ジェフから見るJ1経験チームの再昇格の難しさ

「今のウチは平均年齢が30歳近くて、選手たちの意識を変えようとしてもなかなかうまくいかない。攻撃にしてもサイドバックが追い越して分厚い攻めを仕掛けたりと工夫が必要なのだが、そういうダイナミックさにも欠けている。若い選手で底上げを図りたいが、現在のチーム事情を考えるとうまくいかない」と石崎監督も考えあぐねている様子だった。
(中略)
京都や千葉など何年もJ2にとどまっているチームに共通する事なのかもしれない。上に上がった事のない松本山雅は彼らとは違って、兎に角がむしゃらでアグレッシブだ。個の力が多少なりとも劣っていても、チームの一体感や方向性がハッキリし、選手皆が前向きに発言しあう環境を作れれば、上を目指せる。(J SPORTS

 「モンテディオ山形に見る、J1経験チームの再昇格の難しさ」というタイトルの記事です。
 言っていることは一般的な内容だと思いますけど、改めてということで。



 J1から降格してきたチームは、経済的な観点などもあって早期にJ1復帰を目指すケースが大半だと思います。
 そのため、現時点で能力が高いベテラン重視の選手構成になるケースが少なくない。
 しかし、降格するようなクラブは予算面も限られており、J2クラブという立場もあって良いベテランが獲得できず、ベテランを補強しても中途半端な戦力になってしまう場合が数多く存在する印象です。


 そして、一度ベテラン重視の選手構成になってからは、若手中心に移るのは言うほど簡単ではない。
 現時点での能力で言えばベテランの方が上である場合が多く、若手を半ば強引に起用して伸び代を期待するといっても、それをベテランを含めて周囲が納得できるかどうかという問題も出てくる。
 そもそも本当に有望な若手選手なら、すでに試合に出ているか他のJ1チームなどに移籍しているだろうし、どうしてもベテラン選手に予算をかける分、有望な若手選手も少なくなる。
 そして、ベテラン選手が退団すると、その穴を埋めるべくまた新たなベテラン選手を獲得する。
 有望な若手がおらず、育てられてもいないのだから、新たなベテラン選手に穴埋めを頼らざるを得ない状況に陥ってしまう…と。
 


 これはジェフのケースと言うことになりますが、細部は違うにしても降格して低迷するクラブによく見られるパターンではないかと私は思います。
 ジェフもそういったパターンに陥っている…というか、その筆頭と言えるのではないでしょうか。


 先ほどの記事には育成面の問題だけでなく、ベテラン重視だと「ダイナミックさ」、「アグレッシブさ」というものが欠けてしまうという面も欠かれています。
 確かにジェフもそういった部分が足りない印象があります。
 単純にスタミナだとか、スピード、運動量の部分が足らず、苦しんでいる印象もあります。
 ベテラン選手は様々な経験からリスクを知ってしまい、ミスを怖がり、思い切りの良さが欠けてしまうことによって、チーム全体において勢いを保てない部分もあるのかもしれません。



 もちろん、だからといてベテラン選手が全く必要ないと言うつもりはありません。
 J1で結果を出していたころのジェフは、年齢のピラミッド化を実施していた頃がありました。
 若手を多く採用し、ベテランを少なくして、年齢における選手構成をピラミッドのようにしていくと。


 予算が少なかったのでそうせざるを得なかったところもあるのかもしれませんが、それによってベテラン選手がポジションに蓋をするようなことを意図的に避け、若手選手が奮起せざるを得ない環境を作ったと言うことだと思います。
 勢いだけではチームにはならないし、何人かのベテラン選手が若手選手の模範となり、チームを引き締める役割も担うと。
 そして、若手選手に関しては、期待通りに成長するかどうかはわからないので、若手選手を多く獲得する…。
 1つの理想形ではなかったかと思います(最も現在は高卒が出場機会を重視し大学に進学するケースも増えてきましたが。それを補うためジェフリザがあり、高卒を育てられるだけの優秀な監督を招聘できていた…とクラブ運営に一貫性があったわけです)。



 しかし、ジェフはいわゆる「奇跡の残留」が起こった2008年に、一気に多くの若手を放出してしまいました。
 確かにその前の07-08オフには、アマル監督の退団に合わせて主力選手が流出。
 若手主体で戦わざるを得なかった08年開幕時は、全く結果の出ない状況となりました。


 その夏に複数のベテラン選手を緊急補強して、何とか残留にこぎつけたという経緯があります。
 けれども、そのベテラン選手補強による成功で味を占めてしまったジェフは、その後もベテラン補強に移行。
 しかし、短期的にはベテランの緊急補強で何とかなりましたが、中長期的にはやはり限界があり翌年に降格。
 それ以降も中長期的なビジョンは描けず、長いトンネルに潜り込んでしまいます。
 加えて、ベテラン選手補強には多額の資金がかかり、当時は経営面でも傾いてしまいました。


 個人的には、ジェフというクラブはそこから負のスパイラルに陥り、今に至るまで長らく変わることが出来ていない印象です。
 あれ以降ジェフは短期結果ばかりを見た運営をしており、ベテランが退団した穴をベテランで埋め、若手を育てきれないといった状況に陥っています。



 それだけに斉藤TDが「ベテランは獲得しない」と話したことは、ジェフにとって大きな変革になる可能性があると期待していたわけです。
 もちろん世代交代というものは、ベテラン選手との契約問題や若手の補強なども必要になりますから、すぐにうまくいくものでもないでしょう。
 単純にベテラン選手を放出し、能力に関わらず若手選手をかき集めれば良いというわけでもないはずで、徐々に移行していかなければいけないものだと思います。
 ですから、GMやTDという役職は、監督以上に長期的に見ていかなければいけないと思っています。


 鈴木監督への批判が集中し、関塚監督が就任してもチームが上手くいかないと、今度は斎藤TDへの批判が少しずつ増えているという印象も受けます。
 けれども、個人的には斉藤TDに期待する一番のテーマは、世代交代が成功するかどうかだと思っていますし、そのためにはこのオフが重要ではないかと思っています。
 もちろん関塚監督が結果を残せるかどうかといった部分も重要ではあるのですが、斉藤TD自身が解任を決めたわけでもないようですし、そのあたりの責任を斉藤TDだけに押し付けるのもいかがなものかと思います。


 もちろん監督にせよTDにせよ、総合的に判断することが重要だとは思いますが、何を求めて、どこを評価するのか。
 そして、どういったビジョンをクラブに期待するのか。
 クラブを応援する側も、しっかりとした評価基準で見ていかなければいけないのではではないでしょうか。
 うまくいっていない、ではいったい誰が悪いのか…という話だけでは、なかなかクラブは前に進まないように思います。