2列目3列目が飛び出すサッカー対策を考える

 山形戦が終わったばかりですが、日曜日には次の試合が控えています。
 ジェフは連戦の最終戦で、J2を独走する首位湘南と対戦することになります。
 湘南は他所でも言われていますが、オシム監督時代のジェフサッカーに似た印象もあるチームとなっています。
 一昨年対戦した時もその傾向は感じていましたが、よりその印象が強くなってきた印象で。
 そのように感じる理由は、「2列目3列目からの飛び出しにおける量と質」にあるのではないかと思います。



 当時のジェフにも現在の湘南にも感じられるのは、リスクを怖がらないアグレッシブで連動したフリーランニングを、チームとして積極的に行っていく姿勢。
 攻撃のスイッチが入った瞬間に、多くの選手たちが一気呵成に攻め込んでいきます。
 湘南を見ていて特に気になった動きが、味方がボールを持った時に、その選手の近くを走り抜けていく形。
 これによって味方ボールホルダーのマークをはがす、あるいはマークが外れなければその選手がフリーになってボールを受けるという狙いで、「走り抜ける」ことが大事になってきます。
 オシム監督が好んだフリーランニングの1つだと思うのですが、湘南もこれを積極的にやっている印象があり、非常に興味深い共通点だと思います。


 その他にも中から外へ斜め前方に走って行って相手守備網を広げる動きや、パスワークで相手をひきつけておいてスペースに走りこむ選手を使う展開など、飛び出しの数だけでなく質も豊富であること、そしてその質(動き)が似通っているところが、オシム監督時代のジェフを思い出す理由ではないかと思います。
 単純にサイドの選手がオーバーラップを仕掛けるというような動きだけでなく、ボランチや逆サイドの選手、CBまでもが積極的な攻撃参加を仕掛ける。
 その動きを見ても単純に直線的に走り込むというだけでなく、斜めだったり他の選手と連動して動いていたりと、多彩な攻撃を作ることが出来ている。
 こういった「2列目3列目からの飛び出しにおける量と質」こそが、ジェフ時代のオシムサッカーにおいて最も特徴的な部分だったがために、当時のジェフと重なる印象が強くなるということなのかもしれません。



 者監督も当時のオシムサッカーを参考にした部分があるのではないかと思ってしまうほど、「飛び出しの質と量」において近い部分がある印象です。
 もちろん分析だけなら誰でもできるとも言えるはずで、それを実際に形にしていることが何よりもすごいこと。
 近年でもオシム監督とつながりがあるペトロヴィッチ監督やポポヴィッチ監督が日本で指揮を執っていましたが、似ているという意味では今の湘南の方が上だと思います。
 もちろん、当時のジェフに似ていればそれが正しいというわけではありませんが。


 加えて当時のジェフは、J1であのサッカーを成立させてカップ戦優勝、リーグ戦でも優勝争いをしたわけですから、湘南もJ2では独走状態とはいえ、まだそこまでには至っていないといえるはずで。
 来年戦うであろうJ1でどこまでやれるのかというのが、大きな注目だと思います。



 オシムサッカーに似たサッカーをやっているということで、それを逆手に取れば当時のジェフが苦戦した展開を考えれば、湘南対策にもつながるかもしれないということになります。
 当時のジェフの課題を思い出すと、1つには3バックだったため4バックが苦手だった傾向があります。
 ただ、当時のJリーグは3-5-2が主流だったために、サイドに2枚並ぶ4バックへの対応に後手に回りがちだったというのがあるのですが、現在は4バックのチームも多いですし大きな問題にはならないかもしれません。
 湘南も昨年J1では相手に押し込まれると5バック気味のなってしまうという当時のジェフと同様の傾向が見られましたが、今季は一昨年のように3-4-3からサイドを攻められれば片方のウイングバックが下がって4バック気味になったり、ウイングが守備に回ったりといった形で対応していると思います。
 ですから、傍目には4バックがそこまで苦手には見えません。


 またあの頃のジェフは運動量がベースのサッカーだったために、コンディションが低下すると弱さもある印象がありました。
 これに関しては8月に入って夏も本番となってきましたし、3連戦最後の試合でもありますから、ジェフにとっては追い風ともいえるかもしれません。
 実際、最近の湘南の試合を見ても以前よりは勢いが若干落ちてきているようにも感じますし、水曜日に行われた湘南対福岡戦も0-0の引き分けでした。
 なんとこれが、今季湘南にとっては初めての引き分け。
 これで湘南は22勝1敗1分となったそうです。


 そして、当時のジェフは相手に引いて守られる試合を苦手としていたところがあります。
 どのチームにも言えることとは思いますが、前に走りこんでいくサッカーだからこそ、相手に引かれて走りこむスペースがなくなると苦戦することがありました。
 だから、オシム監督就任当初のジェフも1年目、2年目は走りの部分を鍛えていった印象ですが、徐々に相手もジェフ対策として引いて守るようになっていったため、オシム監督はポゼッションの方も強化していった印象でした。


 これはオシム監督の指揮したアジア杯での日本代表も同様の傾向がありましたし、オシム監督がジェフで選んだ外国人選手(マリオ・ハースポペスククルプニストヤノフ)を思い返しても皆テクニカルな選手ばかり。
 06年に2バックを試したのも中盤のできる選手を増やしてパスワークから崩そうという意向があったのかもしれませんし、引いた相手を崩すためのポゼッション時の質というものを高めていこうとしていた印象でした。
 それでもやはり06年前半は少し苦しんだように、相手に警戒されている状況で引いた守備をどう崩すかといった状況は、いつの時代でも難しいテーマなのだと思います。



 ジェフは関塚監督になって引いて守ってカウンターというやり方をしてきていますし、それが湘南対策の1つとなるのかもしれません。
 とはいえ、先ほども言ったフリーランニングの質の部分。
 要するに味方のマークを外したり、斜めに走りこんだり、パスをつないで他選手がスペースに出て行ったり…といった工夫のある動きは、相手守備網が固まった状況でも相手を混乱させて崩すために考えられた動き出しだとも思います。
 実際、今年の湘南はカウンターよりむしろ以前よりも遅攻時の攻撃の質が増して、ここまでの結果を残してきている印象です。
 そう考えると、現在の湘南は引いた相手でも勝てる…というか、少なくともJ2レベルの引いた守備では守りきれないということなのかもしれません。


 ジェフは関塚監督になって堅守速攻を目指すというのであれば、堅守の部分を問われることとなるのかもしれません。
 そういった状況で、我慢して結果的にであれ湘南相手に勝点1でも奪えるかどうか。
 結果を追究したサッカーをするための監督交代なのであれば、そういった割り切った狙いというのも必要になってくるのかもしれません。
 前節もゴール前で何とか跳ね返して守り切った試合といった印象でしたが、相手の攻撃の質に助けられた印象もあります。
 湘南戦はレベルがまた1つも2つも違ってくるでしょうが、その守備の真価が問われる試合になるのかもしれませんね。