鈴木淳監督を振り返る 前篇

 鈴木監督の解任と関塚監督の就任に関して、これまでいくつかのエントリーを書かせていただきました。
突然の鈴木淳監督解任劇
島田社長と斉藤TDへの期待
関塚隆監督の就任が正式決定


 しかし、私の中ではあまりにも突然で、鈴木監督の総括に関してはまだまとめきれていません。
 もう新体制でチームは進んでいるわけで、新たな期待もあるでしょうし、タイミングとしては取り上げにくく、需要もどれだけあるのかわかりませんが、過去をしっかりと整理することは未来に向かうために重要なはずです。
 今週末の天皇杯から関塚監督が指揮を取ることになりましたし、それまでには終わらせておきたい…ということで、急遽まとめてみました。
 あいかわらず図などは適当ですけどご勘弁を…(笑)


 今回は今シーズンと総括について。
 鈴木監督に関しての昨シーズンの総括に関しては、こちらなどで。
2013シーズンを振り返る 鈴木淳監督編
2013シーズンを振り返る 戦術編前半
2013シーズンを振り返る 戦術編後半


■今期序盤の新しいチャレンジ
 今季開幕時の鈴木監督は昨年のサッカーを踏まえた上で、新しいチャレンジをしてきました。
 移籍などによって選手が入れ替わったことと、昨年の課題を改善しようという意図があったのではないでしょうか。


 まずビルドアップにおいて考えると、昨年終盤は左SBの高橋が1つのポイントだったはずです。
 高橋を中心に左サイドで山口智や健太郎、左SHやトップ下の選手がうまくトライアングルを作って、パスワークを形成する。
 そのまま細かくつないで行ってパスワークで崩すか、ダメなら相手を引きつけ、右SB米倉を飛び出す攻撃を作る。
 米倉を活かすために、右SHにはタメを作れてスルーパスを出せる兵働を起用していたこともポイントだったと思います。


 昨年終盤のサイドの動きを図にしてみました。

 あまり多く情報を載せるとわかりにくくなるので書きませんでしたが、基本的にトップ下は間を狙いつつ自由に動く狙いは1年半通じて大きく変わらず。
 それに加えて、図の通り昨年は高橋の左サイドでタメを作って相手を引きつけておいて、右サイドに展開し米倉の前への強さを活かす形が出来ていたと思います。
 しかし、その高橋と米倉が移籍。
 SBに細かくパスを出せる選手が不在となり、ビルドアップの形においての変更が必須となりました。



 そこで今季のジェフは、より中央からのパスワーク作りを重視していきました。
 CBにフィジカルの強いキムではなくある程度パスをつなげる大岩を起用し、バランスを意識したポジショニングが多かったボランチが積極的に前に出ていき、ダブルボランチが縦関係を形成することが多くなりました。
 昨年は高橋が後方から出ていくことで、パスワークのポイントを後ろから前に持ち上げていった印象なのですが、それをボランチでやろうとしていたのではないかと思います。


 また2列目には昨年起用されていた兵働は使わず谷澤、山中、町田、田中など、縦に仕掛けられるアタッカーを積極的に起用。
 これらの戦術的な変化や選手の入れ替えの結果、以下のような改善が見られたと思います。
・前からのプレスが向上
・ハーフカウンターの回数が増加
・アタッカーによる仕掛けの増加(特に山中を活かすことができた)
・セットプレーの攻撃の改善
・左サイドからの攻撃の向上(ただし、右サイドの攻撃が課題に)


 プレスからのハーフカウンターに関しては鈴木監督就任当初から本来はやりたい部分だったのではないかと思いますが、昨年は走れる選手が少なかったこともあって出来なかった部分ではないでしょうか。
 また、仕掛けの部分も昨年は不足がちで、そこを改善しようという意図も感じました。
 セットプレーからの攻撃も前年は課題でしたが中村、兵働、天野などのキッカーが増えたことにより得点の可能性が高まった印象で、左サイドからの攻撃に関しては右サイドの米倉が移籍した分を、タイプは異なるものの中村が穴埋めできる可能性を感じさせてくれた序盤戦だったと思います。 
 ボランチが高い位置でプレーする動きに関してはなかなかうまくいきませんでしたが、兵働を起用することによって高い位置でもパスを出せるようになり、第5節熊本戦、第6節節水戸戦で連勝します。



 しかし、新たなチャレンジは効果があった部分もありますが、課題も残る結果となります。
・多くの怪我人、コンディション不良が出てしまったこと
(開幕前から考えると森本、ケンペス、オナイウ、大塚、山中、ナム、健太郎、慶、勇人、キム、、碓井などが怪我・病気などを経験し、兵働、谷澤なども万全ではない印象でした。)
・右SBの天野の対人守備に課題が見られたこと
・鈴木監督が望んだという外国人ボランチが補強できなかったこと
・柱として期待された町田が壁にぶつかってしまったこと
ケンペス、森本などが得点を奪えなかったこと
・大岩の失点に絡むミスが多かったこと
 特に右サイドの守備とボランチの問題は大きく、成績は伸び悩んでいました。


 これらが原因として考えられるのではないかと思います。
 町田が仕掛けの面で壁に当たってしまったことも残念でしたし、オフに新外国人選手が補強できず攻守に活躍できるボランチが出てこなかったことも、このシステムが成立しきれなかった大きな要因だったように思います。


 結局のところオフで昨年の陣営から大きなプラスとなる補強ができず、これだけの選手が一時的でも戦列を離れ状態を悪くしていたのですから、苦労するのも当然と言えるのかもしれません。
 ケンペスが負傷した第2節岡山戦、第3節東京V戦は、しっかり守備が構築していたものの森本が得点できず、ケンペスが戻ってからは守備面で不安が出てしまいました。
 攻撃をとれば守備が足りず、守備をとれば攻撃が足りず、チームの総合力において厳しい部分を感じた時期でした。
 第2節、第3節で森本が得点を奪い波に乗れれば未来は違ったようにも思いますし、クロスの質には可能性を感じた天野が守備面でも貢献できていれば右サイドも攻守に機能していたのではないでしょうか。
 また大岩もビルドアップの面では貢献できましたが守備では大きなミスが多かったなど、攻守に活躍できる選手が足りていなかった印象があります。



 そして、チームは兵働をスタメンでボランチとして起用し、攻撃的なスタイルで臨んだ3試合目。
 第7節湘南戦で0-6という大きなショックを受けることになり、より一層根本的なチームの地力の差を感じてしまったのでした。