関塚監督が就任してから約1カ月

 関塚監督が就任してから約1カ月経過しました。
 大枠のサッカーに関しては予想通りとなっていますが、細部に関していろいろと見えてきましたね。
 ビルドアップにおいては、兵働から中距離のパスを展開する形が中心。
 特にカウンター状態において素早く兵働が相手のDFライン裏を狙うFWへ蹴りこむボールが多く、そのまま持ち込んでゴールを狙う攻撃が関塚監督の意図として一番はっきり出ている部分だと思います。


 遅攻においては、左サイドから中村がシンプルに外からクロスを上げる展開が多い。
 細かくパスをつないで崩す展開はなくなり、特にくさびのパスからの展開というのがほとんど見られなくなって、中央からの崩しというのは個人技以外では狙っていないように思えます。
 アタッキングサードにおいて中心となっているのが谷澤で、自身がドリブルで持ち込んでチャンスメイク、あるいはシュートという形で効いており、特にロングカウンターにおいて重要な選手となっています。
 谷澤はキープ力がある分、囲まれても打開できる可能性を感じますし、ビルドアップの兵働とともに攻撃の谷澤が欠かせない存在になりつつある印象です。



 個人能力に頼る傾向がある印象は捨てきれませんが、FWの活かし方に関してはさすがといった印象も受けます。
 特にケンペスを前に向かせる形が、作れているように思います。
 2トップの時は森本の方が前で粘ってボールを持てるので、自然と前の森本と後方のケンペスといった関係になっていたのかと思っていました。


 しかし、ケンペスの1トップだった湘南戦でも、ケンペスは下がり気味の位置から前を向いて、他の選手の方がより前方でプレーしている場面が見られた。
 単純に以前ほどパスワークを重視していないから、2列目の選手が中盤でプレーするのではなく前に出ていくことによって、そういった関係性になるという部分もあるのかもしれません。
 また、パスワークからの崩しを重視していないために、ケンペスが前でポストプレーをさせることがなく、前で張る必要性がなくなったことも非常に大きい変化だと思います。
 けれども、ケンペスの前に出ていく力を活かすために、あえて前でCF的な役割をやらせていないのかなと感じる部分もあります。


 また、チーム全体の攻撃においてはシンプルにゴール前に蹴りこむからこそ、相手のミスを誘発するなどしてチャンスの可能性を感じやすくなるという部分もあるのでしょう。
 理想を言えば"崩し"と"速攻"と両方できれば理想的なのでしょうけど、意外にもそう簡単にはいかないというのがサッカーの難しいところですね。
 もっとも攻撃全体においては、斉藤TDの指揮した大分戦、関塚監督初戦の長野戦は相手の守備問題も大きく両試合4ゴールと結果を残せましたが、その後はセットプレー中心の得点シーンが中心となっていますから、それ以外の得点パターンが今後の課題となってくる可能性もあるかもしれません。
 とはいえ、監督が変わって結果が出ていることもあって、選手たちも現時点では伸び伸びとやれてる印象があります。
 昔、西部謙司氏と木村元彦氏だったかが、雑誌で対談していて「オシム監督のハードトレーニングになぜ選手たちはついてきたのか?」という話になり、「結果が出たからでしょう」という結論になって実も蓋もない話だなぁ…と思ったのですが、実際そこも大事なのでしょう。



 リトリート時の守備においても、無理にFWには追いかけさせず休ませる傾向にある印象です。
 例えば相手が4バックの場合、FWは相手ボランチ付近のスペースを消すポジショニングをして、ボールを奪いに行くのではなくパスコースを消す方向で守る。
 そして、相手SBにボールが出た瞬間に、SHが前に出ていってプレスをかける。
 相手CBから長いボールに対しては後方で跳ね返そうということなのでしょうし、SHの負担は大きくなるかもしれないけれども、ジェフの2トップはハードワークするタイプでもないので、攻撃面に体力を温存させようということなのではないでしょうか。
 当初はFWに対して守備面の話もしていましたが、実際には状況を考えてFWをサボらせている印象があります。


 全体的な守備に関しても、無理な追い方はせずバランスを意識している印象です。
 特にリードした時の守備は、押し込まれてもゴール前で跳ね返せばいいという現実的な守り方をしています。
 押し込まれて跳ね返す状況だと、どうしても守備陣が相手に競り勝つことが求められるわけですけど、フィジカルの強いキムと経験豊富な山口智に加えて、大岩も絞ることで対応するということなのでしょう。
 まぁ、もともと関塚監督はこういった守り方をする監督ですので、それ以外のやり方はないのでしょうが。
 目下の課題は押し込まれた後に、セカンドボールを拾って自分たちの流れに戻せるかどうか…といったところでしょうか。



 全体的に見ると、関塚監督のサッカーは攻守に個の能力を活かすサッカーといった印象です。
 もちろん「個」か「組織」かどちらが優れているかに正解はないはずですし、それはパスサッカーとカウンターサッカーにもいえること。
 また、1か0かという簡単な話でもないと思います。


 個人的には個を活かしたサッカーと言うのは、これまでJ2においてからのジェフが長らくやってきたけれど結果がでなかったわけで(木山監督なども今も同じ方向性だったと思います)、より組織的なサッカーを期待していたところがあります。
 特定の個人能力に頼るとどうしてもその選手のコンディションが低下したり、出場停止や怪我で出られなかったり、徹底マークにあうときつくなる部分がありますし、個人能力でJ1に上がったとしても戦えるだけの選手がどれだけいるのかという問題もあります。
 それだけに時間がかかってもこつこつと組織的な崩しを作っていくことを期待していたわけですが、クラブとしてはその方向性では成功できないと見たのか、あるいは方向性など考慮せずに鈴木監督では難しいと判断したということでしょうか。



 しかし、個人的には予想外だったのは、こういったサッカーになったことによって、取りこぼしが減るメリットがあるのかな?と感じるところ。
 鈴木監督の頃は良くも悪くも、相手以上に自分たちのサッカーが成立するかどうかが大事になってくる試合が多かった。
 逆に関塚監督になってからは、局面で相手を上回れるかどうかですから、相手の状態が悪ければそこで簡単に上回れることが多い。
 一言で言えばアクションサッカーとリアクションサッカーの違いと言うことになるわけですが、両ゴール前においての個人技で相手に勝てれば点を取れるし守りきれる…と。


 取りこぼし…要するに、単純な選手層などだけでなく、コンディションなども含めて、相手選手をジェフの選手が動きで上回れる状況の試合。
 考えてみれば木山監督の頃も、そういった傾向は強かった記憶があります。
 関塚監督が就任してからの試合だと長崎戦以外はコンディションで上回れていた印象なので、今後もコンディション調整というのがすごく大事になってくるのではないかと思います。
 あるいはコンディションが下がってきたり相手が動けている状況でも、結果が出せるかどうかが真価の問われる部分なのかもしれません。
 特にジェフは毎年この時期はいいのですけど、9月に入って第30節あたりから選手たちが動けなくなり、成績がガクッと落ち込む傾向にありますから、そこをどう乗り切るのかが今後のポイントになるのかもしれません。



 さて、今週末ジェフは横浜FCと対戦。
 横浜FCは現在4連勝中で現在13位に浮上と、ようやく調子を上げてきました。
 それまでの試合は6戦勝ちなしで、天皇杯では富山戦に敗れるなど、波に乗れていない状況が続いていました。
 しかし、前節その富山に0-2で勝利し、リベンジを果たしています。


 サッカーは至ってシンプルなイメージで、4×4でポジショニングを重視するディフェンス。
 そこからボールを奪って、攻撃ではポストプレーを攻撃のスイッチとしてサイドに展開する流れが、ベースになっているのかなと思います。
 サッカー自体は大きく変わっていないのではないかと思うのですが、山口監督も「ハードワークできるようになってきた」と話しているので、横浜FCもコンディションの向上が結果に結びついているのかもしれません。
 横浜FCもベテランが多い印象なのですが、この時期は意外とベテランが強いのでしょうか。



 両チームともにコンディションが良い状況なのであれば、それぞれこの勢いが本物なのか見えてくるかもしれませんし、レベルの高い試合を期待したいところです。
 湘南戦は正直試合内容という意味では期待していましたがそこまでではなかっただけに、引き締まったいい試合を見たいところですね。
 台風の行方がちょっと気になるところですが。