仕掛けの動き・質不足によりゴールを決めきれず

 遠く北九州でのアウェーゲーム。
 しかも、大雨の中の開催ということで、現地まで行かれた皆さんお疲れ様でした。


 個人的には非常にショックの大きな試合でした。
 ブラジルでの日本代表のように「自分たちのサッカー」がやりきれなかったわけではなく、「自分たちのサッカー」は出来ていたと思います。
 けれども、それだけにより一層悔しい試合でした。
■圧倒的なシュート数差もゴールにならず
 ジェフのスタメンは不動。
 ベンチ入りのメンバーが、ナムから佐藤祥に変更となりました。
 ナムはまた怪我なのか。
 それともボランチ町田あたりにめどが立って、佐藤祥を手薄な右SB兼ボランチのバックアップ要因として、サブにおきたかったのか。
 しかし、前節も途中出場を果たして可能性を感じるプレーを見せていたナムだっただけに、ちょっと意外ですね。
 ちょこちょこベンチを外れているのを見ると、何かあるのかな…なんて思ってしまいます。


 試合はジェフがボールを持ち、北九州が守ってカウンターといった展開。
 北九州はともかく穴を作らない守備で、ジェフのビルドアップの先を封じようという守り方でした。
 2トップはジェフのCBを追わず、ボランチをケア。
 4×4がスライドして、ジェフのサイド攻撃に対しては必ずSHとSBがサンドする形で、ボランチなどもそこに加わる形でした。



 北九州は非常に慎重な戦いをしてきたため、ジェフはなかなかチャンスを作れない状況に。
 しかし、前半10分あたりからうまくジェフがバイタルエリアに入って行って、そこで前を向けるシーンが作れてきます。
 井出や大塚がうまく間で受けて、前を向いてのミドルシュート
 あるいはドリブルでの仕掛けなどを見せますが、完全には抜き切れず、あるいは周りのサポートも足りず、決定機は作れず。


 加えて、北九州の守備はジェフの左サイドを警戒していた分、ジェフの右サイドは空きがちになります。
 前が空いた状況で大岩がボールを受けることが多かったのですが、なかなか高質なクロスが上げられず。
 ここは意地でも一本、良いボールを出してほしかったのですけど、やはりそこは大きな課題ですね。

 

 ジェフとしては、このあたりの空いたバイタルエリアやサイドからうまくチャンスを作りたかったところなのですが、なかなか仕留めきれませんでした。
 ならばとセットプレーでのゴールも期待しましたが、こちらもあと一歩のところで決めきれませんでした。
 圧倒的なシュート数の差があった前半のうちに、先制したいところでしたね。
■カウンターから失点
 後半からジェフは、SHが中央寄りでプレーする時間帯が増えていきます。
 これによって、相手の守備意識を中央寄りにして、中村の前などが空いてきます。
 また、両SHも中央でパスを受けようとすることで、真ん中でも数的優位が作れ、どんどん縦にパスが通るようになってきます。
 相手のバイタルエリアが空きがちとみて、SHを中に絞る狙いは成功だったと思います。


 後半6分。
 ジェフが左サイドで受けたFKを中村が蹴り、山口智がダイレクトで合わせるもポスト直撃。
 山口智は今年だけで何回、ゴールマウスにシュートを嫌われたんですかね…。


 その後北九州のカウンターを凌ぐと後半15分あたりから北九州は全体的にポジションが下がり、かなり引いた守備となっていきます。
 前線の2人もハーフコートのほぼ中央に位置するなど、ジェフが押し込んでいった印象です。


 後半17分には山口智がボールを持ち上がり、大塚にパス。
 大塚が反転して前を向き、相手DF3人に囲まれた間を抜き井出へ。
 井出がうまく相手を交わしてシュートを放つものの決まらず、決定機を逃します。



 ボールを持つものの、なかなか崩しきれないジェフ。
 すると、後半30分。
 北九州の右サイドからの攻撃。
 右サイドからの飛び出しを一度はキムがカバーしてクリアしますが、そのボールを拾われてクロス。
 するとゴール前で山口智がマークを外してしまい、フリーでヘディングシュートを放たれます。
 このボールはバーに弾かれるも、そこを井上が拾って先制されてしまいます。


 今日のジェフは全体的に走れていなかったせいか、ラインが低くそれもあって、まずサイドで裏を取られてしまいました。
 そして、山口智は前半からマークを外して、キムがそこをカバーするというシーンが目立ちましたね。
 兵働もでしたが、ベテランに疲労の色が出てきてしまったのでしょうか…。



 前後しますが、後半28分には井出に変えて山中を投入。
 前半からチャンスを逃していた井出でしたので、山中の得点力を期待したのでしょう。
 山中は当初右サイドでプレーしていましたね。


 後半41分には、大岩に変えて田中を投入し、攻撃的なカードを切ってきます。
 大岩はクロスをことごとく合わせきれていなかったので、そこの改善を期待したのだと思います。
 続いて、谷澤に変えて森本を投入。
 前線の動きを増やそうという狙いだったと思うのですが、やはり森本はもう1つ攻撃面で良さが出し切れていませんね。
 かといって、他に良いカードがあるわけでもなく、難しいところで。
 そのまま0-1で試合終了となりました。
■相手を切り裂ける選手の出現を期待
 青いユニフォームを着て大雨でのプレーということで、なんとなく日本代表の試合を思い出してしまいました。
 実際、ジェフの選手たちは動きにキレがなく、いつもより動けていなかった。
 それが大きな敗因ではないかと思います。


 動きが悪かったといっても、日本代表のように組織的なパスワークが出来ていないわけではない。
 逆に言えば、日本代表のように個人技に頼った崩しも出来ないわけですが、そこは仕方がないところでしょう。


 SBが持ち上がればSHやトップ下、ボランチがスッとフォローに行って、パスコースを作る。
 あるいはボランチが前を向けば、FWやトップ下などがバイタルを受ける動きをして反転、ダメなら落として展開。
 そういったプレーが、動けない状況でもできていたというのは、それだけ約束事が作れていると言えるのでしょう。
 それが再確認できた試合ということになってしまいました。



 しかし、ビルドアップの更に先の、ラストパスを出せるところまでは出来ていたのだけれど、そこからの仕掛けの動きと質がが足りなかった。
 サイドでクロスを上げても前の選手が動き出さず、うまくボールを呼び込めなかったり。
 バイタルエリアで前を向けても、他の選手が前に出ていかなかったり。
 あるいはラストパスやクロス、シュートの質がもう1つだったり。
 そこが得点を奪いきれなかった要因ではないかと思います。



 1つには単純にコンディションが悪かった。
 1人1人の動きにスピードがなかったし、運動量も足りなかったことを考えてもアウェイで大雨ということもあってか、選手たちの状態は悪かったのでしょう。


 それともう1つはケンペスの動き出しが足りないこと。
 今日は動きが悪く普段以上に動き出せていなかったとも思うのですけど、来たボールに合わせるというプレーが多くて、自分から飛び出さない。
 それによって、前線の流動性にかけている部分があると思います。


 それでもやはり得点力やパワーではケンペスだし、他に得点源もない。
 その分、2列目の選手がうまく飛び出せれば…というところで、谷澤や井出、大塚などに期待したいところでしたが、そこも精度が足りなかった。
 実際井出などは、この試合もチャンスがあったと思うのですけどね…。
 


 W杯を見ていてもずっと感じていたのですが、ビルドアップまでの形はジェフもそこまで悪くはないと思います。
 けれども、ゴール前の質に問題がある。
 しかし、そこはもう選手個々の問題だと思うのですよね。
 コンディションや動き出し不足もあるとは思いますが、やはり最終的にはラストプレーの質の問題が大きな課題になっているように思います。



 例えばドリブルでの仕掛けに関して、手取り足取り、ここでまたいで、このタイミングで加速して、こんなボールを出して…と1つ1つやっていくわけにはいかない。
 外からアドバイスはできたとしたとしても、決定力も含めて最後はその選手自身のセンスでしょう。


 ジェフの場合、相手に警戒されていることが多いから、余計に仕掛けの質の高さが求められるでしょう。
 そこに関しては、カウンターだとかポゼッションだとかはあまり関係ないと思います。
 この日もカウンターを狙おうとしたら、すでに多くの北九州選手が後方に構えていましたし、動きが鈍かったためハーフカウンターも少なかった。
 狙いたくても狙えないという部分があったと思いますし、ポゼッションを重視する意図というのは、走力よりテクニックな現戦力を考えても間違っていないと思います。



 そう考えていくと、やはり点を取れる仕掛けのキレがある選手に出てきてほしいところ。
 もちろんケンペスの得点量産でもいいかもしれないし、井出や大塚が救世主になってくれても構わない。
 今はそこ一番、求められるところではないでしょうか。


 W杯でも強豪国が相手に引かれると苦しむ試合は何度もありましたし、ジェフも同様の苦しみを感じるところです。
 そして、W杯でそこを打破するのはやはり個人での仕掛けの質だったりするわけですし、ジェフでもそういった相手を切り裂ける選手の出現を期待したいところではないでしょうか。