途中交代で町田、井出を投入しての勝利

 天皇杯長崎戦、テレビ観戦となり一日遅れでの更新となりました。
 今回の場合は生放送もなくて仕方なくこうなったのですが、ナイトゲームだと時間の問題もあるので、一日遅れの方が楽ですね。
 ただ、ネタの鮮度と言う身ではどうしても落ちる部分があるわけで、悩みどころです。
 

 天皇杯は4回戦も波乱続き。
 広島が敗退し、甲府が北九州に、鳥栖が山形に敗れています。
 過密日程の影響も出ているんでしょうか。
 ジェフ対長崎戦はJ2同士の戦いとなりましたが、過密日程の影響というのは、この試合にも出ていたように思います。
■サイドチェンジに対応できず失点
 ジェフは大幅にメンバーを変更。
 GK高木、DFラインに右から山口慶、大岩、田代、佐藤祥。
 慶は怪我による長期離脱からの復帰。
 関塚監督になってから初スタメンとなり、関塚監督体制ではキャプテンマークを大岩が常につけていました。
 キャプテンを考え直すという話もしていたのですが、結局本来のキャプテンである慶が付けていました。


 MFラインは右から田代、ナム、勇人、ジャイール
 ジャイールはジェフ復帰後、初スタメン。
 前線には幸野とケンペスとなりました。
 ここ最近出場していない大塚は、この試合でも起用されませんでした。
 一方で長崎は、リーグ戦のレギュラーとほぼ同じメンバーでした。



 試合は立ち上がりから長崎ペース。
 前半10分、早くもジェフが失点します。
 長崎が右サイドから逆サイドへ大きく展開すると、ジェフはサイドチェンジへの対応が拙く、逆サイドで一気にピンチとなってしまいます。
 大きく展開されてオープンスペースに出された分、守備で後手に回り、押し込まれるジェフジェフ。
 DFラインが下げられ、サイドから中央にパスを出されると、相手選手に付いていた山口慶が交わされて縦パス。
 そのまま素早くセンタリングを上げられて、小松がヘディングでゴールを決めます。


 メンバーを大幅に変えたジェフですが、ここ数戦目立っているように、この場面でもサイドチェンジからやられてしまいました。
 基本的には人に付く意識が強いので、ボールサイドに寄ってしまうことの多いジェフ。
 けれども、中盤で相手選手を捕まえきれず、特に相手ボランチなど後方の選手への対応がはっきりとしていない。


 そのため、一方のサイドでパスをつながれると、ボランチが空いてしまう。
 そして、そのボランチへ戻されて逆サイドへ展開されてしまうと、ボールサイドによる傾向があるので、一気に押し込まれることになります。
 2トップでも明確にこの課題が出ていましたが、この試合ではトップ下気味に幸野を起用していました。
 それでも状況は変わらなかったわけで、守備戦術に大きな問題を抱えている印象です。



 失点のシーン以外でも、例えば前半34分。
 長崎が右CBから縦パス、FWが落として、相手右ウイングバックがボールを受けます。
 ここでは何とかジャイールの戻りが間に合いますが、すぐにボランチに戻されると、ここが簡単にどフリーになっている。
 そこから大きく逆サイドに展開されると、人に付く意識の強いジェフの守備陣は左サイドに取り残され、薄い逆サイドを攻め込まれることになります。


 ボランチから逆サイド大外に大きく展開した長崎は、ヘディングで折り返します。
 大外の選手には慶が付いていって釣り出されているため、SBとCBの間が空いて田中が後追いでそこを対応。
 その後、相手のセンタリングの質に助けられましたが、これも完全にジェフの守備組織の穴を突かれたシーンでした。
 この場面以外でも、何度もフリーのボランチから逆サイドへといった展開が作られていました。



 ジェフは攻撃においても形を作れず、ジャイールケンペスなどを狙った無理なロングボールが増える展開に。
 なかなか相手のボックスの中にボールを入れられず、苦しい展開が続きます。
 一方の長崎もロングボールを使ってきますが、ロングボールを使って相手を押し込み、ラインを下げてから中盤でボールをつなぐという意図が見えました。


 また、ジェフは右サイドの守備にも課題が出ていた印象です。
 3-4-3の長崎はウイング、ウイングバックボランチの3人で数的優位を作ろうという意図が見られましたが、そこに対応しようとする慶、ナム、田中が遅れがちに。
 特にボランチの2人は攻撃時に勇人が後ろ、ナムが前といった縦関係を作ろうとしていたために、ナムの守備への戻りが遅れ、その裏を取られることが多かった印象です。
 攻撃が作れないからこそナムを前に出したかったのでしょうが、ナムを前に出しても攻撃の展開を作れず、守備でも穴が開いて…と悪循環を感じました。
■途中出場の町田、井出がゴールに絡む
 長崎の出来云々ではなく、ジェフがひどい内容だった前半。
 1失点で助かったといった印象ですが、後半開始直後に得点が動きます。


 ジェフがキックオフのボールを後方に戻して、ケンペスめがけてロングボールを蹴ると、ケンペスが競り勝ち、後半開始と同時にジャイールに代わって入った町田が抜け出してそのままゴールを決めます。
 長崎としてはキックオフ直後で油断していた状況で、完全に町田へのマークが遅れていましたね。
 「立ち上がりは油断しないように」という話は良く聞きますけど、あそこまではっきりと「油断した」と感じる展開は珍しいように思います。
 町田は後半頭から投入されたので、長崎守備陣は様子を見てしまったところがあったのかもしれません。
 町田はこれで公式戦初ゴールとなったそうで、ここまで非常に長かったですね。



 この得点の影響もあってか、ジェフは運動量が増え、局面で球際にも素早く行けるようになっていきます。
 町田が入って動き出すことによって、他の選手もつられて動けるようになった部分も大きかったように思いますが、前半はそれを抜きにしても運動量が全く足りていなかった。
 一方で長崎は前半と比べて運動量がかなり落ちて、攻守に一歩一歩が出ていかなくなります。
 特に中盤から前の守備がまったくできなくなり、ジェフはフリーで高い位置までボールを運べるようになっていきました。 


 ただ、勢いはジェフで、相手を押し込むことが多かったジェフですが、なかなか決定機までは作れません。
 再三アタッキングサードまでは持ち込むものの、そこからの工夫が足りずチャンスらしいチャンスはできずにいました。
 前半ひどかった分、後半が良く見えなくもないですが、後半は長崎も動けておらず、そこまでジェフの状況が良かったようにも感じませんでした。
 

 後半15分にはFKからゴール目の前で田代と野田が並走する、危ないシーンも。
 後半22分には長崎CBにプレスに行くも交わされてボランチに出され、ボランチから相手のシャドーにパスを出されて、完全にジェフのボランチ裏を取られます。
 そこから持ち込まれ、逆サイドの野田に展開されて、PA内でシュートを放たれるも慶に当たって事なきを得ます。
 この辺りの時間帯からは長崎も後方で守り慣れてきて、カウンター時に力を出していくようになっていったように思います。



 その後も両者、決め手に欠く展開が続きます。
 ジェフは時間が経つにつれ中央からの展開が少なくなり、サイドに回してはクロスという展開ばかりになっていきます。
 後半36分にはCKからキムがヘディングでゴールを狙うも、GK大久保の正面。
 後半40分にはFKにキムが合わせますが枠外。
 田代に代わって投入されたキムがセットプレーからゴールを狙う展開が続きますが、そのキッカーは田中。
 予想以上に良いボールを蹴っていて、キムの高さ以上にそちらが目につきました。
 得点を除くと、後半ジェフの決定機はこの2つくらいだったと思います。



 そのまま試合は延長戦へ。
 両チーム更に足が止まって、一進一退の展開が続きます。
 試合がようやく動いたのは延長後半5分。
 左SBに回っていた慶が、佐藤祥に代わって途中交代していた井出に縦パス。
 井出が斜め前方のケンペスに出したボールは相手DFに当たってしまいますが、これを井出が拾って再びケンペスにスルーパス
 相手DFがパスカットしたため前に出てきた分、ケンペスが裏を取れてそのままシュート。
 これが決まって2-1とします。


 かなり疲労感の溜まる試合展開で、途中出場のフレッシュな井出が決めた試合ということになります。
 井出の斜め前へのパスは相手DFに引っかかったわけですが、ここに反応出来たのは井出しかいなかった。
 その場面だけ見ても、長崎の選手たちは非常に疲れていたことがわかるところでした。
■勝ち進んだものの攻守に課題
 これでジェフは天皇杯準々決勝進出。
 長崎にも公式戦で初勝利となったそうです。
 ただ、またも延長の末の勝利ということで、ケンペスなどの消耗が心配ではありますね。
 勝ち進むことで過密日程になるという悩みもありますが、致し方のないところでもあります。



 冒頭でも述べたように、この試合も過密日程による影響が出たのではないかと思います。
 週の半ばの開催ということで、フルメンバーで戦った長崎が早々にばててしまったと。
 逆にサブメンバー主体のジェフは、後半からも頑張れましたね。
 それも含めて勝負事とはいえ、長崎は運動量がベースのチームなだけに、走れないという問題は大きかったのではないでしょうか。
 長崎からすればアウェーゲームでもあったわけで、厳しい試合だったのだろうと思います。


 長崎は昨年良い結果を出したとはいえ、やはり選手層はそこまで豊富とは言えないチーム。
 一方でジェフは全体的に飛び抜けた選手はいないものの粒揃いといった構成ですから、控えメンバーでもそれなりに戦えるということなのかもしれません。
 その上でジェフは町田、キム、井出と徐々に主力級の選手を起用していって勝利したわけですが、それも当然と言えば当然というか。
 粒揃いの中でもやはり主力級の選手の方が、良い状況でプレーできていることを感じた試合でもあったようにも思います。
 もちろん、相手が疲れた状況で投入されたという面も非常に大きいのでしょうが。


 スカパーの実況では「関塚采配的中」という話を何度もしていましたが、この試合に限らず「元々酷かったチーム状況を改善した選手交代」を良い采配というのは非常に強い違和感を覚えます。
 ジーコ監督の頃の日本代表でも良く見た光景ですが、それならばスタメンからそのメンバーで戦えばいいわけで。
 もっともこの試合の場合は、途中出場した3選手を休ませたかったという意味合いもあったのでしょう。
 その選手を予定外で使わざるを得なかったのであれば問題ですが(それこそリードした状況なら大塚なども使えたかもしれませんが、その余裕はなかったということ)、当初から前半の苦戦は想定の範囲だった可能性も否定できないのでしょう。



 この試合でも90分間で言えばまたも引き分け。
 バテバテの延長戦で勝ち越しましたがリーグ戦なら勝ちきれなかったともいえるわけで、課題も目立った試合だったと思います。
 特に守備面で、サイドチェンジにどのように対応するか。
 後半に入ってからも相手のボランチがフリーになることが多く、そこから長崎がギアを上げられずに助かったシーンも目立ちました。
 例えボランチがフリーでも全体のラインを高めて相手の位置を下げたり、後方でボックスを作るなどして穴なく守れたりするのならいいのでしょうけど、現在のジェフはそこから振られて劣勢に立たされることが多い印象です。


 一方で攻撃においても、相手が疲労状態でアタッキングサードまで持ち込めても、そこからチャンスが作れなかった。
 後半あれだけ押し込んで延長まで戦っても、シュート数はジェフ10本、長崎12本だったことからもわかるように、高い位置までボールを持っていけても、シュートが打てなかったということがわかります。
 アタッキングサードからの工夫、連携を感じませんでした。
 例えばサイドでボールを持っても、ともかく選手たちがゴール前に向かって一直線に動くばかりで、サポートが少なかったり。
 シンプルにクロスを上げる展開ばかりで、それ以外の狙いが感じられませんでした。


 こうなってくると、やはり2トップしかないのか。
 けれども2トップでは、ますます相手後方への守備が空いてしまうし…というジレンマは変わらずといった印象です。
 天皇杯でメンバーも大きく変えても、攻守にリーグ戦と同じ問題がでてしまう…。
 ようするに戦術的なチームとしての問題が大きいということになりますから、それをどれだけ埋めていけるのかといったところが課題ですね。


 柏戦ではオナイウの健闘が目立ちましたが、今回は結局主力組の活躍もあっての勝利ということで、目新しい収穫は感じませんでした。
 町田、井出あたりのコンディションの良さは、引き続き感じましたが。
 ただ、勝利した上で課題が見つかったということで、それを修正できれば次につながるかもしれない。
 そこを今後に期待したいところでしょうか。