ジェフ経営情報'14後編 「強化費」が初めて9億円台に

 前回に続いて支出の部から。

 項目が変わったので一部空白となっております。
 9年単位でみると、ここ数年の予算減少が目立ちます。

 『営業費用』全体で言えば、過去3年は横ばいと言ったところでしょうか。
 12年度と13年度を見比べても、1500万円の減少にとどまっています。


 しかし、「チーム人件費」…ようするに、「強化費」は一昨年と昨年を見比べると5000万円減少しています。
 移籍金を抜きで考えれば、それなりの外国人選手1人を雇える額ということになるのではないでしょうか。
 過去9年を見返しても初年度は公表されませんでしたが、発表された「強化費」で10億円を切ったのは昨年が初。
 経営規模の縮小化が、大きく表れている部分です。



 その分、何の費用が増加したのかを見ると、まず「アカデミー運営経費」が5300万円から7300万円に増加。
 これに関してはクラブとしてアカデミーに力を入れていくという話をしているわけですし、Jリーグ全体でも決して多い方ではなかったわけですから、必要な投資と言えるのではないでしょうか。
 ちなみに、13年度の「アカデミー運営費」はJ1が平均1億1300万円、J2が平均4600万円。
 C大阪はハナサカクラブが独立しており0円扱いですし、J2は地方都市のクラブが多いことを考えると、少なくとも近年のジェフはアカデミーへの予算投資が積極的ではなかったとも言えるわけで、ここ数年のアカデミー低迷も不思議ではないように思えます。
 もちろんお金をかければいいだけではなく、それをいかにうまく使うかが重要ですが。


 また、「トップチーム運営経費」も11年度に2億1000万円、12年度に2億3000万円、13年度に2億6200万円と年々大きく増加しています。
 具体的な内容は分かりませんが、「トップチーム運営経費」とは試合関連にかかる費用などですから、イベントやそれにかかる人件費(タレント起用など含め)などを増やした分、コストが増えている可能性もあるのかもしれません。
 ただ、その分観客動員に貢献して「入場者料収入」等との収支でマイナスでなければ成功、あるいは相殺しているとも言えますし、このデータだけでは評価できない部分があります。


 なお、「トップチーム運営経費」のJ2平均は1億4千万円でジェフはその倍近くに当たりますが、ここには「スタジアム使用料」など「固定費」も含まれているわけですからどうしても額が大きくなる部分があります。
 これが首都圏や大きな都市にあるクラブの難しいところで、東京V等も苦労しているようです。
 ジェフはお金があるのに…という話もありますが、首都圏チームといこともあってその分費用がかかるという面も忘れてはいけないところだと思います。 



 話は戻りますが、他のクラブの昨年度「チーム人件費」を見ていくと、神戸が予想以上に頑張っていました。
 この結果、G大阪が14億8600万円、神戸が11憶6000万円となり、ジェフはそれに次ぐ9億9400万円となります。
 J2降格初年度の方が選手補強にも優位に働くだろうことも含めて考えると、昨年の上位2チームは妥当だったように思います。


 もちろんジェフは3位に付けたかったという気持ちはありますが、どちらにせよ現在は3位〜6位ならプレーオフ出場には変わらないですからね…。
 予算面で指摘するのであれば、やはり前年の12年でしょう。
 昇格した甲府にしろ(4億7600万円)、湘南にしろ(3億6600万円)、大分にしろ(2億9800万円)、「強化費」はジェフの半分以下。
 その他のクラブを見てもジェフが大きく上回っており、予算面だけで言えば大きなチャンスがあった年ということになります。


 クラブとしてもチャンスがあると思ったからこそ、積極的な補強をした年だったのではないかと思わなくもないですし、親会社も頑張ったところがあるかもしれない(追加補強に合わ新規スポンサーを付けたこともあったはずです)。
 それでもダメだったから、昨年からは親会社の気持ちも折れて「広告料収入」も減少したのかな…とも思わなくもありません。



 こうやって見ると、経営的に酷かったのは09年、10年。
 移籍金は分割払いが主流という話もありますから、実際に酷かったのはJ2降格直前の数年なのかもしれませんが、実際10年も補強はしっかり行っていましたしその影響もあったのではないかと。
 降格1年目も投資額を考えればチャンスはあったと思うのですけど監督選択なども含めて詰めが甘かった印象で、チャンスのあった年をモノに出来ていないことが後々に大きく響いている印象です。
 『収益』の面ではなんとか11年から巻き返しますが、それ以降はクラブライセンスもあって無理はできない状況になっています。
 神戸は三木谷会長が債権を放棄する報道が出ていましたので、昨年無理をしても帳消しにできるという面が大きかったのでしょうし、クラブからすればむしろ使い時とすら言えたのかもしれません。



 こちらは新しい項目が出た3年のみチェック。
 意外なところでは、『固定資産』が増加しています。
 ユナパを持っているジェフですが、減価償却に伴い価値は下がっていきます。
 その分『固定資産』は減少するはずですが、昨年は減価償却分があるにもかかわらず7000万円ほど増えている。
 その分なのか『流動資産』は減っているので、最終的には大きく変わっていませんが、何かを購入したということなのでしょうか。



 経営情報をまとめると、J1降格前後のジェフは経営的に酷い状況で一時期は債務超過の可能性すら不安視されましたが、経営面の安定化に成功し難を逃れたといえるでしょう。
 ただし、経営は"安定化"したものの、J2降格の影響で利益も予算も右肩下がりに落ち込んでいる。
 よって、"経営改善"とまでは言いにくいのが現状だと思います。


 一言で言えば、『ジリ貧』状態なのかもしれません。
 そんな中で、クラブとしてどのような経営方針、運営方針を持って進めていくのか。
 毎年のように監督を交代しているジェフのようなクラブがある一方で、湘南のように1つの方向性を貫いて低予算でも成功しているクラブもあります。
 そういったクラブは1年の予算は少ないけれども後に残る部分が大きいから、1年間の予算が無駄にならず、ある種の投資として積み重ねていくことが出来ているはずです。
 具体的なサッカーやスタイルなどはともかくとしても、チームの運営方法やクラブのビジョンという意味で、そういったクラブから勉強すべきところは多いように感じます。