2トップ変更によってバタバタしたサッカーに

 4試合勝ちなしの状況から9月1日の福岡戦の勝利。
 続く天皇杯讃岐戦にも勝ち、シーズン終盤に向けて巻き返していけるかどうか…というところでの京都戦、東京V戦での連敗。
 このままズルズルといってしまうか、踏ん張れるかという大事な時期での連敗は非常に残念でした。


 決して収穫がないわけではなかったとは思うのですが、それよりもチームにおいて悩みの方が見えてしまった試合だったかなぁとも思います。
 まぁ、その悩みが明確に見えたことで、もう1歩前にチームが成長していければいいのでしょうが。
ミドルシュートで失点
 ジェフは出場停止から健太郎が復帰して、勇人とダブルボランチを形成。
 前節京都戦で勇人とボランチを組んだ伊藤が、1列前に上がりました。
 そして、前線はケンペスと森本の2トップに。
 リーグ戦のスタメンでは初となる2トップでしたね。


 対する東京Vは高原と巻の2トップ。
 中盤には中後も入って、元ジェフ選手がスタメンで出場。
 ジェフのスタメンにも森本が入って、元所属チーム相手に戦う展開となりました。



 試合序盤は東京Vペース。
 東京Vは前節の熊本戦も中継で見たのですが、以前よりもガツガツと前に圧力をかけてくるイメージが強くなってきました。
 スタメンで巻を起用してからなのか、守備でもFWが前に追いかけていき、攻撃でも比較的長いボールやサイドからのクロスを駆使して、FWの強さを使う機会が増えてきたのかなと。


 ジェフはそれに対して対応に苦しみ、相手に流れを握られていました。
 もう少し落ち着いてボールを回せればよかったのかもしれませんけど、山口智などのミスも目立ちバタバタした時間帯に。
 守備でも前線の2人は90分通してそれなりに追いかけていたとは思うのですけど、2トップということで相手1ボランチの鈴木のところへの対応が遅れることが多く、そこからボールを展開される部分が目立っていたように思います。



 しかし、徐々にジェフも落ち着きを取り戻していきます。
 そして、前半18分には右サイドに流れた田中から、左足でクロス。
 スッと前に出ていった森本がフリーでヘディングシュートを放つものの決めきれず…という形が作れました。
 田中がうまく攻撃に絡めれば、良いチャンスが作れる。
 加えて、2トップだからこそのクロスに対しての迫力と、相手のマークの分散が見られたシーンだったかなと思います。



 けれども、前半28分。
 小池の見事なミドルシュートが決まって、東京Vが先制してしまいます。
 この前のプレーでジェフから見て右サイドからクロスを出されて、ファーの巻が競る形でラインを下げさせられていました。
 DFラインがそのまま上げきれずに、小池への寄せが一歩遅れてしまったのかなと。
 高橋のところは地上戦では中後が、空中戦では巻がとフィジカルの強い選手をぶつけられて、そこでポイントを作られていましたね。
 攻撃で左からの形が作れなかったのも、そこが大きかったかなと思います。


 その直後にも相手左サイドの小池がクロスを上げて、ニアに開いた高原がヘディングで中央に合わせて巻がゴール…と思いきやこれはオフサイド
 高原と巻のコンビに、ジェフの守備陣はかなり苦労していた印象でした。
■割り切ってゴリゴリと
 後半になっても流れは大きく変わらず、ジェフはいつものように落ち着いてパスを回せる時間帯が少なく、東京Vの狙う試合展開だったように思います。
 しかし、後半20分あたりからは東京Vの運動量が落ちていき、ジェフが攻める時間帯が増えていきました。 



 そして、74分には田中に変えて深井を投入。
 スタートから2トップとしたことによって、攻め込む時間帯でもいつも通りバイタルエリアを狙うパスワークが出来ていなかったジェフ。
 この選手交代によって、割り切ってゴリゴリと前に仕掛けるサッカーをしていこうということだったのかなと思います。
 試合途中から1トップに戻すことも考えられたとは思うのですけど、それによって勢いをそいでしまう、ターゲットを減らしてしまうよりは個人での突破力にかけようと。


 深井を投入した直後。
 左サイドでボールを持った深井は相手を抜き切らずにクロスを上げると、相手GKを超えて途中出場の谷澤に。
 フリーでヘディンシュートを狙った谷澤ですが、ゴールは決まらず。
 しかし、深井のキレはこの試合展開では可能性を感じるものでした。



 84分は勇人に変えて町田を起用。
 ここでも積極的な交代カードを切ります。
 前節京都戦ではスタメントップ下で攻撃の勢いを作っていた町田ですが、この試合では中盤の底の位置からパスを散らす役割を見事にこなしていました。
 スタメンでボランチとなると町田のサイズの部分で課題が出るかもしれませんけど、相手を押し込んでいたこの時間帯なら非常に有効だったかなと。
 2トップでビルドアップがうまくいっていなかったからこそ、ボランチで町田を起用しようということだったんだと思います。


 選手交代はそれなりにうまくいっていたと思うのですけど1点は遠く。
 そのまま1-0でジェフの敗戦となってしまいました。
■いつもと違うジェフ
 前節も1トップでターゲットが少なく、CKからの1点のみということで今節は天皇杯で成功した2トップで挑んだということになるんだろうと思います。
 ケンペスがもう少し前線で納まればいいのかもしれませんけど、そうではないとうことで森本を使いたかったというのもあるのかもしれません。
 かといってケンペスの体の強さで引いた相手をなぎ倒せることを考えるとケンペスも外したくないということを考えて、ケンペスと森本の2トップとう結論に達したと。


 しかし、今までのジェフは長らく1トップで戦ってきました。
 ビルドアップにおいても、CBからバイタルエリアを狙うトップ下にスパッと縦パスを出す。
 あるいはケンペスが落としてトップ下が受ける。
 そこからリズムを作ってきたチームでした。


 それだけに、そのトップ下がいないことによるパスワークへの影響が思った以上に出てしまったと。
 その結果、90分間バタバタした試合になってしまいました。
 いつものジェフのサッカーが出なかった要因というのは、これが一番大きかったと思います。



 普段のジェフはそのパスワークは形成できても、そこからの崩しの部分…ゴール前の人数不足や動き・精度の部分が足りないという問題が大きく、そこを解消するための2トップということだったんでしょう。
 しかし、2トップにすると今度はそこまでの攻撃の形が作れないということで、非常に悩ましい問題だなぁと感じました。


 FWがポストプレーをする形までは作れても、どこに落としていいかがはっきりせず。
 CBもそれがわかっているので、楔のパスを出すCBもポストをするFWも迷いながらプレーするため、ビルドアップが少しずつ遅れてしまう。
 CBからの縦パスがジェフの攻撃のスイッチだっただけに、そこの迷いというのはチームにおいて大きかったと思います。
 一方で前半に田中からのクロスを森本に合わせるときなどは、2トップだからこその可能性を感じましたし、前線の強さはいつも以上に期待できる部分もあったとは思います。
 ゴール前に向かった時の迫力というのは普段かけている部分だったようにも思いますし、2トップの一発に期待する部分もありました。



 しかし、結果論ではありますが、それによってチームの本質が損なわれてしまうのであればちょっと違うのかなぁとも。
 試合途中から2トップにした福岡戦などでは左で森本が落として伊藤、高橋あたりが受けて、右でケンペスや大塚が絡むという形も作れていたとも思います。
 それが理想の形なのかなとは思いますし、この試合でも田中が上手くからめればチャンスにはなったと思います。
 それもあってか、後半からは伊藤や谷澤が中央で受けようという意図もあったのかなとも思うのですけど、それでも人数の問題はどうしようもないのか思うようにはいかなかったですね…。


 時間がないことも考えて現状を捉えると、2トップは難しいのかなと。
 今から3-5-2にするのもリスキーだと思いますし、もうそれはそれで諦めて次に進んだ方が賢い選択なのかなとも私は思います。



 この試合、いつもと違ったことがもう1つ。
 選手たちが最後まで動けていましたね(笑)
 気温が低かったこともあったのかもしれませんけど、それはすごく前向きなポイントで。
 気持ちも切れてはいなかったですし、選手たちの動き自体は悪いものではなかったと思います。


 ただ、2トップシステムがうまく噛み合わなかったと。
 それが非常に大きく影響した試合だったとは思いますが、選手1人1人を見るとそこまで悪い試合ではなかったと思いますし、そういう意味では大きく失望するような試合内容でもなかったのとも思います。
 この2トップシステムの失敗を次にうまく活かせるかどうかが、すごく大事になってくるんじゃないかと思います。