FC東京と戦いJ1への思いをより強く
ホームフクアリとは思えないアウェイサポの声量と、試合のクオリティ。
この感じがJ1だよなぁなんて、懐かしく思いました。
あれだけの試合が演じられれば、90分飽きずに楽しめるし、友人もスタジアムに誘いやすい。
選手たちだってああいった環境、ああいったレベルの試合で、プレーしたい気持ちは強いんじゃないでしょうか。
試合は白熱したPK戦の末敗れてしまいましたが、120分間では引き分け。
今季のジェフはG大阪にも1勝1分、神戸にも1勝1分と負けていないことになります。
やはり競合相手には強いジェフ。
メンタル的な問題もあるのかもしれませんが、これはフクアリの雰囲気にも違いがあるのではないでしょうか。
今日の試合もFC東京サポだけでなく、ジェフサポもいつも以上に気合いが入っていたように思いますし、下位チームの試合だとどこかダラッとした空気もなくはない。
上位チームに強く、下位チームに弱いのは選手やチームだけでなく、フクアリの雰囲気にも問題がある可能性も十分考えられるのではないかなぁと。
そこは私も含めてですが、周りも反省すべき部分があるような気がします。
■良いパスワークもPKを与え失点
ちょっと予想外でしたが、試合序盤からジェフがボールをポゼッションする時間が長かったように思います。
この日のCBコンビである竹内や山口智から縦にパスを出し、ボランチが絡んで、縦パスを狙いながらサイドに展開。
左では高橋がショートパスをつないで、右では米倉が裏を狙う。
そして、中央では上手く町田がボールを触れば、チャンスになる雰囲気を持っている。
テンポ良くパスをつなぐことで、攻撃のリズムを作っていきました。
守備では序盤CBの二人が相手のスピードに苦労して、裏を取られそうになるシーンが何度かありましたがその後は安定。
特にこの日スタメンとなった高橋と、山口慶が地上戦で活躍。
特に山口慶のカバーリング能力は素晴らしく、久々に試合に出たとは思えないほど、落ち着いたプレーを見せてくれました。
右サイドが兵働、米倉のコンビだったので、そこをフォローするという狙いもあったのかなと思います。
流れは悪くなかったジェフ。
パスはつなげていたし、森本が裏を抜けて惜しいシーンとなる場面も何度かありました。
しかし、それ以外の場面では、パスはリズムよく回せても決定機はあまり作れませんでした。
試合序盤のFC東京は相手がデータの少ないジェフということで、様子見で入って行ったのかもしれませんが、徐々に試合に慣れていった印象でした。
そして、前半41分。
ボランチ起用となったアーリアからの高精度のパスをルーカスが受けて、米倉が競るも最後は山口智が倒してPK。
微妙な判定だった印象もなくはありませんでしたが、個人的には相手を倒したところでPKをとられても仕方ないかなと思いました。
アーリアからのパスが素晴らしく、精度も高く鋭いボールでした。
ああいったパスはやはりJ2ではなかなか見られませんね。
■町田、大塚が深井のゴールを演出
後半開始直後もジェフがボールを持つシーンは多かったですが、徐々に動きが落ちていってしまいました。
選手たちの運動量が落ちて、細かなポジション修正が少なくなり、パスが回せなくなっていきます。
すると68分、ジェフは森本に変えて元FC東京の谷澤を投入。
森本は動いてのポストや前半の裏を抜ける動きなどは悪くなかったのですけど、ボールを持って前にドリブルを運ぼうとするとスピードが止まるなど、あまり状態が良くないように見えました。
加入当初の方がまだ動けていたような気もしますし、ちょっと心配です。
そして、75分には田中に代わって深井、83分には兵働に代わって大塚とカードを切っていきます。
この深井の投入が良かったですね。
FC東京はラインを高めに設定し、それまでにも田中が裏を狙ったり、両SBが走りこんだりすることで攻撃の形を作っていました。
こういた展開になれば、深井は非常に活きてくる。
サイドでボールを回しながら、深井、町田といったスピードある選手を裏に走らせる形で、斜めにボールを出していって、チャンスを作っていきました。
そして、後半ロスタイム。
右サイドから中央に入って行った大塚がボールを受けて、大塚が空けたスペースに米倉が走りこむ。
そこに大塚がピンポイントで浮き球のスルーパス。
ワンタッチで米倉はシュートを狙いますが、これはGKに阻まれます。
米倉もやっぱりスペースがあったほうが活きるタイプですね。
特にFC東京はSBが絞りSHがワイドに守るので、SBの横、SHの後ろが空きやすい。
また、片方のサイドに寄って守る傾向もあるので、逆サイドも空きやすく、そこも米倉が狙っていました。
米倉のシュートが弾かれたところから、相手のクリアがスローインへ。
その後、大塚、慶、健太郎とつないで、大塚が再び受けると、前線で町田が縦に動きだします。
そこに大塚がスパッとパスを通すと、町田がヒールで落として最後は深井が抜け出しゴール。
綺麗なパスワークで同点とし、試合は延長へ。
延長戦は両者慎重な立ち上がりで、FC東京は後半からやられていた深井への守備をしっかりと修正してきました。
裏を抜ける動きをしても、必ず誰かがついていく形で対応。
この短い期間でも修正できるというのは、さすがですね。
疲れていたジェフも何とか延長後半の終盤には押し返しますが、ゴールとはいかずPK戦へ。
PK戦は外すだろうなぁと思う選手が外していました…(笑)
竹内、谷澤、高橋…。
高橋あたりは疲れていましたし、PKは運もありますから仕方ないとは思いますが。
それよりも岡本が良く頑張った印象でしたし、他の選手も120分間という戦いをよく演じ切ってくれたと思います。
■パスワークは十分に通用
最後は悔しい展開ではありましたけど、天皇杯で勝ち進んでしまうと日程の問題もあるし、かといって大敗しても次に響くでしょうから、ジェフにとっては悪くない結果だったんじゃないかなぁと思います。
まぁ、120分+PK戦を戦ったことで、疲労の面は正直心配ですけどね。
しかも、あれだけ気合の入った試合でしたから。
G大阪戦、神戸戦もそうでしたが、FC東京もかなり前に出てきてくれたので、戦いやすかったという面は確実にあると思います。
ちばぎんカップでの柏戦もそうでしたが、相手が引いてきたら谷澤や深井の0トップ気味の布陣など機能しないでしょうし、深井の裏抜けもあそこまで効果的には作用しないでしょう。
J2を戦う(…といっても今季も残りわずかですが)上では、やはり引いた相手にどう戦うかという他の難しさがあるのだろうな…というのは、この試合を見て逆に再確認できました。
逆に言うと、J1に上がりさえすれば、しっかり戦えるのかなとも思った部分もあるわけですが。
特にパスワークに関しては、組織的に作れていると思います。
CBから中盤にパスを出して、パスを出したCBがサイドに開いていって、斜めに受け直しサイドにボールを回していって、ワイドに相手を広げていく。
こういったCBの細かなポジション修正などは、昨年見られなかった部分ですし、しっかりと進歩していると思います。
これで相手が左右に広がれば、そこに対して町田などがうまく入って行って、縦パスのターゲットになるし、広がらなければ右からは米倉が飛び出し、左では高橋がパスをつないでいく。
このパスワークがJ1相手にも攻撃のリズムをもたらすことができるとわかったことは、このチームにとってすごく収穫になると思うし、自信にもつながるんじゃないでしょうか。
得点シーンも大塚、町田といった期待の選手たちのパスワークから生まれたものですし、確実にチームとしての狙いの1つだったはずですからね。
ただ、もっと攻撃の回数を増やすこと。
局面でのクロスの精度やドリブル突破…。
あるいはサイドへのサポートの数など、細かな部分はまだまだでしたし、相手の寄せの速さとにフィジカルの強さに対して戸惑っている印象もありました。
この日の前半もパスは回せるけれども、高い位置まで行くと縦パスが出せなくなっていた。
活躍した町田、大塚あたりも、より速く、強くプレーできるようにならないといけないのだろうなと思います。
守備に関してもCB2人はスピードに振られてしまったシーンがありましたし、中盤でアプローチが遅れるシーンも目立ちました。
またジェフとしては、空中戦が少ないことで助けられた面もあった気がします。
まぁ、そのあたりも含めて、J2の下位チームに弱い理由が逆にわかってきた気もしますが…(笑)
いろいろ気になる部分が多くて話が広がり過ぎましたが、まとめるとパスワークは十分やれたし、逆にスピードなどの部分では課題も見られたのかなと。
それでも、あれだけやれたのは十分誇っていいものだと思いますし、自信を持って今後のJ1昇格争いに臨んでいいのではないでしょうか。
それとあの盛り上がり、あのレベルの試合の楽しさを体感できたという事実は、選手にとってもサポにとっても大きいものになるのではないかと思います。
J1への思いをより強くするには、十分過ぎる試合だったんじゃないでしょうか。
その思いを胸に、残りの試合でも出来る限り自分たちの力を出し切っていきたいですね。