特攻を仕掛けてきた福岡相手に大勝

 大勝はもちろん喜ばしいことですが、試合内容に関しては何とも書きにくい展開だったように思います…(笑)
 ともかく、あまりにもこの日の福岡は出来がひどかった。
 強いて言うのなら岐阜戦前半のような展開が90分続いたような展開といえるのかもしれませんが、それにしても福岡は守備の組織、約束事が出来ていなかった印象で。
 こういった相手は今後そうそうないと思うべきでしょうし、ジェフからすればこの大勝に油断せず、勢いだけうまく次以降の試合に持ち込んでいきたいところではないかと思います。
■福岡の前への積極性
 ジェフは大岩が出場停止し、代わりに山口慶が右SBに入りました。
 キャプテンマークも山口智から慶に戻りましたね。
 また、オナイウがAFC U-19選手権の日本代表メンバーに選ばれチームを離脱。
 オナイウもここ数試合はスタメンから外されていますし、どこか足りない部分があると評価されてはいたのでしょう。
 とはいえ、やはり貴重なFWですから、代表選出は嬉しい半面チームとしては悩ましいですね。


 ベンチにはアジア大会から山中が復帰。
 他に田代、ジャイールがベンチに入りました。
 オナイウが不在となる分、前目の選手が誰かはいるだろうとは思っていましたが、ここでジャイールというのは意外でしたね。
 戸島は人数合わせなのか練習でもDFをやらされているようですからベンチには入らないだろうと思っていましたが、大塚あたりが選出されるかと思っていました。



 キックオフからホーム・ジェフの方が動きが良く、中盤のせめぎ合いで先手を取っていった印象でした。
 ジェフは福岡が前に出てくるチームであることもあってか、いつもより早く森本にあてて展開という狙いを意識していたのかなと思います。
 福岡は攻め込まれながら、カウンターを狙う展開に。
 アバウトなボールでも縦に入れてFW酒井宣福を走らせるパターンが多かったですね。


 前半4分、ジェフGK高木からのロングキックの跳ね返りから裏を狙われ、前線の酒井が抜け出そうとするもキムがカバー。
 前半6分には山口智から福岡DFライン裏へのボールで森本が抜け出し、GKと1対1でシュートを放ちますが、GK神山がセーブ。
 その直後のCKで山口智が完全にフリーでヘディングシュートを放ちますが、ゴールを外します。
 福岡はCK時の守備もアバウトなところがあり、外で構えているジェフの選手たちをフリーにしていました。



 前半8分には福岡の攻撃。
 中盤で勇人が金森を潰しきれずタメを作られ、鍋田に縦パスを出されてシュートまで持ち込まれます。
 中村が何とか戻って対応しましたが、一つ間違えればシーンでした。
 前半13分には左サイドのスローインから縦に繋がれ、酒井がドリブルで仕掛けシュートを放ちますが、ゴール右脇にそれます。
 ここでもキムは一度酒井に体をぶつけて弾かれますが、何とか粘ってシュートコースを消していました。


 立ち上がりは勢いのなかった福岡ですが、この頃から徐々に調子を上げていきます。
 福岡は予想通り、前へガツガツと激しいサッカーをしてくる。
 しかし、守備時はカバーリングなど全体のバランスは考えず、ともかくボールホルダーを潰すことを第一に考えている印象。
 そのためジェフから見れば1つ交わせばぽかっと大きな穴が空いていることが多く、そこを確実に仕留めていきたい流れでした。
 


 福岡は攻撃でも前へ前へボールを出して、ともかく局面でのマッチアップで競り勝とうというサッカー。
 トライアングルを作ってパスワークで攻撃の形を作るとか、一度戻して他に展開するというような動きは、ほとんど見られませんでした。
 そのあたりは3-5-2の1ボランチというフォーメーションからも、意図が感じられる部分があったのかもしれません。
 しかし、その結果攻め込まれると1つ前が空き、バックパスへの対応に課題のあるジェフの守備からすれば、やりやすい相手だったと思います。
 そういった相手の前へ積極的な攻撃への対応で目立っていたのが、フィジカルの強いキムでしたね。


 中盤での潰し合いが続いていましたが、前半30分あたりからは福岡の前への勢いが落ち着いていき、ジェフがボールを保持する時間が長くなります。
 しかし、福岡は守備のサポートが全くないため1つ外せば抜け出せるのですが、ジェフは完全には崩しきれずなかなか決定機が作れません。
 小さくパスをつなげば簡単に抜け出せるような状況でしたが、ゴール前では相手を交わしきれず0-0のまま後半に進みます。
■5分間で3ゴールを決めジェフの勝利
 前半途中からの前に行けていない状況が嫌だったのか、福岡は後半からDFラインも含めて全体的に前に押し上げてきました。
 しかし、前半から福岡は「前の選手に潰しに行く」という守備をしてきましたが、組織的に連動したプレスといった感じではなく。
 「プレスをかける」といっても、ただ闇雲に前に出ていっては簡単に交わされ、そこから後手に回ってしまいます。


 周りと連携して、他選手がパスコースを消し、後方ではカバーできるバランスを取った上で、プレスをかけにいかなければ前への守備も逆効果になる。
 しかし、この日の福岡はそういった意識が希薄で、ただ前方の選手を潰しに行くという姿勢ばかりが前に出ていた印象でした。
 そんな状況で後半からはDFラインも前に出ていこうとしたわけですから、当然その裏が空いてきます。



 後半開始直後には山口慶が右サイドを抜け出し、マイナスのセンタリングを受けた勇人がシュートを放つも大きく枠外。
 後半5分には健太郎からの長いボールを森本が受け一度相手に奪われるものの、中盤で幸野が奪い森本にパス。
 フリーで森本が受けシュートを放ったものの、これも大きく枠外へ。
 後半7分にはDFラインからの縦パスを幸野が受け、近くにいた谷澤につなぎ相手MFラインの守備を抜け出します。
 谷澤は前方の森本にスルーパスを出し、パスを受け直した谷澤がシュートを放ちますがこれも枠外。
 谷澤の抜け出した場面でもそうでしたが、福岡は数的優位を作ると簡単にフリーの選手を作ってしまいます。
 後半8分には左サイドで、澤、中村とパスをつなぎ、中村のクロスが相手にあたって流れたところを森本が拾い、シュートを放ちますがやはり枠外。
 後半9分には左サイドで町田からのスルーパスを受けた森本が、マイナスのクロス。
 逆サイドを駆け上がってきた慶がミドルシュートを放ちますがこれも枠外。


 怒涛の攻撃…というよりは、怒涛のシュートミス…。
 後半5分から実に1分に1本ほどのペースでシュートを放っていきますが、ゴールが決まりません。
 しかも、枠外のシュートが非常に多い。


 後半11分、右サイドでボールを受けた町田がセンタリング。
 流れたところを谷澤が受けて相手に競り勝ち、シュートなのか、クロスなのか、GKがキャッチ。
 後半13分には右サイドで慶、町田、幸野と前につないで行って、幸野がマイナスのクロスを放ちますが谷澤が合わせきれず。


 さすがにここまで来ると、嫌な流れになるかと心配になりました。
 たまらず相手も選手交代で流れを変えようとするなど、策を打ってきました。
 しかし、ようやくゴールが決まったのが、後半15分。
 健太郎のロングボールを森本が受けてゴール。
 右足一本でうまく落としたところで勝負あり…と言いたいところですけど、そこまでは上手くいくものの決めきれない森本ですからね。
 さすがにこれだけのチャンスがあれば、1本くらいは決めてくれるというところでしょうか。


 逆に福岡はこれだけピンチを作られても、全く守備が変わらなかった。
 チャンスを決めきれない状況が続いて流れが悪くなるのは、相手が守備に慣れ守備意識が高まるからだと思うのですが、このシーンでも健太郎はフリーでパスを出せたし、森本にも一度裏を取られてトラップで切り替えされて体勢を崩したところからやられています。

 

 そこから本当に怒涛のゴールラッシュ。
 後半17分、右サイド低い位置で幸野がボールを持つと、逆サイドの中村がどフリーになっています。
 そこへ大きく展開すると中村は相手を交わし、シュートが決まって2点目となります。
 ジェフは前半からクロスで逆サイドを狙う形がありました。
 福岡は3バックにしても、逆サイドの裏を大きく空けることが多かったですからね。
 このシーンではオフサイドラインも凸凹で、中村がぽかっと空いていました。


 続く後半20分。
 福岡のCKからジェフのカウンター。
 慶、キム、町田とつないで、幸野が相手DFラインの裏を抜け出して、最後はキムが中央で合わせて3ゴール目。
 この時もほぼフリーでパスをつないで行って、悠々と幸野が裏を抜け出すことが出来ました。
 福岡の寄せが非常に甘かったわけですが、この時間帯は気持ちが切れていたのかもしれません。
 

 ゴールを決めたのはCBのキムでしたが、こういったカウンターのチャンスではしっかりと走りこむ動きがこれまでの試合でも目立っています。
 この日は酒井もきっちりと止めていましたし、いろんな意味でキムの頑張りが報われたゴールだったとも言えくるのではないでしょうか。
 まだ試合は残り25分あり、試合が動いたのはたったの5分の間だったわけですが、既にこれで試合は終わってしまった印象です。



 キムの得点直後にも谷澤、幸野が右サイドでパスをつなぐとバイタルエリアで健太郎がフリーに。
 健太郎がスルーパスを出し森本が走りこんでシュートを放ちますが、右脇を逸れます。
 さすがにこれ以降はジェフの勢いも減少していきます。


 後半29分には森本が中央で受け、途中投入の右サイド井出とパス交換をして、森本がシュートを放ちますが大きく枠外。
 その直後には福岡のカウンター。
 ジェフは守備の戻りが遅く、簡単に3対3の状況を作られてしまいます。
 中央でボールを持ち上がった平井ですが、右サイドでフリーになった酒井へのパスがずれ、酒井が上げたクロスも大きくずれてチャンスにはなりませんでした。
 福岡は前半から攻撃でもミスが多かったように思います。


 その直後、福岡のミドルシュートが中村に合たってあわやオウンゴール
 その流れで得たCKでジェフがカウンター、3対3の数的同数担ったのですが途中出場のケンペスへの井出のパスが流れてしまいます。
 井出が受け直して相手を抜き去り、シュートを放つもGKがセーブ。


 今度は福岡の攻撃。
 左サイド低い位置でパスを回すと、勇人が守備のサポートに行くためサイドに寄ります。
 しかし、その分相手1ボランチの前が完全に空いてフリーに。
 そこを使われ高い位置まで持ち込まれて、左前方へラストパス。
 ゴール前に上がっていたイ・グァンソンがシュートを放ちますが、智がスライディングでCKに逃れます。
 3-0で目立たないシーンではありますが、完全に崩されたシーンでした。



 お互いゴール前でのチャンスはあるものの、最後の精度に課題があってゴールは遠い印象でした。
 残り10分のところでジェフは健太郎に変えて兵働を投入。
 ここ数試合、試合に出場していない兵働ですから、ここで慣らしておこうということでしょうか。


 しかし、後半45分、福岡の攻撃。
 GKから堤、中原とパスをつなぎますが、中原になかなかジェフの守備が来ない。
 ボールを持ち上がった中原は、一気に兵働の後ろとなるバイタルエリアにグラウンダーのパス。
 勇人が反応してパスカットを狙うも間に合わず、元G大阪の平井に山口智も交わされます。
 キムがなんとかカバーしてバックパスを選択させ、金森にミドルシュートを放たれますが、危ないシーンでした。


 このあたりリードした余裕もあったのかもしれませんが、ジェフの守備にも甘さが見られました。
 それでもなんとかそのまま無失点で試合終了し、3-0でジェフの勝利となりした。
■相手が崩れた試合展開
 冒頭でも言ったように、率直に言って福岡の出来の酷さの目立った試合だったと思います。
 前にガツガツと出ていくスタイルがどうのとかいう問題ではなく、最低限の約束事すら機能していない印象でした。
 ここ数試合の成績を見ても前節富山戦には勝っていますが、そこまで3連敗ということで実際厳しい状況になっているのでしょう。
 9月20日の大分戦でも、0-3と大敗を喫しています。



 明確に問題が浮き彫りになっていたのは、サイドでの守備。
 ジェフのSHがサイドでボールを持っても、福岡はウイングバック1枚しか対応してこない。
 当然ジェフはそこにSBが絡んでくるし、状況によっては町田など前線の選手もサポートに行く。
 しかし、2人、3人が絡んでも、福岡の守備は変わらず1人で対応しようとするだけで、後方をカバーする選手もいない。
 ジェフはパスをつなぐだけでフリーでボールを持った状況を作れることになりますから、当然そこでチャンスが作れますよね。
 このような展開がサイドだけでなく、ピッチ全体で見られた印象です。


 福岡はどのようなロジックで、守ろうとしていたのか。
 CKでゴール前の外をフリーにしがちだったのを見ても、ともかくゴール前で弾ければいいという判断だったのでしょうか。
 あるいは攻撃を見ても縦への局面での勝負ばかりでしたし、守備でも最終的にゴール前で競り勝てればいいという戦い方なのかもしれません。


 けれども、ボールのあるエリアで簡単にフリーの選手を作ってしまうため、どうしてもそこから守備が後手に回る。
 しかも、後半に入ってから積極的にDFラインも押し上げてきたことによって、ますますスペースが出てきてしまった。
 それによって、ゴール前でもジェフの選手を捕まえきれなくなり連続失点…と。
 決壊したダムのように、一気に崩壊してしまいましたね。


 福岡は攻撃に関しても前にガツガツとしかけさせるだけで淡白になってしまい、工夫が感じられませんでした。
 本来のエースである城後も、トップ下の位置で機能していなかった印象があります。



 サッカーは相対的な部分もあるので見方も難しくなってはしまいますが、ジェフからすれば相手の弱点を突けて3-0の大勝となったわけですから、しっかりとミッションは果たせたと言えると思います。
 この日は気温が落ち着いていたこともあってか、ジェフの選手たちはコンディションもよさそうに見えました。
 2試合連続でホームという面も大きかったのかもしれませんが、このコンディションが今後も維持できるかどうかも重要ですね。


 あえて課題を考えるとやはり前半、相手がそこまで無理にラインを上げて来なかった時に、決定機を作れなかったこと。
 後半のようにラインを上げてくれればチャンスは作れるけれども、なかなかあそこまで無謀に前に出てくることを期待するのは難しいところがあるでしょう。
 また後半においては決定力も、どうしても気になる部分がありました。
 3点取ったから問題なかったようにも思えますが、決めるチャンスはまだまだあるくらいでしたね。


 3得点以降は無理をする必要もなかったですし、攻撃に関しては失速しても仕方のないところだと思います。
 ただ、終盤に相手が冷静になってパスをつないできたときに、2度、3度と中盤でフリーな選手を作り、そこからピンチになっていた。
 これはここまでの試合でも見られた問題でもありますし、あの攻撃を前半からもう少し作られていたら危なかったかもしれません。
 そこはやはり今後も課題と言えるのではないでしょうか。



 とはいえ、ともかく3試合ぶりの勝利。
 こちらが崩したというよりも、相手が勝手に崩れたといった印象の試合だったように思いますが、残り数試合となってきて勢いが大事なのもまた事実でしょう。
 この試合で得た自信と勢いを前向きに捉えつつ、慢心せずにシーズン終盤戦を戦っていきたいところだと思います。