでしょう。



 ジェフは後半途中から防戦一方。
 公式記録だと、ジェフのラストシュートは後半9分の田代のゴールだったようで、そこからシュートがなかったことになります。
 けれども、C大阪もそこまで勢いは感じず、あまり怖い攻撃はなかったように思います。


 試合終盤のチャンスは後半40分、杉本が中村からボールを奪ってクロスを上げ、途中投入の平野が逆サイドから飛び込んでヘディングシュートを放ったシーンくらいでしょうか。
 しかし、それも決まらず、1-0でジェフが守り勝ちとなりました。
■勝癖を突けて大分戦へ
 J1との対戦で現在のチームの力量を見ることが出来れば…とも思ったのですが、ちょっと現在のC大阪はそんな状態ではなかったですね。
 柏戦も6バック気味に徹底して守ったサッカーでしたから、あれをリーグ戦で続けるのは無理だろうと思いましたし、もう一度J1と対戦してどうか…と思ったんですけどね。


 なんとなく両チーム、サッカーは似通った部分も感じましたが、C大阪は全体的に動きも悪く流れも良くないように感じました。
 残留争いのライバルである清水に0-3で敗れた直後ということで、精神的にひきづっている部分も大きかったのかもしれませんね。
 ちょっと見ていてかわいそうになるくらいの雰囲気だったかなと思います。



 決定的なチャンスを作れた回数はほとんどなく1点を死守して守り勝ったジェフですが、2度ほど相手には完全に崩されていましたし、特に後半ラインが下がってからの守備はあまり良い状態のようには感じませんでした。
 そこからのカウンターも作れなかったですし、課題もあったように思います。
 とはいえ、C大阪の攻撃も決定機はあったものの、決まる空気は感じず。
 非常に強い負のオーラを感じました。
 それが解消できない限りは、残留も難しいのかなと思ってしまいますが、どうなるんでしょうね…。


 戦力の差は大きいのですけど、ジェフが降格したシーズンの後半を思い起こすような感じで。
 降格するチーム独特の雰囲気を感じてしまいましたね。
 むしろ天皇杯でもよくここまで勝ち上がってこれたかなと。


 まぁ、C大阪とすれば天皇杯で勝とうが負けようが、リーグ戦で結果を残せればいいはずで。
 どこかに肩入れするつもりもないですけど、この試合から挽回できるのかどうか注目ではないかと思います。
 


 ジェフはこれで実に12年ぶりの天皇杯準決勝進出となるそうです。
 ベングロシュ監督時代ということで、あれ以降はJ1時代も優勝争いやナビスコ杯、残留争いもあって天皇杯にはあまり力を入れられなかった印象もありますので、天皇杯の成績はあまり良くないんですよね。


 天皇杯準決勝出場が決まったわけですが、これでもしプレーオフに進出し初戦から戦うことになれば、23日(日)にJ2最終節讃岐戦、26日(水)天皇杯準決勝山形戦、30日(日)プレーオフ初戦という過密日程になってしまいました。
 嬉しい誤算…というレベルではない、シリアスな悩みを抱えることになりそうです。
 その前に今週末の大分戦も、どこまでコンディションが保てるかどうかという問題もありますが。



 とはいえ、勝癖を付けることも大事だと思いますし、それが自信につながればいいですね。
 大事な大分戦に向けて、良い流れを繋げていければと思います。