ザッケローニ監督の総括と原技術委員長の方向性

 内容的にはもギリシャ戦後の話の続きということになります。
 前回の話を簡単にまとめると、コンディションが良くなかった選手たちはプレーに迷いが見えて、本田がフラフラと動き回ったり、サイドで大久保にドリブルをやらせてみたりと、チーム全体に曖昧さが感じられた。
 それは結局ザッケローニ監督はパスサッカーを構築できず、選手たち主体のパスサッカーだったのではないかと。
 コンディションが良ければピタリとはまるけれども、そのスイートスポットが狭すぎたように思います。
 このハマれば強いけどそうでないと脆いという話は、ザンビア戦後にも話していました。


 コロンビア戦においては動きは良かったけれども、後方から大久保・岡崎を狙った裏へのボールが多く、戦い方をまた変えてきた印象で。
 ある程度可能性は感じたものの、全体的なチームへの評価という意味では、コンディションこそ改善されたものの、チームの本質はあまり変わらないかなと思います。



 そのあたりを踏まえての、このチームの総括ですが、大会前に『ありのままの日本代表』ということを話しましたが、結果的にはベースとなる約束事があまり感じられず準備も不十分で『裸の日本代表』といった感じになってしまったかなと。
 いくら『ありのまま』で戦うにしてもW杯は大舞台なだけですし、最低限の恰好はして臨まないと早々に追い出されてしまいます。


 ザッケローニ監督に関しては就任当初、4×4のボックスで前後左右の関係で連携して守る方法を取っていたはずですが、すぐにそれはないことになってしまった。
 加えて、3バックにもこだわっていた印象があるものの、結局ものに出来なかった。
 ザッケローニ監督として何がしたかったのか、曖昧なままチームが進んでしまった印象です。



 厳しく言えば日本人の特性をいかした前からの積極的なプレスと細かなパスワークを作れるような手腕はなかったし、逆に自分のサッカーを貫くような意志も感じられなかった。
 その温厚な人柄でマスコミや一部ファンには好まれたかもしれないけれど、サッカーの指導者として日本代表にあっていたのかどうかという疑問が残ります。
 もちろん今だからこそ言うのではなく、個人的には以前から手腕には疑問を感じていたところがあるわけですが。


 そこで気になるのは、ザッケローニ監督の手腕以上に原技術委員長がどのようなサッカーを期待したのか。
 そもそも岡田監督の直後には、スペイン人監督候補が何人も浮上していた。
 そのため今後はショートパスを繋いで相手を崩していく方向性で行くのかと思っていたにもかかわらず、就任したのはイタリア人のザッケローニ監督だった。
 攻撃的なサッカーを実施する監督という話も会った記憶がありますが、実際ザッケローニ監督にはショートパスを細部まで作り上げるまでの手腕はなかったように思いますし、やはり本来の持ち味は別のところにあったのではないかと思わざるを得ません。


 一方で原技術委員長自身はカウンター主体のチームだった印象がある上に、次期五輪代表チームの監督にもボックスを構築してカウンターを狙う手倉森監督を招聘。
 成功例である岡田監督も、前回大会では守備を固めてカウンターというサッカーでした。
 個人的には大会前にも話していたように、前回大会のように真面目に守備をしてアジリティを活かしたカウンターというのも日本人らしさではないかと思いますし、オシム監督もこのように話しています。

日本らしいスタイルとは、かならずしも攻撃的ということではない。日本人の特長を生かし、組織的かつアグレッシブ(積極的)にプレーを続けることだ。コロンビアの攻撃の圧力を組織の努力で耐え忍び、チャンスがあればカウンターという流れも、それは格上を相手にするときの日本らしいサッカーの一つだ。(スポニチ

 ですから、前へ重心を置いた、ハイプレスとショートパスからの崩しが日本人らしいサッカーの唯一の答えとも言えないのではないかとも思います。
 もちろんかといって、守備的にやれば結果が出たというような話をするつもりではなく、一貫性を持ったチーム作りが出来ていたのかどうかという話で。


 
 様々なことを考えていくと、原技術委員長の方向性と、ザッケローニ監督の特徴と、世間一般や選手がやりたいサッカーとに、乖離があったのではないか?という疑問も出てくるような気がしないでもありません。
 まぁ、アジア相手にはカウンター主体では難しく、前に出ていかなければ勝ちきれないというところもあるかもしれませんし、実際のチーム作りにおいては様々な悩みもあるのでしょう。
 アジアと世界の違いを体感するためのコンフェデ杯もありましたけど、それも日程問題があってうまく活かせませんでしたし。


 加えて今の日本代表を問われるタイミングが、4年に一度しかないという部分も難しいところで。
 アジアカップでもそれなりのチームを作ればそれなりのところまで行けてしまう印象ですし、中間試験などがないままいきなり卒業試験を受けるような感覚で。
 これはジーコ監督の頃にも感じた悩みですね。


 そう考えていくと、ザッケローニ監督も可哀想な面もあったとも言えるのかもしれません。
 ただ、それにしても、監督としては自分を殺し過ぎていたのではないかと。
 就任序盤の選手選考を見ても、JFAが好みそうなユース代表経験のある選手ばかりで、その傾向は長く続いた印象でした。
 自分の色も出さなかったこともあって、まるでJFA主導のチームといった印象で、助っ人監督といったイメージが抜けずに終わってしまたような気がします。
 それもあって、冒頭の『裸の日本代表』になってしまったのかなとも。



 原技術委員長においては、マッチメイクに大きく貢献した印象があるし、五輪含め代表選手の選出において各クラブとの調整、サポとの関係の改善など、様々な面において貢献されてきたと思います。
 ただ、それと監督招聘に関してはまた別問題でもありますし、そのあたりの分析・評価は日本サッカーの未来においてもしっかりとなされるべきではないかなと思います。
 そして、今後どのような舵を取るのかにも注目です。
 1つの考え方として、トルシエ監督も岡田監督もサンドニの悲劇や直前の試合でのショックを受けて、修正していった印象があります。
 成功例を踏まえて考えると、現状だとアジアでは積極的に行って対世界ではチームの重心を下げていく流れが、一番現実的と考えるべきなのでしょうか。


 選手に関しては、今回はコンディションのばらつきが多かった印象です。
 そこは選手だけの問題ではないかもしれませんけれども、今後を考える上で見逃せない部分ではないでしょうか。
 CB不足も言われていて、実際コロンビア戦などでは物足りなさも感じたところはありますが、守備の整備が出来ておらず可哀想な面もあったと思います。
 今回は海外で成功している選手も多く、タレントの多い日本代表だったので結果が出せず残念ではありましたが、ドイツW杯でもそのような話だったにもかかわらず、次回大会で結果を残しました。
 大会直前に戦力となった大久保、青山などが可能性を見せ層の厚さを感じた部分は収穫だと思いますし、決して未来は暗いばかりではないかと思います。


 ともかく、スタッフ、選手含めて、改めて、ひとまずお疲れ様でした。
 ここから新たなステップを踏むためにも、まずはこの4年間の分析をしっかりして、次への4年間への方向性を作り上げてほしいと思います。