均衡した試合も得点を奪えずスコアレスドロー

 12,346人と、久々に多くの観客が訪れたフクアリ
 状況から考えて、クラブが様々なところにお願いするかたちで動員をかけたのでしょう。
 いわゆるタダ券を配るような行為はチケットの価値を下げるという意味で好ましくない場合もありますが、現状のジェフに関して言えば席を余らせるだけで無駄にしてしまう可能性もありますから、これでいいのではないかとも思います。


 ただ、こういったことが出来るのであれば、少しずつでもコンスタントに動員をかけることはできないのかなというのと、一気にやるのであればもっと大事なカードで盛り上げてほしかったような気もしなくもありません。
 まぁ、この辺りは内部にもいろいろな事情があるのかもしれませんけど、学生にタダ券を配って来てくれるのであれば将来への投資にもつながる可能性もありますし、今後考えてほしいところでもありますね。
■相手を押し込むも得点ならず
 ジェフは岡本、ナム、井出がスタメンから外れました。
 3連戦の最後の試合ということでコンディションなどを考えた可能性もあるかもしれませんが、岡本、ナムはベンチにも入っていませんでした。
 特に岡本はここまで全試合でスタメンフル出場してきた守護神ですが、怪我との情報もあるそうで。
 代わりに出場となった高木は天皇杯などで可能性を見せてくれてはいましたが、シーズン終盤戦においてGKが1人離脱するということでやはり不安は残ります。


 ナムも怪我が多い選手ですが前節スタメン出場したものの45分で交代させられてしまいましたので、守備などの課題もあってベンチからも外れたということなのでしょうか。
 ナムの代わりにボランチには健太郎が入り勇人とのダブルボランチ
 井出の代わりに右SHには幸野が入りました。
 また、最終ラインではCB山口智が怪我から復帰し、大岩が右SBに戻って山口慶はベンチスタートになりました。
 慶がスタメンを外れたので大岩がキャプテンに戻るのかと思ったのですが、ここにきて智がキャプテンマークをまいていましたね。
 ここまで来たら大岩に頑張ってほしかった気もしますが、これからの大事な時期に向けて…ということなのでしょうか。



 立ち上がり試合の流れをつかんだのは、攻守においてアグレッシブに前に出てきた東京V。
 東京Vは守備ではジェフがボランチやSHにボールをいれた瞬間に、中盤の選手が潰しにかかってくる。
 シンプルな守備ですがジェフはこれによって縦へのボールがなかなか入らず、長めのボールや難しい意図のパスが多くパスミスが目立つ展開になります。
 攻撃では中盤で奪った瞬間に切り替えて、多くの選手がカウンターに加わって行く。
 特に縦へのスプリントが効果的で、攻撃参加するだけでなく裏まで走り抜けることによって、相手の守備組織を混乱させる動きをしてきました。


 前半11分、東京Vの右サイドからのクロス。
 落としたところを鈴木が拾い、シュートを放つもポスト直撃。
 ジェフからすれば、ポストに救われたシーンでした。


 なかなかジェフが良い形で縦にパスを出せませんでしたが、前半20分ジェフの攻撃。
 佐藤勇人が右サイド低い位置からクロスをあげると、大岩がヒールキック。
 これが逆サイドを走りこんできた中村に流れて、ミドルシュートを放つも枠外。
 これがジェフのファーストシュートになります。


 この頃から東京Vの中盤におけるプレスが弱まり、守備ラインが下がって行きました。
 このあたりは連戦の影響もあったんでしょうか。
 前半23分にはジェフが右サイドのプレスからボールを奪うと、そのまま森本がクロス。
 これは弾かれますが、中村がひろってミドルシュートを放つもGK正面。
 この時間帯は東京Vのパスミスも多く、流れがジェフに傾いていました。



 前半36分には中村による中盤からの長めのボールを森本がヘディングで合わせますが、GK佐藤がセーブ。
 しかし、ジェフはボールを持って相手を押し込む割りには、なかなか決定機が作れなかった印象です。
 東京Vの守備は中盤で反応が遅くなり後手に回ることが多かった印象だったのですが、効果的にそこをつけなかったように思います。


 前半44分には東京Vが、中盤右サイドから中央にパス。
 トップ下付近にいた鈴木がワンタッチで縦パス、平本がワンタッチで落として、ペナルティエリア前正面で中後がミドルシュート
 ゴール左隅を外れますが、流れるような攻撃でひやっとした瞬間でした。
■試合終盤は足が止まり…
 ハーフタイムを挟んで、東京Vは落ち着きを取り戻した印象です。
 ジェフの縦パスに対してしっかり反応出来るようになってきて、DFライン、MFラインがずるずると下がる問題が改善されました。
 前半立ち上がりのような激しいプレスではなかったものの、後半から問題を改善してきた印象です。


 後半3分、東京Vの澤井が右サイドでボールを奪い、そのままクロス。
 平本が足元で合わせてゴールを狙いますが、ゴール右横を逸れます。
 後半7分にはジェフ、右サイドからのコーナー。
 東京Vの守備陣がニアで跳ね返せず、森本が足元で合わせるも外してしまいます。


 この頃までは一進一退の時間帯でしたが、後半20分。
 ニウドがカウンターで左サイドを攻め上がり、杉本にクロス。
 杉本のヘディングシュートがゴール左脇を横切る、危ないシーンを作られます。
 その直後には中盤の奪い合いで途中出場の井出がボールを奪われ、澤井がそのままボールを持ち込んでシュート。
 後半25分には平本が高木、智をチェイシングして得たFKから、井林がGK正面のヘディングシュート。
 東京Vが立て続けに、良い形で攻撃を作ります。



 後半28分。
 相手GKからのゴールキックを智が跳ね返したボールの処理を、相手DFがもたついている感に途中投入されたばかりのケンペスが奪い、シュートを放ちますがGK正面。
 後半35分には東京Vが右サイドからポストプレーを使いながら、左サイドへテンポよく回していき、安在が左サイドを抜け出します。
 安在のセンタリングはジェフDFがはじくも、中盤高い位置で中後が拾って強烈なミドルシュートを放つもクロスバー
 ジェフとしては、前半11分に続いてゴールマウスに助けられました。
 その直後にも東京Vが右サイドの安西から斜めに楔のパス、南がポストプレーで安西に戻すと、アーリークロス
 そこに南が飛び込み、触ればゴールか…というシーンが作られます。



 試合終盤も東京Vペースといった印象。
 ジェフもオナイウを投入して攻めに転じようという意思を感じましたが、選手たちには疲れが見えていて守備で激しく行けなくなっていきました。
 後半43分には東京Vが右サイドでニウド、安西とパスをつないでと攻め込んでいくと、FWが縦には仕込んでいくのにつられて、DFラインが下がってしまいます。
 その下がった手前に安西が入り、右サイドでボールを持ったニウドがマイナス方向のセンタリング。
 安西がフリーでボールを受けたもの健太郎が素早く反応して、何とか事なきを得ます。


 結局試合はそのまま0-0で終了。
 ジェフも終盤ボールを持ち込むシーンはありましたが、良い形でのシュートは少なく得点を奪えずに終わってしまいました。
■攻守に改善点は感じたものの…
 前半はジェフの方が流れが良かったと思いますが、後半途中からは東京Vの方が勢いがあった印象だったかなと思います。
 ジェフとすれば前半のうちに点を取りたかったところですが、シュート数こそ多かったもののなかなか決定的なチャンスは作れなかったかなとも思います。


 監督が変わった東京Vは前節もそうでしたが、やはりカウンターの形を作るのがうまい。
 単純にロングボールを放ったりドリブルで仕掛けるだけでなく、攻守の切り替えが早くうまく相手を釣る動きをしながらフリーの選手が作れますね。
 ジェフは関塚監督体制になってカウンター色を強めている印象もありますが単純なロングボールやドリブル突破が多く、最近はカウンターであまりチャンスが作れていない印象もあります。
 このあたりは選手の質の問題というか、東京Vは若くスピードのある選手が多いので、カウンターサッカーに適した構成になっているとも考えられるのかもしれませんが。
 一方のジェフはやはりベテランでテクニカルな選手が多いので、パスワークに合ったチームとも言えるのかもしれません。



 トータルで見れば、均衡した試合だったように思います。
 ただ、東京Vの方がポストやバーに嫌われるシーンが2度もありましたし、若干東京Vの方が勝利には近かったのかなとも思わなくもありません。
 東京Vとしてはシーズン序盤からこのサッカーが出来ていれば…と思うかもしれませんが、崖っぷちに立ったから今だからこそ若い選手を中心にがむしゃらにサッカーが出来ているのかなとも。
 まぁ、このあたりは、東京Vに限らず言えるチームが多かったりもするのかもしれませんが…。


 とはいえ、ジェフの方もここ数試合よりは良い内容だったようにも思います。
 中盤を守備的な構成にしたことにより、ここ数試合よりはプレスが効いていた時間が長かったと思います。
 その分、特にボランチからパスが出ることがどうしても少なくなりがちでしたけど、結果的に締まった試合にはなったのではないでしょうか。
 できれば攻守に活躍できるボランチが出てきてほしいところではありますが、これは長年の課題ということになりますね。


 攻撃においても、ある程度パスワークの形が作れるようになってきた印象があります。
 特に注目なのが、前線やSHの選手が相手のDF、SB、SH、ボランチの真ん中に入って、縦パスを受けて落として展開する形が何度かできていたこと。
 これは鈴木監督時代からの狙いで、関塚監督になってからも少しずつ見られていた印象ですが、ここ数試合はより明確に作れているように思います。


 町田が動いて受ける、相手のマークを分散するということも出来るようになって、その狙いがまた使えるようになった部分もあるのではないでしょうか。
 そこから一度落としてサイドに展開という形が出来ていました。
 ただ、森本とのコンビということもあって町田を使うとその分純粋な高さが足りなかったり、できればより中へのパスワークも作りたいところではないかとは思いますが…。
 またシーズン終盤に近づくこのタイミングで、「パスワークの構築ができ始めている」といった進捗状況でいいのか?という疑問は、どうしても悩んでしまうところもあります。



 しかし、それなりにやれたこともあった分、それでも勝てなかったと言えるわけで、悔しい思いは強いですね。
 こういった試合をものにできるかどうかが、残り試合においては非常に大事なわけで、勝ちきれなかった物足りなさを感じます。
 しっかりと勝ちきるためにも、どこかに明確な強みというのが欲しいところかなと今は感じるところですし、そこが大きな課題なのかもしれません。
 「少しずつ問題が改善し始めてきている」というレベルでは、なかなか強みにはなりきれませんしね…。