クラブが変わり、繰り返さないためにも

 鈴木監督の総括が終わったところで、監督交代に関しての総括に関して。
 これでひとまず監督交代に関しては、ラストとしたいと思います。


 鈴木監督解任から関塚監督就任までに多くのリリースや記事を読んでいますが、結局監督交代の理由は曖昧なままになっているような印象をうけます。
 鈴木監督を解任し、監督を交代する一番の狙いはなんなのか。
 そこがはっきりしない限りは応援する側としても何を期待していいのかわかりにくいところがあるわけで、本来はそこを明確にした上で関塚監督を迎え、新チームを応援したいところではないかと思うのですが…。


 鈴木監督解任当初は成績不十分という社長のコメントがあったため、結果がすべてということなのかと思いました。
 また日刊には、斉藤TDのコメントとして「2位との勝ち点差『10』が目安だった」といった記事が掲載されました。
 これによって、新体制発表会などで島田社長、斉藤TDなどが強調していた土台づくりよりも、結果に関してより追求していくということなのかなと。
 それならば大変な仕事ではありますが、関塚監督には当然この半年間で巻き返し、昇格を目指すことを期待するのが自然な流れだろうと思っていました。


 しかし、関塚監督就任の一報を報じた報知には、関係者の言葉として「中長期的な視野に立ったチーム作り」という話が掲載されています
 関係者というのが曖昧ではありますが、内容は具体的であり、ジェフ内部から出たコメントではないかと思われます。
 また、関塚監督も就任記者会見で地盤づくりと言葉は違うものの、同様の話をしています。
 2012年末に一度はジェフの監督就任直前までいったものの、ビジョンの違いなどによって決裂している関塚監督ですから、今回はしっかりと話を詰めた上での就任ではないかと推測します。
 それを考えると、このコメントの意味は大きいものではないでしょうか。
 しかし、そうなってくると、鈴木監督解任時の社長の説明などとは矛盾しているような気がしないでもありません。



 そもそもとして、この1年半のジェフはどのように評価されたのか。
 少しずつ若手選手が出て来ていたことは、斉藤TDも評価しているようです。
 チーム戦術もピッチ上を見る限りでは、コツコツと作り上げてきた印象がある。


 では、やはり結果が足りなかったのか。
 しかし、クラブはそこに対してのリソースを十分に確保できたのか?
 十分なリソースを確保できず監督解任となれば、責任のなすりつけとも捉えられかねないようにも思います。


 社長は関塚監督就任会見で、「シーズン中の監督交代はいいことではない」と話している
 しかし、肝心の監督交代の理由と関塚監督に期待する部分に関しては、一切触れられませんでした。
 斎藤TDも会社の意向であるようなことを話しているようですし、どのような意思決定プロセスを経ての監督交代かは不明のままです。
 そんな状況で関塚監督だけに「地盤づくり」といった明確な話をさせたのは失礼なことだと思うし、一企業として筋が通っていないと言えるのではないでしょうか。
 無論その会見では関塚監督の話が中心だったとしても、クラブとして言葉にする機会は他にいくらでも作れるはずで。



 目新しいことに対して期待を抱くのは良いのですが、それだけではドイツW杯直後の川淵三郎や現在の日本代表と同じこと。
 しっかりと今までを清算し、次の目標を掲げてこそ、新たな一歩が開かれるのではないでしょうか。
 ちょうど先日、オシム監督も日本代表候補のアギーレ監督に聞かれ、こんなことを話しています。

アギーレがもし監督になったとしても、そのやり方の定着には長い時間がかかるだろう。短期的には忍耐が必要だ。長期的には継続性をどう確保するか。一つのチームでも、長い間選手たちがともにプレーして、あうんの呼吸を身につける必要がある。日本サッカー界全体の方向性を探り、それが浸透するのにはもっと時間がかかる。その意味でも、ザッケローニの遺産をどう生かすかを考えるべきだ。アギーレが就任するかどうかとは別の問題として「チャオ、ザック、アリベデルチ(イタリア語でさようなら)」で簡単に済ませてしまってはいけない。(スポニチ

 このあたりを明確にをはっきりさせなければ、関塚監督と新チームへの評価だけでなく、監督交代自体に対する評価もできないわけで。
 そうなれば、当然フロントへの評価も出来なくなる。


 現状においてもっとも危惧されるのは、関塚監督にも鈴木監督同様に土台づくり・地盤づくりで話を進めておいて、結局はいつものように早期の結果を要求し、また同じことを繰り替えすことではないでしょうか。
 そのためにも監督解任・交代の意味と、関塚監督への期待は明確にしなければいけないはずだと私は思うのですが。


 実際にはクラブ内外のいろいろなプレッシャーなどもあっての解任のかもしれません。
 クラブが一枚岩ではないから、表にしづらいところがある可能性もあります。
 ただ、同じことを繰り返さないためには、そういったものにも負けない明確なビジョンと強い意思を持って戦わなければ、いつまでたってもこのクラブは変わることができない。
 毎回同じことを話しているようにも思いますが、今クラブに必要なのは優秀な監督以上に、そこなのではないでしょうか。



 関塚監督に対して「長期政権を」という話は内外で耳にしますが、それは「土台づくり」を期待した鈴木監督の時も同様のことを思っていたわけで。
 今回も関塚監督のいう「地盤づくり」を期待したいところではあるわけですけど、そこにおいては決してうまくいっていた部分もあったように感じるだけに、どうにも引っかかるものがあります。
 同様の想いを、また別の人間に託さなければいけないのか。
 少なくとも私はそんなに移り気な心でジェフやサッカーを見ているわけではないわけで、そう易々と思いが切り換えられるものではないものだと思うのですが。


 個人的には今年初旬の新体制発表会で社長やTDから発せられた「土台づくり」という言葉は、クラブが同じ失敗を繰り返さないための大事な大事な言葉だと思っていました。
 そこへの期待が大きかっただけに、肝心のその話があやふやなまま、監督交代が進んでしまうのは非常に残念です。
 クラブが一歩前に進むためにも、しっかりとした反省と今後の目標をもう一度明確にさせてから、次に進んでほしいところではないかと個人的には強く思うところです。
 これまでクラブにかけてきた時間や労力だとか、クラブにかかわってきた人たちのジェフへの想いを、無駄にしてしまわないためにも…。