選手がうまく絡み合ってゴール量産

 昨日の熊本戦は6-0でジェフの勝利。
 いろんな意味で出来過ぎかなと。
 6点ほど差がついた試合内容ではなかったようにも思いますし、あまりにも"仕上がり"が早すぎるのもちょっと心配で。
 プレーオフに向けて結果も残しつつ調子を上げていくのが理想だと思うわけで、出来ることならばピークはプレーオフに持っていきたいところ。
 昨年の横浜FCなどもシーズン終盤に結果を残していってプレーオフに間に合ったわけですけど、プレーオフに入った時点で満足してしまったというか、勢いのピークは過ぎてしまっていた印象もありましたからね。


 ジェフもここ数年は勢いがあるときは強いけれど、そうでないときとの差が激しい印象があります。
 奇跡の残留といわれた2008年当たりから、その傾向は強かったと思うのですが。
 ですから、本来なら一時の勢いだけではなく、本当の意味での強さが欲しいところ。


 まぁ、ただ、神戸、FC東京、熊本と悪くない結果を残しているジェフですけど、決して勢いだけではない
 実際の強さも身についている部分はあると思います。
■兵働のスルーパスからゴール
 試合序盤は熊本の素早いプレスに苦しんだジェフ。
 いつものようなビルドアップが出来ず、良いリズムを作れませんでした。
 この日は山口智が出場停止となり、左CBに竹内、右にはキムが戻ってきたのですが、竹内が左CBをあまり経験したことがないということもあってか、そこでパスワークが止められることが多かった印象です。
 相手もそこを狙って、90分を通してCB2人には特に厳しくチェイスを仕掛けてきていましたね。
 また雨の影響もあってか、中盤などでのパスミスも少なくなかった印象があります。


 守備ではロングボールなどを交えた相手の早い展開に苦しんでいたところがあり、相手の善戦でのポストプレーをうまく潰せていなかった印象もありました。
 また、カウンター時に相手左サイドに展開されると米倉の寄せが遅く、そこからのギャップで攻め込まれるシーンも多かったかなと。
 相手が3バックなので相手WBとこちらのSBにギャップができることは少なくないと思うのですが、兵働と米倉がうまくその間を潰せなかった印象があります。



 試合序盤は熊本ペースだったわけですが、前半の25分過ぎから徐々にジェフも流れを変えるきっかけを見つけ始めました。
 ポイントはパスワークと素早い判断、スピードなどでボールを前へ持む動き。
 前半10分にも高橋のクロスから決定的なチャンスを作っていましたが、高橋のプレーから相手左サイドが少しずつ押し込まれて活きます。
 すると左ボランチの健太郎が空いて、ようやく落ち着いたパスワークのポイントが作れるようになっていきました。


 そして、33分。
 ジェフがゴール前正面でFKをえて、兵働が直接狙うもシュートはクロスバー直撃。
 一度は相手に拾われるも山口慶がカットし、右サイドの米倉へ。
 米倉が目の覚めるようなグラウンダーのセンタリングを上げて、最後は田中がゴール。
 米倉らしい速いボールが決め手となったゴールでしたが、それに良く田中も合わせました。


 その直後、相手のロングキックをキムが跳ね返し山口慶が拾うと縦にパス。
 相手のチェックをうけていた米倉が、うまくヒールで落として兵働へ。
 兵働が町田へ絶妙なスルーパスを出すと、裏をとった町田がクロスを上げてファーで合せたケンペスがループ気味のヘディングシュートでゴール。
 それまで相手の早いチェックに苦しんでいた町田が、1つ仕事をこなしましたね。
 このシーンでは、田中が中央に走りこんでいたところもポイントだったと思います。
 良い時のジェフはゴール前にケンペスだけでなく、他の選手も入って行ける流れが作れますね。



 この2ゴールで、熊本のプレスが一気に弱まります。
 熊本はキックオフから飛ばしてきていたところがあったのかなとは思うのですが、失点してメンタル的にもガクッと落ちてしまったのかもしれません。
 この後はジェフが簡単に高い位置まで、ほぼノープレッシャーでボールを運べるようになります。
 38分には中央の兵働、町田、健太郎でパスを回していたところから、左サイドの高橋が大外を走り込んで行ってそこに兵働がスルーパス
 高橋はワントラップで見事にボールを落ち着かせ、そのままボールを持ち込んでシュートを選択。
 これが決まって一気に3-0としました。
■一時的に動きが落ち込むも
 後半もジェフペースが続きます。
 右サイドからのビルドアップ。
 兵働が低めの位置から裏に抜け出した田中に浮き球のスルーパス
 町田とパス交換をして田中がクロスをあげ、ファーのケンペスがこの日2点目のゴール。
 ケンペスのあげた1ゴール目もそうでしたが、熊本は右サイドからのクロスに対してファーの対応に後れを取ることが多かったですね。
 もしかしたら右CBでプレーしていた青木良太がいなかったことも、熊本にとっては大きかったのかも知れませんが。


 52分に4点目を取ったあたりから、ジェフも運動量が落ちて行きました。
 前線からのプレスも弱まり、全体のラインが下がってビルドアップも出来なくなっていきます。


 しかし、67分。
 ジェフ左サイドのスローインからサイドの奥で先に相手にボールを触られキープされたのですが、ケンペスが守備に行って奪い返すとボールを中に持ち込み、大塚とワンツー。
 そのままケンペスがゴール前まで入って行き、そのままシュートを決めます。
 これが決まって5-0。
 流れが傾きかけていたところでのゴールだってので、いい時間帯での得点でした。
 実際、このゴールで再び流れは、ジェフに戻ったかなと。


 この日のケンペスは、このシーン以外でもしっかりと守備をしていましたので、守備での貢献もすごく大きかったとと思います。
 欲を言えばポストプレーなどでのミスが多かったですから、細かなプレーをもっと大事にして欲しいなぁとは思いますが。
 まぁ、ハットトリックを決めて守備もしてくれたのですから、それで十分とも言えるでしょうけど、さらに上を目指すのであればつまらないボールロストを減らすことではないかなと。


 試合終盤。
 左サイド大塚からのクロスをファーで受けたケンペスがためて走り込んできた米倉に丁寧に落とすと、米倉はダイレクトシュート。
 これをGKが弾き、途中出場の森本が拾ってゴール。
 最後はようやく森本に得点が生まれたところで、試合を締める形となりました。
■試合序盤を課題と考えて
 6-0の大勝となったわりにはそこまで大差がついたイメージがないと感じる原因として、試合序盤に相手のプレスに苦しんだ部分があったのではないかと思います。
 理想を言えば相手のプレスに対して素早いパスワークとポジション修正などで、相手のプレスをかわしたいところではあったと思います。
 あるいは、相手のプレスの裏を突く長めのボールを使って、チャンスを作りたかったかなと。
 実際に裏を突く長めのボールや素早いパス交換も狙ったシーンはあったと思うのですけど、技術的な問題もあってチャンスを作りきれないことが多かったと思います。


 ただ、現実問題として、プレスを掻い潜るのは難しいというところがあるとは思います。
 熊本のプレスはそれだけ組織的にやれていた部分もあったと思いますし、さすがそこは過去4戦3勝1分のチーム。
 得点を奪うまでは、勢いや自信も感じました。 



 じゃあ、相手のプレスにお手上げなのかというと、そんなことはなくハードプレスをかけるということに対するリスクはプレスの裏のスペースだけではなく、体力的な問題も大きいと思います。
 熊本は試合序盤に飛ばしてきて攻守に良いサッカーをして流れをつかんでいたと思うのですけど、その分それ以降は動きが落ち込んだ。
 確かにジェフが先にゴールを決められたから勢いが落ちたところもあったのでしょうけど、勢いが落ちてからの熊本は完全に5バック気味に引いて守っていましたから、プレスが効かない可能性も想定した守り方を準備していた印象で。


 ようするに90分間は、ハードなプレスは続けられないことがわかった上での序盤の飛ばし方だったんだと思います。
 ですから、ジェフとしては初めの時間帯に耐えたことが、ある意味で"プレスの裏を突く"ことになったとも言えるんじゃないでしょうか。
 そう考えると、試合序盤に相手に流れをつかまれたのは、仕方のない部分もあったといえるのかもしれません。
 もちろん相手に流れをつかまれるにしても、もっとうまく相手をいなしたり、守備でも相手の攻撃を遅らせるなどしたかったところではありますが。



 それよりも個人的には鈴木監督も言っているように「真ん中に入ってくるボール」を潰せなかったことの方が課題かなと思います。
 1トップ2シャドー相手だとどうしてもギャップを作られ、2シャドーに対する対応が難しくなり、結果的に1トップを潰せなくなっているのかなと。


 一方で攻撃に対しては、町田が「3バックだったのであそこがあいてくると思っていた」と話している通り、3バックの横がうまく使えていたんじゃないでしょうか。
 クロスからファーに合わせる展開でも、逆サイドへの3バックの横を狙えていましたし、3バックで中央を固められると苦しんできたジェフにとっては大きな主格といえるのかもしれません。
 もちろんこの3バック横の狙いが熊本相手以外でもできてこなければ本物とは言い難いですし、ただそこを狙うというだけでなく全体的な動きがある中でそこをつかえたからこそ、良い流れが生まれたのだと思いますが。



 冒頭の話に戻りますが、勢いだけではないと感じるのもそのあたりですね。
 町田の3バック横狙いだけでなく、兵働のスルーパスもあったし、ケンペスの完全復活も見えて、米倉のクロスや、田中の運動量、高橋の前への前進、健太郎のパスワークなどがあった。 


 1つ1つのゴールを思い出しても個人能力での単発での打開ではなく、1人1人が良い動きを見せつつ多くの選手が絡んで決めている。
 総合的にチームが混ざり合っているというか、上手く絡み合って相乗効果を生んでいるところがあるのではないかと思います。



 多少心配なのはここで油断してしまうことかもしれません。
 それに関しては、試合序盤で相手にペースを握られたという点は反省材料とも言えるとは思いますし、結果的にうまくやったとは思いますがそれを課題と考えることによって油断せず、より上を目指してほしいと思います。