水戸の決定力不足に助けられ5試合ぶりの勝利

 なんとかかんとか勝てた試合でした。
 関塚監督就任後のジェフの勝ちパターンではあるんですよね。
 これまで就任してから栃木戦、山形戦の2試合に勝利していたわけですが、どちらも前半早々にセットプレーからゴールを決めて逃げ切り。
 栃木戦では井出が、山形戦ではキムが、前半の早いうちにCKから得点を決めています。


 今回はPKからではありましたが、先にゴールを決めてそのまま勝利と。
 ただ、得点後の守備は決して良い出来とは言い難く、カウンターからのチャンスも作れませんでした。
 相手がチャンスを決めきれず助かった、という印象の試合だったと思います。
 水戸もジェフ戦までの2試合(天皇杯含むと3試合)ゴールなしだったようで、それも納得の印象でした。
■ジェフが森本のPKで先制
 BLOGOLAでは町田スタメンの可能性も報じられていたジェフ。
 その記事いわく、ケンペスは岡山戦における鼻の負傷の影響が出ているようです。
 また、得点面の改善も期待して、練習から他の組み合せを試していたとのこと。


 実際に関塚監督が水戸戦の先発に選んだのは、森本とオナイウの2トップということになりました。
 前節のスタメンと比較すると、ケンペスはベンチにも入っておらず、幸野がベンチに。
 町田はベンチスタートで、竹内がベンチに復帰しました。



 前半7分に早くも試合が動きます。
 左SB中村の横パスを谷澤が受けると、ワンタッチで前に走りこんでいった森本にパス。
 シュートフォームに入った森本が粘り切れずに倒れたかとも思ったのですが、相手DFの足がかかっていたという判定でPK。
 これを森本がしっかりと決めて、ジェフが先制します。


 その直後に水戸の攻撃。
 中盤右寄りでつないで、浮き球のボールを逆サイド前方につなぐと、中央にグランダーのパス。
 中央の西岡に合って決定的な場面ではありましたが、シュートを放ちきれずジェフは事なきを得ます。
 相手が逆サイドから攻めてきていた時に、大岩が絞り過ぎていてPA内で大外の田中をフリーにしていました。
 そこから斜め前方に鋭いパスを出されるという岡山戦でも見られたような場面で、ヒヤッとしましたね。



 試合開始当初、水戸は5バック気味に、ジェフの攻撃を待ち構える展開でした。
 しかし、失点後の水戸は前に出ていく姿勢を見せ、引いて守る時間が短くなっていきました。
 攻撃時にはカウンターだけでなく、しっかりとつなぐ形も見せており、水戸が流れをつかんでいきます。


 前半12分には智のパスミスからジェフの右サイドを崩され、クロスを上げられるも中央であわず。
 前半19分にはジェフの攻撃。
 兵働から前方へ浮き球のパス。
 森本が飛び込んでヘディングで合わせますが決まらない。
 ジェフの攻撃は、やはり中盤から前線への浮き球のパスが中心ですね。
 その直後には水戸の攻撃が続き、吉田、小澤とミドルシュートを放ちますが枠外となります。



 ジェフのチャンスもあったものの流れは水戸ペースで、時間が進むにつれてその傾向が色濃くなっていきました。
 水戸はパスワークでサイドを広く使いながら、ボランチ内田の前を空けてそこからチャンスメイク。
 加えて空中戦に強い三島を使って、2列目が拾うパターンもある。
 そして、攻守の切り替えが非常に速くジェフがボールを奪って前にボールを出しても、水戸が出足で勝ってボールを刈っていく…。


 水戸の方がボール回しにも守備にも意図があって、良いサッカーが出来ていたと思います。
 コンディション問題もそこまで感じず、動きも悪くなかった。
 特に前半20分あたりからは、水戸がボールを持つ時間帯が長くなり、ジェフの防戦一方となっていきます。



 しかし、水戸はシュートが、全く決まらない。
 その後も水戸が攻撃する形は長く、シュートシーンは多かったですけど、全く決まる雰囲気が感じられませんでした。
 前半のスタッツで、シュート数は水戸7本、ジェフ3本。
 ジェフのそのうち1本はPKによるものですから、いくらジェフが早々に先制し無理をしなくていい状況になったとはいっても、攻め込まれすぎている。
 数字上でも大きな差として表れてしまいました。
■水戸が攻め続けるも1-0のまま終了
 後半開始直後は、ジェフも前への姿勢を見せていきます。
 2トップやSHが、積極的に相手DFラインにプレスをかけていきます。
 しかし、2トップのプレッシングは中途半端で、簡単に掻い潜られて中盤に繋がれると、流れは再び水戸へ。


 後半8分。
 水戸がボランチから細かくパスをつないで行って広瀬から中の吉田に繋ぐと、吉田が中央で智を交わしてゴール前を縦に侵入。
 ラストパスをゴール前に送って中央で合わせきれなかったものの、完全に崩されたシーンでした。

 

 後半16分はジェフが後方で兵働がパスを出すも、谷澤が気づかず相手にボールを奪われます。
 これを相手に奪われ、そのまま縦にサイドを侵入されてセンタリングを出されるも中央であわず。
 後半17分には水戸が左サイドからシンプルにセンタリングを上げ、三島がヘディングで競り勝つもGK岡本がしっかりセーブ。
 

 後半18分、ジェフは森本に変えて山中を投入。
 オナイウを1トップにした3ボランチにしてきました。
 ただし、兵働をインサイドに置き、健太郎をアンカーに起用。
 アンカーが兵働ではなく健太郎と言うことを考えても、守備を意識した3ボランチということになるのでしょうね。



 しかし、状況は大きく変わらず。
 後半25分には水戸の攻撃、左からのクロスに途中交代の馬場がヘディングで合わせてゴールを狙うも岡本が反応。
 その直後にも、吉田が中央で左にはたいて、田中がフリーでミドルシュート
 また1分後にもジェフが後方でボールを奪われ田中がシュートを放ち、GK岡本がセーブ。
 その直後にも左サイドからのクロスを三島が落とすも、水戸の選手がつまずきシュートならず…と、左サイドと水戸が再三再四ゴールに迫るも、あと一歩のところで決まりません。
 さすがにここまで来ると、本当に重症だな…と他チームながらに思ってしまいました。


 その後も水戸が攻め込むものの、徐々に勢いを失っていった印象です。
 オズマール鈴木隆行と攻撃のカードを切り、フォーメーションも4バックにして攻めの姿勢を見せた水戸。
 しかし、逆に前線の連携が薄れて一発は期待できる選手が入ったものの、確実なチャンスは減っていった印象でした。



 逆にジェフは、後半29分に兵働に変えて町田。
 そして、後半45分には谷澤に変えて竹内を投入。
 守備的なカードを切っていきます。


 後半ロスタイムに入ってからも水戸の攻撃。
 吉田が中央で反転して、強烈なミドルシュートを放つも岡本が弾いてCKへ。
 CKからのシュートもゴールマウスの脇を逸れて、水戸からすれば残念な無得点での試合終了となります。
■相手を捕まえきれなかった原因
 ジェフが先にゴールを奪って、そのまま1-0で勝利。
 「粘り勝った」というのなら聞こえはいいですが、実際にはジェフの守備も決してよろしくなく、相手のラストプレーの質に大いに助けられた試合でした。
 ジェフとしては、内容の悪い試合だったと思います。


 2トップで臨んだジェフですが、その結果中央の守備が曖昧になってしまいました。
 これまでもそうでしたが、2トップだと相手ボランチへのマークがはっきりしない。
 そこを埋めようとボランチが前に出ていこうとすると、今度はバイタルエリアが空いてしまう。


 しかも、水戸は攻撃時3トップ気味の状態から、1人が中盤エリアに下がってくる。
 これによってジェフボランチ付近に数的不利が生まれて、そこへ縦パスをつながれてしまう。
 ジェフの2トップ時の守備の問題と、相手の組み立てのうまさの両方で、相手の攻撃・パスワークを捕まえきれなかった印象です。



 DFラインにおいても相手が3トップ気味なので、SBが絞るため大外が空きがちになる。
 そこへの約束事がハッキリできていないため、特に右サイドにおいて相手にスペースを与え、相手の左ウイングバックである田中をフリーにさせることが非常に多かった。
 これもここまでの試合でも見られた光景で、相手が3トップ時に4バックが絞るとして、そこからサイドを守る約束事が見えてこない…。 
 テレビ放送中の監督の指示などではSHに下がり過ぎるなと行っていたこともありましたが、ではその後ろのスペースを誰が埋めるのか。


 結局、サイドにしても中央にしても、人に付くマンマークディフェンスの基礎的な部分しかできていない。
 だから、この試合の途中からもそうだったように、3ボランチにしてインサイドハーフを相手ボランチに付けて、アンカーにバイタルエリアを守らせるしかない。
 そして、サイドを埋めるために行った最終形が、柏戦での6バック…ということになるわけですね。



 例えばとして、逆サイドを埋めるために、DFラインが素早くスライドする。
 そのためにも、前方や中盤の選手がうまくポジションを取って、相手のパスコースを消す。
 あるいは、前方中央でマークをぼかしながら追いかけて、相手ボールをサイドに追いやる。
 または、コンパクトに守ることで、1つのエリアに人数をかけられてもスペースを潰して、自由にさせない。
 そういった組織立った守備というものが今のジェフには見られず、ともかく人につくことしか出来ていないが現状だと思います。


 その上で、マンマークということになると、どうしても2トップでは守備に無理が出てくるでしょう。
 もしかしたら今回は相手が4バックという予測もあって2トップだったのかもしれませんが、マンマークディフェンスしかできないのであれば、相手のフォーメーションに合せてこちらも臨機応変にフォーメーションを変えなければいけない。
 そのためには、ジェフのFW陣(ケンペス、森本、オナイウが候補)による2トップでは、あまりにも柔軟性がなさすぎる。



 しかし、前に強い2トップでなければ、攻撃の形が作れないというのが、現状というところなのかもしれません。
 今の攻撃はサイド攻撃も機能しなくなり、中盤からポンッと浮き球のパスを上げるパターンが中心。
 それを成立させるためには、ゴール前で競り勝てるFWがいないといけない。
 練習において1トップで町田の起用も試したけれどスタメンではなかったということは、そういった結論に納まったということではないでしょうか。


 この日はケンペスが怪我ということですが、実際にはここ数試合勢いのなかったケンペスを休ませた部分もあるのかもしれません。
 ただ、森本では得点力に欠けるし、いきなりアドの1トップでは不安が残る。
 実際、水戸は森本とケンペスに足元にボールが入った瞬間に奪取を狙っていた印象で、そこで潰されていた場面も少なくありませんでしたし、2人とも総合的には良い出来とは言い切れない内容だったと思います。
 サポートの問題もあったとはいえ2トップだったわけですし、もう少し2人が足元で粘れれば戦いやすい部分はあったと思います。



 この試合の最終的なシュート数は、水戸が22本、ジェフが7本。
 実に3倍近くのシュートを放たれたことになります。
 カウンターも含めた攻撃の形が作れなかったことも問題ですが、堅守速攻を目指すのであればともかく守備をより強固にしていかなければいけないと思います。
 「相手にボールを持たせた」、「あえて外からシュートを打たせた」といった出来ではなく、相手に確実に崩されて水戸の決定力に助けられたシーンが目立った試合でした。
 この試合だけならまだいいですが、岡山戦でも1ボランチ脇やカウンター時の対応などに課題が出ましたし、攻撃だけでなく守備組織の改善も求められてくるのではないでしょうか。