田代起用に感じる斉藤代行監督の色

斉藤和夫監督代行「もうちょっと前を向けるチャンスとか前を取るチャンスというのはあって、それを逃していると思います。そういうところをしっかりこれからやっていかないとやはり決定機というのはなかなか作れないのかなと、それは感じています」(J's GOAL

 ジェフでの初戦となった斎藤代行監督のコメントです。
 得点力に関しては、もっと前を向くこと、もっと前を取ることという話をしていますね。
 前を取れていたシーンもあったと思うのですけど、それをより数多く増やして、分母を増やすというのは1つの狙いということにはなるのでしょう。


 質の部分は簡単にはどうしようもないでしょうから、量を増やす。
 まぁ、このあたり鈴木監督も言わないだけで、発想は大きく変わらないのではないかと思いますが。
 それでも先手を取る、前を取るというのが、斎藤代行監督の1つの色であることには、変わりないのかなとは思いますね。

3枚目のカードで田代真一選手を佐藤健太郎選手に代えて入れましたが、攻めにかかる状態で田代選手を選択した意図を教えてください。
「大岩(一貴)と(中村)太亮がけっこう高い位置を取りだしているので、(山口)智とキム(ヒョヌン)と松本の2人、山本(大貴)と船山(貴之)の前に置いて、スコアが0−1だったので、リスク管理をしっかりしながら点を取るチャンスを作ろうかなと思いました。結局、取れなかったので、前の選手を使ったほうが良かったか、それは分からないですけども」

 スカウト時代も含めて考えると、町田が一番斉藤監督代行の理想とするタイプの選手に近いのかなと思っていました。
 運動量豊富に動き続けて、相手の先手を取って、スピーディに仕掛けると。
 監督交代1試合目に無理矢理に斎藤代行監督や理想や自分を色を出そうとするのなら町田だったのではないかと思いますし、町田を起用しなかったのはちょっと意外な気すらしました。
 しっかりと現状のチームや町田本人の課題も評価・分析した上で、指揮を執っているように思います。


 もちろんまだ1試合目ですから、これから徐々に色が増してくる部分は、十分にあるでしょうけどね。
 …といっても一時的な監督なので、色が十分に出るまで指揮をされるかどうかはわからないところがあるのですが。
 そのため、その色の内容や質などに関しても、どう評価していいのか難しいところがありますね。



 そんな中で、唯一今までも違ったのが田代の途中起用でした。
 鈴木監督も田代を起用した試合はありましたが、そこまで積極的ではなく最近はベンチからも外れていました。
 田代は斉藤代行監督が獲得した選手なのでしょうし、単純に高く評価しているのでしょう。
 鈴木監督はもしかしたらボランチとしての田代は、そこまで評価していなかったのかもしれませんね。
 そして、CBとしての控えなら、経験豊富でSBも出来て得点力もある竹内の方が良い…という判断だったのかもしれません。


 田代の起用は斉藤代行監督の説明にもあるように、リスク管理的な意味合いが強かったのでしょう。
 実際、両SBが積極的に前に出ていった分、CBが数的同数に近い状況でカウンターを受けることも多かったと思います。


 また、守備の改善は攻撃に良い影響を与えることにもつながることもあります。
 健太郎から田代に代わったことによって、兵働がより前に出ていけた印象もありましたし、そこもメリットの1つとして挙げられるのではないでしょうか。
 ジェフのボランチ付近に対して相手の守備は手薄でしたし、兵働がミドルシュート含めて一発でも仕事をしてくれれば…という展開でもあったと思います。
 前目の選手を交代したほうが得点を取るという点においてはわかりやすい交代だとは思いますが、前の負担を軽くすることによって攻撃を改善するという交代というのも考え方としてはなくはないと思います。
 田代の動きは良かったと思いますし、山中、町田も最近はもう1つはまっていないところがあるので、前を変えても大差はなかったかなとも思います。
 まぁ、結果的には田代の交代が大きな変化を生むことはありませんでしたが、そうそう選手交代で成功するということはないですし、そこは難しいところです。



 田代の起用によって一番気になったのは、それ以外のところ。
 監督が変わって、より2列目が裏狙いの動きや高いポジショニングを取るようになったジェフ。
 それによって、以前よりも比較的長めのボールが増えるようになりました。
 健太郎も長いボールは蹴ることができる選手ですが、どちらかといえば周りと連携してショートパスをつなぐプレーが多いボランチ
 田代の方が中・長距離への視野があってボールが出せる選手と判断したのかもしれませんし、そこで田代への評価というものも結果的に変わって来ているのではないかと思います。


 ようするに、ショートパス志向の鈴木監督と、より裏へという志向が強い斉藤代行監督の色の変化が明確に表に出たのが、田代の途中起用だったのではないかということになります。
 これはどちらもロジックに沿ったものだと思いますし、"選手ありき"ではなく"サッカーありき"の違いということになります。
 ベースは変わらないものの、色の変化は確実に出ていることが表に出たシーンだったのではないかと思うわけです。



 次の試合でより強くその色が出てくるのか、現状維持をキープするのか。
 より強く色が出ていけば、最終的に鈴木監督が作ってきたサッカーのベースとなる部分も変わってくる、あるいはベースと言える部分がなくなる可能性も当然でてくるでしょう。
 逆になるべく継続する方向でいけば、次期監督もそのベースを使って積み上げていく形になる可能性もあります。
(ここでいうベースとは若手選手の育成・強化などではなく、細かな戦術的な約束事や継続して練習からやってきたことで生まれる選手たちの連動性などに関して。)


 ショートパスを形成する動きとテンポが鈴木監督のベースだっただけに、松本戦でもベースが変わっていく・失われる可能性は薄らとですが、感じた部分もあった気がします。
 今は鈴木監督の作り上げたパスワークをベースとしつつ前に出ていくことによって、まだ悪くないバランスでやれている印象を受けましたが、今後どうなるかはわからないような気もします。
 実際に松本戦でも前に急ぐ分、選手の距離感が開いてしまって、パスワーク時の形成に悩む部分が少しずつでていた気もしますし、当然戸惑いのようなもののあったように思います。


 まぁ、斉藤代行監督もそこは織り込み済みで、より前に出て行こうとしているのかもしれませんが。
 もし次期監督が全く違う方向性ならば勿体ない気持ちもありますが、一度まっさらになったほうが良いとも言えるのかもしれませんし、すべては次期監督次第ということになるように思います。