相手の勢いに耐えてクレバーに勝利

 前節徳島相手に1-2に敗戦し、連勝の止まったジェフ。
 自動昇格圏内入りを目指すことを、昨日の試合はともかく結果の欲しい状況だったと思います。


 対戦相手となる水戸は、ここまで4戦負けなし。
 その勢いのまま、前へ前へと積極的に出てくるサッカーをしてきました。
 運動量豊富な相手に対して、ジェフがどう対応していくかという試合展開になっていったと思います。
■谷澤の突破から先制点を演出
 ジェフは出場停止のキムに代わって、今回も竹内がスタメン出場。
 また、前節途中から復帰した怪我明けの兵働を、スタートから起用してきました。
 代わりにベンチスタートとなったのは田中。
 そして、ベンチにはこちらも怪我明けの深井が復帰しました。


 前節徳島戦で良い攻撃は出来ていたものの、得点は試合終盤の1点止まりで敗れてしまったということもあって、変化を加えてきたということでしょうか。
 鈴木監督は勝っているときは基本大きくメンバーを変えてこないですけど、結果が出ないとズバッとスタメンを代えてくることがありますし、どこかを変えたいという気持ちがあったのかもしれませんね。



 試合序盤から好調の水戸がアグレッシブに前に出てきます。
 素早い攻撃から積極的に攻撃に人数をかけていき、チャンスを作っていきました。


 水戸は守備でもどんどん人数をかけてきて、ボールサイドにプレッシャーをかけてきます。
 ジェフはいつものような落ち着いたビルドアップは出来ませんが、ただし、その分プレスを掻い潜れば一気にチャンスが生まれていく展開に。
 正直、水戸のプレスは人数こそ厚いものがありましたけど、その裏へのリスクケアは不用心な印象もありました。
 DFラインも高く設定されているため、大塚のスルーパスからケンペスや谷澤が裏を狙う動きで、何度か惜しいチャンスも作れていましたね。


 また、ジェフは前節クロスやラストパスまでの形は作れても、ゴール前へ飛び込む人数が足りないシーンが目立っていました。
 その反省も活かしてか、ボールを持って前が空いたら自分で出ていく動きが目立っており、全体的に前への勢いを感じる展開でした。



 前半18分。
 谷澤が左サイド際でボールを受けると、ドリブルで相手を抜き去り、米倉に優しいクロスを上げてジェフが先制します。
 谷澤のぬるぬるとしたドリブルと、冷静なクロスのところで勝負あったシーンでしたね。
 米倉もしっかりとゴール前に入っていました。


 谷澤がドリブルを仕掛けるまでのボール回しも、狙い通りの流れが作れていたと思います。
 中盤からのパスを相手の間にポジショニングした大塚が受けて、ケンペスポストプレーから中盤が受ける形も作れて、右サイドから左サイドに展開して…と徐々に相手を押し下げて、左右に広げて。
 パスワークで相手を後方に押し込めたからこそ、谷澤が仕掛けた時に米倉があの位置にいることができたんじゃないかと思います。


 30分にはボールを奪ったところから、米倉がボールを持ち込み、大塚とワンツー。
 米倉がゴール前まで切り込んでいき、最後はグラウンダーのパスを谷澤に出しますが、相手にブロックされしまいます。
 その後も大塚が相手の裏を狙う形など、惜しいシーンが続きますが、追加点は奪えず後半へ。
■スタミナ不足に苦しみながらも
 前半途中に一度痛みを訴えピッチを離れていた米倉が、後半開始と同時に交代。
 頭の痛みを訴えたそうで、大事をとっての交代だったとのことです。


 後半は水戸ペースだったと思います。
 水戸は前半から鈴木隆行のところでのタメが凄く効いていて、そこにボールを預けて、早い攻撃を仕掛けていく形が出来ていました。
 前線への信頼があるからこそ、2列目以降の選手が思い切って走りこんでいけるんでしょうね。
 鈴木がタメて山村、小澤、橋本といった中央の選手たちが飛び出していき、サイドの選手が絡んでいく…。
 このあたりの前への積極性とスタミナが、チームの好調を支えているのかもしれません。



 ジェフは前半飛ばし過ぎていたのか、後半途中から動きが止まってしまいました。
 相手は前半から変わらず前掛かりになることが多かったですから、1つ掻い潜ればチャンスになると思うのですけど、守備でうまく相手を潰せず、良い形でボールを奪えない。
 そして、ボールを奪ってから攻撃に切り替えようというところで、なかなか中盤から前に選手が出ていけなくなってしまいました。
 前半から積極的に攻めていく場面が多かった高橋が後半も前にボールを持ち込んでいくシーンが何度かありましたが、そこに誰も反応できなくなってしまった点が目に見えて大きく違う変化だったように思います。


 水戸からすれば大きく試合内容は変わっていなかったと思うのですが、ジェフがそのペースについていけなくなっていったというか。
 逆に言えば水戸が良く走っていたとも言えるのでしょうが。
 こうなってくるとスタミナがあって、一発で試合の流れを変えられる米倉が交代してしまったのは、大きかったのかなと思ってしまいます。
 これまでの試合でも他の選手に疲労が見られても、米倉と高橋の両翼は最後まで走れていたことが多かったですしね。


 攻め込まれる時間帯の長くなってしまったジェフですが、岡本、山口智、竹内らを中心に粘り強く守っていました。
 水戸も勢いのある攻撃は出来ていましたけど、最後の部分での冷静さや決定力の面では課題も感じられて。
 いいサッカーは出来ていたと思うのですけど、ゴール前での最後の質はもう1つ物足りない…。
 これがJ2でよく見る問題とも言えるでしょうね。



 ジェフの苦しい時間が続きましたが、後半ロスタイム。
 途中交代で入った勇人が右サイド後方でパスを繋いだところからカウンター。
 田中、谷澤とつないだところで、勇人がウェーブの動きで左サイドに出ていって、最後は田中がゴール前に飛び込んでゴール。
 勇人、田中と途中出場で入ってきた選手が、しっかりと走ってゴールを決めてくれました。


 毎試合シュート数の少ないジェフではありますけれども、このシーンでもそうでしたが非常に冷静ですね。
 相手の間を突くサッカーをベースに考えているため、強引なドリブルやシュートは少なく、相手の隙を突いたパスをつなぐ意識が全体的に強まっているのかなとも思います。
 その分シュート数などは少ないですけど、しっかりとパスが狙い通り回れば、確実性は非常に高い攻撃になっているのかなとも思わなくもありません。
 これがトドメとなって、2-0で勝利となりました。
■守備の時間を減らしていきたい
 前半は良いサッカーが出来ていたと思うのですが、後半は苦しい試合展開でした。
 水戸は前半から積極的な印象を受けていましたけど、よくあれを90分間もたせたなぁといった印象です。
 ジェフのスタミナの問題は今日に始まったものではないですけど、それにしても水戸は最後までよく走っていたと思います。


 後半も組織的に大きく崩されることは少なかったと思うのですけど、相手の前線に強さがあることもあって、クロスや楔のボールのところで潰せないし、その後も拾えない…。
 こうなってくると、やっぱりセンターのパワー不足を感じてしまいます。
 竹内自体は決して悪くもなかったとは思うのですけど、キムがいたらもう少し違ったかなと。
 また、やはりボランチあたりにももう1つ強さがあると、楽なんでしょうけどね…。
 スタミナとパワー。
 このあたりが、この試合で感じた守備での課題だったかなと思います。



 ただ、守備で押し込まれても、最後のところでは粘り強く対応できていた。
 これはここまでの試合でも感じられた部分でしたし、それが1つの形になっているとも思います。
 選手たちもある程度そこに自信を持っている部分があるのではないでしょうか。


 以前にも話しましたが、気温が高くなってきたところから、前線のチェイシングが弱くなったこともあって、前へのプレスは諦めて4×4のボックス重視で守るようになった印象です。
 その分、相手にボールを持ち込まれることはどうしても増えてしまいますけど、それでも簡単にはスペースを与えず、組織的に崩されずに守る…というやり方になっていると。



 あまりいい形には見えませんが、前線からのチェイスが期待出来ないことや、全体的なスタミナを考えればその守り方しか選択肢はないのかなと思います。
 「それを選んでいる」というよりは「それしかない」といった感じでしょうか。
 冷静な鈴木監督らしい判断とも言えるのかもしれません。


 そうなってくると問題は、その守る時間でしっかりと相手を抑えることと、守る時間をなるべく短くすること。
 その守る時間を短くする面で大事なのが、ポゼッションということになると思います。 



 前半はそこがうまくいっていたと思います。
 うまくプレスを掻い潜って相手の間を突き、スルーパスを狙う形や左サイドからの細かなパスワークや米倉の思い切りの良い攻撃参加も見られました。
 しかし、前半の動けているうちは良かったけれど、後半は動けなくなりサポートも減ってパスミスも目立ってしまった。


 この動けないときにいかに落ち着いてパスを回し、守備の時間を少なくするかが今後の目標の1つとなっていくのかもしれません。
 この試合では先に点を取れていたから、スタミナ面で苦しんでも何とかしのぐだけでよかったですけど、点を取りたい状況でスタミナ切れを起こしたら難しい状況になっていたと思いますし。
 もちろんあのスコアだったからああいった状況になったとも言えるのでしょうが。 


 まぁ、後半苦しんだので試合を見終わった直後はあまりいいイメージのない試合ではありましたが、前半も見直して見ると凄く良い攻撃が出来ていましたし、決して課題ばかりの試合ではなかったと思います。
 特に大塚のパスワーク、高橋の積極性、谷澤の仕掛けなどは前向きにとらえられるものだと思いますし、そういった部分を伸ばしながら後半の戦い方に関する修正をしていってほしいところではないかと思います。