兵働不在に不安を感じるも湘南相手に引き分け
ここまで22勝1敗1分の湘南相手ということで、締まった質の高い試合を期待したのですが、思いの外湘南の出来が悪かった印象でした。
運動量豊富なプレーが影をひそめ、今までなら決まっていたようなシュートやラストパスも大きく外していました。
これが連戦の最終戦だからなのか、それとも夏の影響からなのか。
どちらにしても、これで湘南は2戦連続で引き分けとなったわけですから、これまでの成績から見ればこれは確実な変化。
偶然と言うことではないのでしょう。
2位と湘南とは勝点16差あるわけですからここからひっくり返るのは難しいのかもしれませんけど、これまでの湘南戦は相手チームにとってある種の捨て試合とも言えたのだと思いますが、ここからはより対等に見ていく必要があるのかもしれません。
湘南の出来が悪くなってくれば、他チームにも勝点を勝ち取るチャンスが増えるわけで。
この日の試合も湘南相手だから勝点1で良かったとも思えますが、そうでなければ勝ちきりたかったと感じるくらいのものだったと思います。
■明らかに勢いのない湘南
ジェフは出場停止明けのケンペスがスタメンに復帰。
森本を外して1トップにし、2列目に右から山中、井出、谷澤といった布陣。
1トップにすることで主に守備面において、中盤を厚くしようといった意図ではないかと思います。
加えて、山中を右サイドに起用して、井出を中央にすることで、サイドの守備面も強化しようという狙いだったのかなと。
井出はサイドで守備に回ると、どうしてもフィジカル面の課題があって、押し込まれる傾向がある。
そこでフィジカルのある山中を、サイドで起用したのかなと思います。
ジェフは井出なども含めて中盤を厚くして、湘南が出してくる縦パスが前に入った瞬間にDFとMFが囲って潰す守備。
それでも湘南は縦に小さく前に出してサポートしてまた出して…という形を素早く作り出していき、徐々に湘南が試合の流れをつかんでいきます。
湘南対策を引くジェフに対し、湘南が真正面から意図のある攻撃を仕掛け続けていった印象です。
前半20分には湘南の攻撃。
左サイド後方から中盤中央の選手にパス。
中盤でボールを持って前を向かれると、素早く前方の選手が下がってきてポストプレー。
1タッチで横にいた菊池に叩くと、菊池はジェフのボランチの裏を取ってフリーになって、そのままミドルシュート。
流れるようなパスワークでしたが、菊池が打つ際に楔のパスを出していた、中盤の選手も前に走りこんでいた。
このうごきによって、ジェフの守備陣が混乱した部分があったと思います。
このようにボールを受ける動作と、ポストプレーと、前への動き出しが印象的だった湘南。
しかし、思い切った動き出しはあまり多くなく、ポストプレーやシュートのミスも非常に多かった。
ポストプレーヤーにボールが入る回数は非常に多く、そこで納まれば危ない…というシーンは何度も作られていましたが、そこのトラップがぴたっとはまらず、攻撃の質が上がってきませんでした。
前半も残り10分といったところからは、ジェフがボールを持つ展開に。
この日の湘南は動きが動けなかったとはっきりとわかるのが、守備時の対応でした。
前方においては、ジェフが後方でボールを持ってもプレスをかけにこない。
後方では両サイドのウイングバックが早いタイミングで引いてしまって、簡単に5バック気味になってしまう。
特にボランチの位置では、思いの外フリーでボールを持てていました。
湘南は攻撃にうつっても攻守の切り替えが遅く、スプリントの本数が良い時よりも確実に少ない。
動けないことを見越して、リスクを回避するような守備やパスでの崩しを狙っているのかもしれませんが、それにしても以前のような強烈な勢いは感じませんでした。
それでも前半までは湘南がシュート7本、ジェフが3本で、ジェフはボールを持っても中を崩せない展開が続いていました。
■先制されるも井出のゴールで同点
後半に入っても大きく状況は変わらないものの、1点が欲しい湘南は攻撃時に参加する人数が若干増えた印象でした。
加えて、湘南はジェフの右サイドを狙う展開が増えていった印象です。
ジェフは大岩が絞って中村を前に押し出し、3バックのような状況になっている場面も見られました。
かなり左サイドから攻撃を作ろうという意図が強かったのではないかと思います。
ただ、湘南は守備に関してはあまり変わらず。
さすがに前半よりはプレスにいこうという意思を感じはしましたが、それでも体が動けていないような印象でした。
後半9分には、湘南からみて右サイドからの攻撃。
クロスからウェリントンがDFラインの前で持って、ターンをしてシュート。
湘南が流れをつかんでいきます。
ジェフは山中に変えて勇人を投入し、井出を右サイドにおいてトリプルボランチ気味に。
前半から井出は守備時にボランチ付近に吸収されるような状況でした。
湘南は縦への楔のパスから攻撃の形を作ることが多かったので、サイドよりも中央の守備を重視したのかもしれません。
逆に言うとこの日の湘南は、いつものようなサイド攻撃に思い切りの良さを感じる場面がほとんどありませんでした。
しかし、後半11分には湘南の左サイドからの攻撃。
左サイドでパスをつないぐと、ジェフの中盤は大きくサイドに釣られてしまいます。
ジェフはボランチ付近には誰もないような状態になってしまい、相手の中盤の選手になった上に、パスコースがフリーに。
湘南はそのパスコースを使って、サイドから斜めへFWへ楔のパス。
ジェフはボランチがおらずスクリーンプレーが出来ない状況でしたから、CBがポスト役に付いていかざるを得なくなり、DFラインが凸凹になります。
その瞬間に菊地がサイドから中に入って行って、落としを受けフリーに。
シュートは岡本が何とかとめますが、湘南の連動性のある崩しでした。
そして、後半17分。
湘南右サイドからの攻撃。
一度は山口智が跳ね返しますが、サイドでボールを拾われると、智の前を取られて途中出場の岡田がゴール。
この間、湘南は5人もの選手がゴール前に居ました。
動けていなくても、前へ人数にかける姿勢というものを、チームとして共有できているんでしょう。
その直後にも右サイドの井出が裏を取られ、中盤中央の高い位置へパスを出されると菊池がフリーに。
そのまま菊地はミドルシュートを放ちますが、ポスト直撃でジェフは失点を免れます。
ジェフは後半22分に、井出が右サイドからカットインしてシュート。
これは良い仕掛けだったと思います。
しかし、チームとしてはそれまでの流れでボールを持ち続けてたのですが、パス回しの意図が見えませんでした。
時間にして1分以上、DFラインとサイドでボールを回し続けていたわけですが、ただ回しているだけでサイドで人数をかけたり、ポスト役の選手が受けようとしたり…といった姿勢が見えない。
ようやく勇人が半ば強引にケンペスへ縦パスを送った流れで、トラップミスもありつつも井出につながったものの、湘南が意図のあるパスワークをしていた分、余計に強くそのあたりを感じてしまいました。
ジェフはこの攻撃の前の後半19分に、兵働に変えて森本を投入していました。
兵働に中盤のゲームメイクを任せきりだったからこそ、兵働が抜けて形が作れなくなった部分が大きいのでしょう。
その分ケンペスと森本の馬力に、期待しようということだったのでしょうが。
しかし、試合はその直後に動きます。
後半22分、左サイドから中村が切り替えしてシンプルに右足でクロスを上げると、中央で井出がヘディングでゴール。
ケンペスとクロスする動きではありましたが、井出が完全にフリーになってしっかりと決めましたね。
このあたりから、湘南の足はますます止まって行って、特に中盤の守備が緩くなっていきました。
それでも、同点になって湘南は前に出ていくようになり、ジェフは押し込まれながらも左サイドからカウンターを狙う展開に。
しかし、カウンターの形はなかなか作れず、湘南も何度かチャンスは作るも決め手に欠き、そのまま1-1で引き分けとなりました。
■兵働が抜けた時の穴
前回対戦した湘南よりも…というよりも、これまで長らく結果を出していた湘南よりも、確実にコンディションが悪かったですね。
運動量や球際の激しさをベースにしたサッカーだからこそ、コンディションの低下がそのまま大きく試合内容に影響してしまったのではないかと思います。
それでも湘南は後方の選手がボールをもったら、前方の選手が受ける動作をして、受けた瞬間に反転…あるいは3人目の選手が飛び出してそこにパス、あるいはオトリになって反転した選手が仕掛ける…というパスワークが見事でした。
こういったパスワークでの崩し、意図のあるビルドアップと言うのは、前回対戦した時にはそこまで感じなかった部分で。
カウンターの時に一気に選手が飛び出していく攻撃がメインであり、そこは走力も足らずにできていなかったところではありますが、動けていないためにここ2試合は結果が出ていないだけで、確実にチームとして、組織として攻撃の部分は成長しているのだろうなと感じました。
一方で、ジェフの方は兵働が抜けた後にビルドアップの形が作れなくなる部分があるなど、細部において大きな課題を感じました。
もちろん細部に関して今の湘南と比較するのは無理があるのかもしれませんが、ジェフも一時期は鈴木監督の下で"意図の感じるチーム"にはなっていたはずで。
結果は出ているものの、残念な印象をうけてしまいました。
個人的には何年も前から言ってきたとおり、試合の内容が大事であるという考えでサッカーを見ています。
その内容とはチームとしてやりたいことが出来ているか、意図のあるサッカーが見られて、それを実現出来ているかどうかであって、そうでない状況で結果が出ても今後続かないのではないかというのが自分の中でベースにある考え方です。
それこそ湘南との1戦目直前の2連勝時にも結果は出ていましたが、個人的には内容は良くないと思っていたので否定的な話をはっきりとしていました。
今もそれに近い部分があるのかなと思うところがあります。
決して、監督が変わったからといって、否定をしているというわけではありません。
ただ、予想通りの関塚監督のチームにはなっていますが。
しかし、このコンディションの良さを長らく続けられるのであれば、結果も伸ばせるかもしれません。
もしもコンディショニングが好調なのも関塚監督によるものが大きいのであれば非常に大きな功績と言えるでしょうが、昨年もこの時期は良かったものの9月に入ってから一気に調子を落とすというのが毎年恒例となっていますので、まだそこはわからないというのが実際のところだと思います。
内容に関しては組織力よりも個に頼っている印象で兵働などにかかる部分は大きくなっていますから、そういった主軸選手の離脱などは出来る限り避けなければいけないでしょう。
同じように攻撃においてはタメと変化が作れる谷澤の存在も非常に大きくなっていますし、この試合でもそこを潰されると攻撃の形が作れない傾向にありました。
全体的に見てコンディショニングが、例年以上に大事になってくるのではないでしょうか。
試合を湘南戦に戻すと、守備面では前節よりも頑張っていた印象もあります。
ジェフがリードしなかったというのも大きいかもしれませんが、押し込まれるという前節よりも展開は少なかった。
その分、ボランチなどのスペースで空くことは多かったですけど、湘南相手に1点で凌げたことは攻撃面以上に大きかったのではないでしょうか。
冒頭で話した通り、内容からすれば勝ててもおかしくない相手だったとは思います。
しかし、こちらも連戦の最終戦であることには変わらいわけで、その試合でしっかりと走れたこと。
そして、湘南相手に引き分けたことによって、チームの勢いを止めなかったことは、非常に良かったと思います。
今後は兵働、谷澤あたりが抜けた時に、どのようなサッカーをしていくのか。
そこが一番わかりやすいポイントなのではないかと思います。