2ゴールをあげるも土壇場で同点に

 先日、twitterで「みんなサッカーのどこを見ているのだろう」というつぶやきをしたら、いくつか反応をいただきました。
 審判だとか監督のしぐさなどよりも、もっと本質的ななものがあるのでは…という意味でつぶやいたのですが、突き詰めていくと深いテーマかもしれません。
 個人的には「そのチームがどういった狙いを持ってサッカーをしているのか」を、まず考えます。
 攻撃時にはどのようにボールを回し、最終的にどのように点を取る形を考えているのか。
 守備ではどのようにボールを追いかけ、どのような守備組織を作るのか。


 結局、それは「良いチームとは何か」という、よくある疑問にも繋がってくるように思います。
 自分たちの狙いが明確にあり、それに沿った動きが出来て、攻守に狙い通りの形をどれだけ作れるのか。
 それが最終的に、強いチームに繋がっていくのではないかと思うからです。


 強いチーム、結果を残すチームというのは、やはり明確に自分たちの形を持っている。
 もちろんスポーツだから相手もあるし、偶発的な勝利が起こる場合もあるけれども、それだけでは長い間は続かない。
 W杯でネタのように扱われてしまって言いづらくなってしまいましたが、自分たちのサッカーを作れるかどうかが大事だろうし、W杯での日本代表は自分たちのサッカーが明確に作れておらず、曖昧な部分を残したまま臨んでしまったがために、結果が出なかったのだと私は思っています。
 大枠での「サッカースタイル」というだけでなく、ディテールも含めて明確に戦い方を作れるかどうかが大事ですね。
■またもCKからやられてジェフが失点
 ジェフのスタメンは前節岐阜戦と同じ面々。
 やはり前回の試合でメンバーが変わったのは、ターンオーバーというよりも北九州戦に敗れてどこかを変えたいという思いが強かったのでしょうね。
 一方の愛媛は一部メンバーを変えてきました。
 今季これまでチームトップの10ゴールをあげ、J2得点ランキングでも9位に付ける河原は出場停止。
 ちなみにジェフのチーム得点王ケンペスも、ここまで10ゴールとなっています。



 お互い中2日の試合でコンディションが気になりましたが、立ち上がりから両チームともに積極的に前へのプレスをかけていきました。
 その結果、両ゴール前でのプレーが増える展開に。


 ボールを奪ってからの愛媛は、後方からかなり細かくパスをつないできました。
 森本と町田の裏、ナムや勇人の裏を積極的に付く縦パスを狙ってきた印象で、中央から強引にパスを展開しようという意図を感じました。
 ただ、中盤の選手の距離感が離れすぎている印象があって、パスワークのスピードにも課題があるため、ジェフからすれば読みやすい状況にだったと思います。
 ジェフはその縦パスを中盤で奪って、カウンターから攻撃を作っていきました。



 しかし、前半20分あたりから、ジェフの前からのプレスが機能しなくなっていき、勢いが落ちていきます。
 愛媛が無理に縦パスを出さなくなり、後方でサイドにパスを散らされるとプレスがずれていき、ジェフにスペースが出来ていく。
 相手のボランチ、両ストッパーをどう見るのかが曖昧になっていき、そこから攻撃を作られていく。
 前にフリーの選手が増えていくので、後方の選手も下がって後ろのスペースを消さざるを得なくなり、全体的に押し込まれていきます。



 前半34分、愛媛が左サイドでパスをつないで、左ボランチが中盤でフリーになったところから、大きく右サイドに展開。
 一度戻して右ボランチがフリーになったところからクロスを上げられ、表原がヘディングシュート。
 これはGK岡本がファインセーブ。
 ジェフの守備は1つ戻したところが、どうしてもフリーになりますね。


 その流れで愛媛が得たCK。
 岡本が一度は跳ね返ますが、もう一度CKへ。
 このCKを村上がヘディングで決めて、愛媛が先制します。


 このシーンでの愛媛はゴール前に選手が集まって、そこから分散してマークを外す動きをしていたのですが、完全に村上がフリーになってゴールを決めました。
 ゴール前で選手が集まってから散らばる動きはそこまで珍しくありませんが、ここまで効果的に決まるシーンはあまり見ない気がします。
 しかも、フリーにしたエリアはゴール真正面とお粗末な守備でした。
 ここ数試合、CKからやられるシーンが、多すぎますね。
■2点奪うも土壇場に同点に
 ジェフは後半スタート同時に、ナムに代わって健太郎を投入。
 やはりナムは攻撃面では良さがあるものの、守備面でバランスが取れないと見たのでしょう。


 前半開始4分。
 その健太郎がチャンスを作ります。
 ジェフがパスを回し愛媛が守る展開。
 健太郎が中央で勇人とパスをつなぐと、前方の谷澤にパス。
 ペナルティエリアの前でしたが、相手の守備が来ないと見ると、思い切ってドルシュート。
 これが決まって同点とします。


 愛媛としては1点リードして、後半から慎重に入り過ぎた印象があります。
 引いて守る意識が強かったのかもしれませんが、それにしても人に行けていなかった。
 逆にジェフの攻撃に関しては、まずよく健太郎が谷澤の位置を見ていましたね。
 愛媛が受けて守ろうというところで、谷澤のところがエアポケットのように空いていた。
 そこを見逃さずに縦パスを入れた。
 そして、それを決めた谷澤のシュートも素晴らしかったと思います。



 同点としたジェフは、動きが良くなり、攻守に先手を取れるようになってきます。
 後半から入った健太郎はカバーリングも良く前にパスも出せていて、攻守に機能していましたね。
 一方の愛媛は精神的なものなのか、体力的に厳しいのが、動きが重くなっていきました。
 守備ではボールホルダーを抑えきれずずるずると下がり、攻撃ではカウンターの人数がかけられなくなっていきます。


 得点後ジェフが猛攻をしかけますが決定的なチャンスは作れずにいると、後半15分からは愛媛も落ち着きを取り戻していきます。
 ジェフは勢いが落ちていき、また守備時に中盤のスペースができ始めていました。



 嫌な流れかと思われた後半23分。
 中村が左サイド中央でボールを受けると、そこから裏へ浮き球のパス。
 これを絶妙なタイミングで飛び出した森本が足元で合わせて、2-1とします。


 森本がカウンター時以外の飛び出しで、裏を取ってゴールを決めたのは久々…というか、ジェフにきてほぼ初めてと言えるくらいではないでしょうか。
 ようやく相手の裏を取る形で、得点を奪えましたね。
 中村のアシストも久々でしょうか。
 ポイントとなったのは、中村がサイドからではなく中盤のエリアからボールを出せたことではないかと思います。
 中村と森本の距離が近かった分、パスを出す方も受ける方も、合わせやすかったのではないでしょうか。
 愛媛は谷澤のゴールシーンでもそうでしたが、左サイド中央寄りのエリアが空くことがありましたね。



 それ以降は停滞状態に。
 愛媛は後半20分にジェフにも所属経験のあるロボが途中出場。
 愛媛が「ストライカーファンド」で獲得した選手です。
 しかし、ロボの動きはどうも重そうに見えましたね。
 一発を期待されての投入だと思いますが、前線の動きが少なくなってしまった印象でした。


 このままジェフが逃げ切れるかと思えた、後半45分。
 愛媛左サイド、大外から左サイド中央寄りにいた近藤へパス。
 近藤へのジェフのマークが一瞬遅れて、ジェフの選手たちはお見合い状態に。
 近藤もパスを受けきれず、ころころと中央へ転がっていったボールは、フリーとなった堀米へ流れます。
 そのまま掘米の放ったシュートはバー直撃。
 CBは堀米に寄せようとしたため、セカンドボールへの反応が遅れ、西田が先にヘディングで合わせて同点弾。
 近藤、堀米と中央のマークが中途半端なところを突かれて、土壇場で同点とされます。
 試合はそのまま試合終了となってしまいました。
■中盤の守備で流れをつかみきれず
 何とも残念な試合展開でした。
 最近のジェフは勝負強くなった、メンタルが強くなったという話も聞きますが、本当にそうなのかな?という思うことがあって。
 メンタル面は数字に表れる部分ではないので、何とも言い難いところがありますが、少なくとも勝負強さという点においては疑問があります。


 明らかに関塚監督になってから、引き分けの試合が増えている現状。
 それは接戦を勝ち切れていないということになるわけですから、「勝負強くなった」というのは違和感があるというか。
 これが残留争いなどなら勝点1でも稼いでいけばいいので負けないことが重要になりますけど、昇格争いということになるとどうしても勝って勝点3を奪っていかなければいけないですからね。
 プレーの局面だとかそういった部分のことを言っているのかもしれませんが、少なくともチーム全体においてはむしろ先行逃げ切りのイメージの方が強い。
 京都戦も後半ロスタイムに失点し引き分けてしまいましたし、今回もまた後半45分にやられてしまいました。 



 それでも攻撃においては、岐阜戦よりは改善された部分もあったのかなと思います。
 相手の守備がずるずると下がりがちな上に、中盤にスペースがあったことも大きいでしょう。
 愛媛は前回対戦した時の方が守備ブロックをしっかりと形成出来ていて、中盤のスペースもなかった印象があります。
 シーズンが進むにつれての疲れもあるのでしょうか。


 愛媛のゴール前中央に人数が寄りがちで、サイドにスペースがあった印象です。
 特に中盤サイド寄りのエリアが空きがちで、そこから攻撃を作ることが出来ていた印象でした。
 でも、やはり現状だとジェフは遅攻時に中盤サイド寄りのエリアまでは取れても、さらにそこから中や前には入って行けず、シュートやゴール前への中距離のパスやミドルシュートという選択肢になってしまうところがあります。
 それによって、2ゴールは良かったものの、それ以外のシーンでは攻めていた割にチャンスが少なかったのかなとも思いますが。



 それでもこの試合は2得点できたし、前節よりは攻撃面は良かったのではないかと思います。
 やはり問題は守備の方ではないかと思います。
 関塚監督就任直後は、リードを奪えば割り切って守備に回り相手を抑えられる試合もあった。
 しかし、現状だと守ろうとしても、組織的に守備を固めきれず、流れを完全にジェフのものにはしきれない。


 どのようなサッカーを目指すのかにもよるでしょうが、関塚監督なら基本的には堅守速攻のチームということになると思いますから、攻撃はある程度課題があるにしても、守備面で穴を潰せないとなるとなかなかベースとなるチームの土台が作れないのではないでしょうか。
 CKでの失点が多いことも非常に気になりますが、個人的にはやはり中盤で穴を作ってしまうところ。
 この試合でもそこで試合を締めきれずに、するすると勝点を失ってしまったのではないかと個人的には思います。


 中盤の守備組織がきっちりと作れないがために、1点リードした状況でも守りに専念しきれず、守りに行くのか攻撃に行くのか、中途半端になってしまった印象があります。
 健太郎が入って多少は改善された部分があったものの、それでもまだボランチの前を取られるシーンが目立っていましたから、やはり中盤の守備の甘さが目立った試合だったように思います。
 シーズン終盤に向かうにつれ、今後はよりシビアな試合展開が増えるかもしれませんから、守備組織の構築をもう一度やっていく必要があるのではないでしょうか。