粘り強く守って関塚監督初連勝

 福岡、札幌に勝って2連勝。
 関塚監督になってからは初の連勝で、チームとしても斎藤代行監督、関塚監督とバトンをつないだ7月の大分戦、栃木戦以来の連勝となりました。
 これで順位も5位に浮上。
 実に3か月近く連勝がなかったわけで、それでこの順位は驚きな気もしますけど、これでプレーオフ進出も現実的に見えてきましたね。
■相手DFに当たったFKがそのままゴール
 ジェフは累積警告による出場停止から大岩が復帰。
 しかし、右SBは山口慶のままで、大岩はベンチに。
 ベンチからは山中が外れ、スタメンは前節と同じメンバーになりました。


 試合展開はジェフがボールを支配する流れ。
 対する札幌は1トップの都倉にボールを当てて、中盤が拾う形のカウンター狙い。
 しかも、札幌はコイントスであえて風下を選んだので、クリアボールは戻ってくるし、ジェフのボールは伸びるし…という状況になり、ますます押し込まれていました。



 札幌は無理に前にプレスを行くことはしない印象で。
 かといって引いて守るわけではなく、パスコースを消しながら相手がアタッキングサードに入ってきたらマンマークについて粘り強く潰しに行くディフェンス。
 そこからカウンターで人数をかけて駆け上がってくるサッカーということで、ジェフとしてはボールを持たされているような印象もありました。


 立ち上がりはジェフが左サイドからPA付近まで攻め込む時間帯が続きましたが、前半20分あたりからは攻め手がなくなってきます。
 序盤の札幌は守備がはっきりしていない部分があって局面で簡単に交わせていましたが、試合を経過してジェフの攻撃にも慣れてきた印象で、マンマークで潰しに行くタイミングがはっきりしてきました。
 特に序盤はうまくボールを受けていた町田が、相手のマンマークで潰されるようになってきたことが大きかったと思います。
 また、この頃から札幌は風を警戒してなるべくグラウンダーのパスをつなぐようになっていき、風の影響を最小限に食い止めようとしていた印象でした。


 
 それまで決定機らしい決定機のない試合展開でしたが、前半32分札幌の攻撃。
 右サイドでボールを持った中原が、都倉との1-2で抜け出しシュートを放つもGK高木の正面。
 失点にはなりませんでしたが、完全に抜け出されていましたし、危ないシーンでした。


 ピンチをしのぐと前半43分。
 右サイド奥で町田が粘ってFKを得ます。
 中村がボールを蹴ると相手DFの壁に軽く当たって軌道が変わり、そのままゴールマウスに吸い込まれます。
 風の影響もあったのでしょうか。
 あまり良い流れではなかっただけに、いい時間帯での先制点でした。


 その直後には、札幌が右サイドで中原がタメて慶とキムをひきつけると、中央の都倉にパス。
 都倉はシュートを放ちますが、GK高木がキャッチします。
 ここまでポストプレーでは非常に効いていた都倉ですが、キムがしっかりついていたので前は向かせていませんでした。
 しかし、このシーンではキムが中原をケアしたために、山口智が都倉につく形に。
 都倉はワンタッチで智と距離を取って、シュートまで持ち込まれてしまいました。
■攻め込むも決め手に欠く札幌の攻撃
 後半に入ってからは札幌が1点を取りに来たことと、今度はジェフが風下に立ったこともあって、札幌に押し込まれる時間帯が長くなります。
 ジェフは攻め込まれるだけでなく、前にボールを持ち込むことが出来なくなり、攻撃の形が作れない状況に。
 札幌もボールを持ち込むもののミスが非常に多くボールは奪えるのですが、札幌は後半に入ってからプレスをかけてくるようになり、そこをうまく交わせない状況に。
 後半のジェフは前半の札幌のような縦に速いカウンターなども作れず、苦しい状況が続きます。



 事態を変えたいジェフは、後半22分に町田に変えて大岩を投入。
 大岩を右SBに入れて、慶をトップ下に移しました。
 後半に入って押し込まれたジェフはMFラインがかなり低くなってしまい、相手のボランチエリアをフリーにしていましたので、そのあたりを修正したかったのかもしれません。
 MFラインが押し込まれるからセカンドボールも拾えないし、カウンターも作れない状況になっていました。
 しかし、町田も走れて守備のできるタイプのトップ下ですし、この交代では大きく状況は変わらなかったと思います。


 けれども、札幌の攻撃も雑な印象が強かったですね。
 札幌としては前半あえて風下を選んだことなどを考えても、後半勝負だったのかもしれません。
 後半スタートと同時に菊岡に変えて内村を投入していましたし、後半に入って攻守の切り替えも早くなりました。
 前半を無失点でしのいで後半勝負を仕掛ける…という狙いだったのでしょうし、前半の失点はある種不運なものとも言えるでしょうから、計画は惜しいところまで行っていたのかもしれません。


 しかし、札幌が攻撃でチャンスを作れたのは、むしろ前半の時間帯だったように思います。
 後半に入って札幌はボールを持つ時間が長くなり、攻撃においての連携も感じず、精度もかなり低かった。
 速攻はいいのだけど、遅攻の形を持っていなかった印象です。



 なかなか前にボールを持ち込むことすらできていなかったジェフですが、後半29分。
 相手CBがロングボールをクリアミスして、幸野の位置へ。
 幸野がヘディングで前に出すと、森本がボールを受けてそのままシュート。
 これは相手DFに当たりますが、これを森本本人が拾い直すことで、結果的に相手DFとGKを交わすことに。
 これを決めて2点目が入ります。
 この日も立ち上がりにシュートを大きく外していたシーンが多かった森本ですが、ここでは結果的に1人フェイントを決めたような形になりました。


 失点した直後に札幌は190cmのFWチョン・ソンフンを投入。
 しかし、すでにジェフは高さのある大岩を投入していますし、2失点してからの投入は遅すぎた印象がありますね。
 それだけこの日の札幌は、攻撃における勢いがなかった印象です。



 投入直後にはチョンのヘディングシュートが枠外に。
 その後も札幌が攻め続け、内村や都倉がシュートを放ちますが、決まる雰囲気はなく。
 後半ロスタイムにはFKから石井がヘディングでゴールを狙いますが、クロスバー直撃で決まらず。
 これがこの試合を象徴するかのようなシーンでしたね。
 そのまま2-0でジェフの勝利となりました。
■粘り強く守っての勝利
 シュート数はジェフが9本、札幌が17本と2倍ちかく放たれており、それだけ攻め込まれる時間帯も長かったと思います。
 得点も相手DFに当たったFKと、ごちゃごちゃとしたところを決めたもので、決してきれいに決まったシュートもありませんでした。
 全体的な内容で言えば、決していいものとは言えないでしょう。


 ただ、しっかりと相手の隙を突いて2連勝出来たことは事実ですし、それは非常に大きいことだと思います。
 「今は結果が大事」という言葉は好きではないのですが、悪いなりにもしっかり勝てたというのは重要なのでしょう。
 もっともジェフの出来自体は、前節とそこまで大きく変わっていないようにも思わなくもありません。
 前節の福岡戦は相手が守備面で、今回の札幌戦は相手が攻撃面で課題を見せた試合だったように思います。



 その中でも札幌戦では、しっかり最終ラインで粘り強く守れたことは大きかったのではないでしょうか。
 全体のラインは低く、特にMFラインは低くなりがちで、この試合でも相手ボランチエリアは空きがちだったと思います。
 バルバリッチ監督になってからの札幌はカウンター志向が強く、そのボランチをうまく使っての展開というのが出来ていなかったというのも大きかったのでしょう。


 とはいえ、ゴール前においてはなかなか穴を作らなかった。
 後半からは智もうまく一歩前に出て相手を潰していたし、それによってできた後方の穴を勇人が埋めるといった時間帯もあった。
 そして、何よりもキムが都倉に負けなかった。
 これが非常に大きかったのではないでしょうか。
 キムは前節福岡戦でも酒井に仕事をさせなかったですし、2試合続いてMVP級の仕事をしていると思います。



 相変わらず全体のバランスは悪く、ゴール前に人数が集中しがちな守備で、その結果後半はかなり押し込まれたのだと思います。
 しかし、中盤でも町田、幸野、勇人、健太郎といった守備で貢献できる選手を置いて、局面で簡単にやられなくなった。
 キムの活躍も含めて、個々で守備に頑張れているところが、ここ3試合の無失点に繋がっているところもあるように思います。


 なかなか強みを作れなかったジェフですが、ここから守備のバランスを改善し、より堅い守備を作れるかどうか。
 そして、それを強みとして戦っていけるかどうかが、今後の注目点になるのでしょうか。
 ともかく、このままプレーオフ圏内の順位を維持したいところですね。