健太郎の投入で0-1の逃げ切り

 岐阜戦の入場者数は7276人と、かなりさびしい数字となりました。
 今季のジェフはシーズン序盤こそ厳しい動員数でしたが、気温も上がるにつれて徐々に盛り返してきていました。
 様々なイベントを行ったゴールデンウィーク中の群馬戦には11833人を集め、6月28日に行われた20節松本山雅戦ではアウェイ動員もあって13243人、続く23節長崎戦でも11458人となっていました。


 しかし、それ後の24節山形戦で8149人と大きく人数を落とすと、26節横浜FC戦、29節水戸戦と8000人を切る厳しい状況になっています。
 鈴木監督のサッカーでは面白くないから観客が集まらないという説もありましたが、実際には昨年は一昨年以上の動員を集めていますし、関塚監督就任以降も数字は伸びていません。
 あるいは、もしかしたら松本戦、長崎戦は監督交代による大きな変化・向上も期待されて一時的に動員が増加したのかもしれませんが、実際には根本的な問題は変わらないと判断されてそれ以降は観客が遠のいたのか。
 といっても、鈴木監督解任直前の18節京都戦は9336人を集めているんですけどね…。


 カードの問題もあるとはいえ、特に山形戦、横浜FC戦、水戸戦はちょうど夏休み期間で、Jクラブおいて稼ぎ時とも言える時期だと思います。
 その間に稼げなかったのは、シーズン全体を通じても痛いところではないでしょうか。
 現在は1試合平均の観客動員で9000人を割っていますが、もし最終的に9000人を割れば2002年以来となり、フクアリ移転後では初。
 どうにか終盤に昇格争い、プレーオフ争いに割って入って、動員の方も伸ばしていきたいところですね。
■岐阜の裏を突いて先制
 北九州に1-3で敗れたジェフは、メンバーを変更してきました。
 まずトップ下に幸野ではなく町田を起用。
 幸野はベンチにも入りませんでした。
 前線は頻繁に変わっているので驚きはないですが、ボランチ2人も一気に変えてきました。
 長らくスタメン出場していた兵働と健太郎をベンチに下げて、勇人とナムを起用。
 その他では山口智がまだ怪我から復帰せず、DFラインは前節と同じとなりました。


 試合は早い段階で動きます。
 前半15分。
 岡本からのロングキックのセカンドボールを井出が右サイドで拾うと、山口慶にバックパス。
 このボールをポンッと相手DFライン裏に蹴ると、町田が飛び出して相手の裏を取ります。
 そのままセンタリングを上げると、谷澤がどフリーでシュートを決め先制。



 この日の岐阜は、守備が良くなかったですね。
 良くなかったというか、良い・悪いという話もありますが、それ以前に守備の意図が見えてきませんでした。
 前線からの守備が出きておらず、プレスが効いていないのにもかかわらず、積極的に最終ラインを押し上げてはジェフに裏を取られる展開。
 ラインをあげる割には、裏のスペースのケアへの意識が非常に希薄で、「後ろへ戻る」という動きが少なく、オフサイドばかりを狙っていた印象でした。
 ジェフが先制点をあげたシーンも、一本のロングボールだけで裏を取られただけでなく、谷澤が中でどフリーだったのも重要でした。
 対面の益山が裏のスペースをケアする意識がなく、完全に遅れていました。


 スコアが動いた後も岐阜DFラインの前への意識は非常に高く、時にはジェフがゆっくり後方でボールを回しているときに、岐阜のDFラインが押し上げて、味方MFラインを吸収するほどでした。
 確かにDFラインが積極的に押し上げてMFラインを吸収するという形も、時にはあると思います。
 それによって相手のFWをオフサイドラインに取り残す。
 あるいは相手FWと2列目の選手を同列に押し込んで、窮屈な状態にさせて攻撃の形を作らせない。
 そういった狙いがある場合もあるでしょう。
 もっともオフサイドのルール変更によりオフサイドとなる選手がボールに関与するまではオフサイドを取らないとなってからは、そういった積極的な押し上げをしてくるチームは減ったように思うのですが。



 しかし、それに対して現在のジェフの攻撃はというと、ポストプレーからの形が作れず、バイタルエリアで前を向く展開も出来ていない。
 ようするにFWの手前のエリアを攻略できないわけで、DFラインとMFラインの間を狭めて相手を窮屈な形に追い込んでも意味はないわけです。
 

 では、何がジェフの攻撃パターンかと考えると、やはり一番は後方からの長いボールで相手の裏を突く攻撃。
 岐阜は前線からのプレスがかかっていない状況で、見す見すそのスペースをジェフに与えていました。
 この日はスピードのある町田を前線で起用していましたし、岐阜のCBはスピードには課題も感じました。
 ジェフの試合をしっかりと見ていたのか、首をかしげたくなるような守備だったと思います。


 加えて、ジェフが右サイドで裏を狙うと、岐阜の左SB森だけが押し下げられる形で、DFラインが凸凹になってしまう場面も目立ちました。
 中盤の守備でも寄せが甘く、全体的に締りのない状況になっていたように感じます。



 ただ、ジェフの方も先制点以降はなかなか決定機を作れずにいました。
 確かに裏狙い長い縦パスは、一気にチャンスになる可能性もある。
 けれども、確率としては低いわけで、そればかり狙っていても攻撃における確実性は低い。
 前半のチャンスもこのシーンと、前半25分左サイドからのボールを町田が落として谷澤が長めのシュートを打ったシーンくらいでした。
 後半からは岐阜のDFラインの押し上げも落ち着き、裏も狙えなくなっていったように思います。 
■健太郎投入で守備固め
 対するジェフも、中盤の守備には課題が感じられました。
 岐阜は4-4-2の状態から、攻撃時にはダブルボランチが縦関係を作るような動きをしてきます。
 岐阜のアンカーには町田が行くことによって改善された部分があったのですが、もう1人のボランチと下がって受けるクレイトンをつかみきれない状況が続いていました。


 単純に局面でダブルボランチがクレイトンなどに抜かれるシーンも多かったですし、ボランチが前に出すぎて裏を取られるシーンも目立っていました。
 リトリート時のダブルボランチの位置取りはむしろ低すぎるくらいで、その分その前で選手をフリーにさせていました。
 しかし、そこからボランチが前に出ていってもボールを奪いきれなかったり、パスを散らされてボランチ脇にスペースを与えてしまったりと、ポジショニングバランスも非常に悪かった。
 岐阜は特に前半DFラインの裏のスペースケアが出来ていませんでしたが、ジェフは中盤中央のスペースケアが出来ていなかった印象です。



 ただ、岐阜の方も、そこからの工夫がなかったですね。
 ジェフのボランチ前後が空くためなのか、中央攻撃にこだわり過ぎていた印象がありました。
 後半途中から難波がサイドに流れるプレーも増えましたが、今度は中央に選手がいない。
 こういった時にナザリトがいればガツンとサイドのクロスからシュートに持ち込めるのでしょうが、この日はサイド攻撃を狙ってもターゲットがいなかったと。
 結局はそこが大きかったのかもしれません。



 試合は後半11分に、益山が2枚目のイエローカードを受け退場。
 中村に少し手がかかったと判断したのかもしれませんが、厳しめの警告だったようにも見えました。
 しかし、その後岐阜はCBヘニキが積極的に攻撃参加することで、攻撃では人数不足を感じさせない状況を作り出します。
 益山退場直後には岐阜のカウンターでクレイトンが右サイドを駆け上がり、逆サイドに大きくサイドチェンジ。
 水野が切り替えして放ったシュートは、岡本がふれた後にバー直撃という危ないシーンも作られます。


 ジェフはしっかり守備をしてカウンターを狙う形に。
 岐阜はヘニキが上がったスペースを埋めるのはどうしても無理があり、捨て身の攻撃参加といった印象がありました。
 けれども、ジェフはなかなか追加点を決めきれません。



 そして、後半32分。
 ジェフはナムに代わって健太郎を投入し、守備固めを図ります。
 途中出場ということを差し引いても、健太郎が守備面でかなり効いていましたね。


 しっかりと次のプレーを予測して、スペースを消す。
 中盤でフリーになった選手がいれば、素早くマークに行く。
 パスコースを消しながらチェックに行く。
 健太郎投入で中盤の守備が大きく改善された印象でした。


 健太郎の投入からジェフの守備面でのバタバタが落ち着いていきます。
 結局追加点はなかったですけど、0-1でジェフが逃げ切りました。
■悩ましいボランチ問題
 相手の出来も悪く、何とも評価しづらい試合だったかなぁというのが素直な感想です。
 新しく投入されたダブルボランチも、うまくいったとは言いづらいでしょう。
 それが逆に、途中投入された健太郎の良さを引きたてた試合だったように思います。



 確かにナムは相変わらず技術のある選手で、トップ下からチャンスを作れない今のジェフにとって、ボランチからのチャンスメイク能力というのは非常に重要なのでしょう。
 だから、兵働の代わりということで、ここ数試合は井出やナムを試しているということになるのだと思います。
 けれども、ボランチで起用されたナムでしたが、プレー内容はまるで2列目のような動きでした。


 2列目ならともかく、ボランチの位置で簡単に相手にいなされて縦や斜め前にパスを出されては、そこから一気に相手の決定機につながってしまう。
 そういった展開が1度や2度ではなかったですし、もっと慎重に粘り強く守備をしなければいけないと思います。
 また全体のバランスを考えたポジショニングというのも必要で、例えばとして全体のラインが下がったらボールサイドのボランチが少し前に上がってコースをケアするといった動きなども重要だと思うのですが、そのあたりが出来ていない。


 そのあたり、この試合の健太郎は賢くできていたと思います
 この日は相手の攻撃面に助けられていた面も大きいでしょうし、健太郎は疲れがなかったからこそ頭がフレッシュな状態でやれたという面もあると思います。
 ただ、ナムの場合、前半から守備面での課題を感じました。
 そういったものを身につけるのは簡単ではないでしょうし、今後もボランチでナムを使うとなるとリスク覚悟でやっていく必要が出てきそうな印象です。



 勇人に関しても勇人らしい前への良い飛び出しは2,3度見せてくれましたが、守備時にサイドに釣り出されて潰しきれなかったシーンが多かったのが残念です。
 相方が健太郎や慶などであればもう1人がバランスをとって守ってくれるかもしれませんが、この日のナムは1ボランチでは厳しい選手。
 出ていったら確実に潰さなければいけないと思うのですが、サイドで潰せず中を空けてしまうことが目立ってしまった印象です。



 特に悩ましいのは、兵働・ナムのポジションの方なのかもしれません。
 現状の守備組織だと全体がラインが下がることが多い上に、前線からのプレッシングも機能していないので、どうしても中盤のスペースが空きがちになる。
 そうなってくると、ボランチ2人に高い守備能力と広範囲を守るスピード・スタミナを期待したくなるところです。


 けれども、守備的なボランチ2人となると、今度は攻撃面で課題が出るでしょう。
 先ほども言ったように、2列目の位置でパスワークは作れていないだけに、なおさらパサータイプのボランチが欲しくなる。
 ただ、守備も出来てパスも出せる選手など、ジェフ以外のチームでもそうはいないですからね…。
 それこそ憲剛レベルの選手を探してくるというのは、簡単ではないでしょうし。



 ともかく、何とか拾えた試合。
 これを無駄にしないためにも、しっかりと良かった点と悪かった点を分析して、次につなげてほしいところではないかと思います。
 勝ったからといって、このままでいいというわけにはいかないでしょうし…。