山口智に関するコラムを読んで

 スポーツ屋台村というアプリに山口智に関するコラムが書かれているようで、ウェブ上ではこちらから内容を読めるようになっています。
 印象からするとNumberみたいな文章ですね。
 特定の選手のコメントを中心に文章を構成して、その選手からの視点でのみ話を進めていき、その他からの考察はなし。
 選手目線の記事というのはそれだけである意味価値があるものなのでしょうし、特にオシム監督の言葉を借りると"選手を神格化する"傾向のある日本ではありがたがられるのかなとも思います。
 この記事も「嫌われてもいい」なんてタイトルをつけている時点で、その選手を完全に肯定する方向であり、それに対して疑う人も少ない。
 実際、むしろこの記事においてのネット上での反応はその選手への応援・同意であって、逆説的なものを煽るタイトルでしかないのでしょう。


 ただ、全体において考えれば、選手のコメント、見方がすべて正しいとも限らない。
 その選手にはその選手の言い分があるだろうけれども、シーズン中の試合考察なども「それでいいの?」と思うことは多々ありますし、少なくとも選手目線だけですべてを判断しようというのは危険だと思います。
 もちろん、特定の選手の考えを聞けるというのは貴重なのかもしれませんけど、選手も人間ですからね。
 また、こういった記事は特定の選手を持ち上げるために、その記事自体が選手の本音からは遠ざけている場合もあるような気もします。


 例えばとして「アントラーズをも凌駕していたポゼッションサッカー」とか書かれてますけど、実際には負けているわけでね。
 でも、こういった書き方をすれば、まるで今年のサッカーは素晴らしかった、それを手放すなんてとんでもない!という話になると。



 …で、内容に関してですけど、大筋の流れとしてはフロントへの不満、若手などクラブへの不満など、総じて「選手だけの問題ではない」といった話ですね。
 ただ、個人的にはマスコミに情報が流出することは気になりますけれども、それ自体が大きな問題だとは思いません。
 情報の流出的なものなら海外サッカーのほうが極めて多いでしょうし、それも含めてのスポーツだとも思いますし。
 そもそも、そういった情報が流出したのはプレーオフ後であって、記事にあるような「練習やクラブハウスでぎこちなさを感じた」のは仕方ない時期だったのではないかと。
 そこは結果の出せなかったチームですから、チームの責任もあるはずで。
 時期を無視して言うのなら、この文記事だってある意味でリークといえることになるわけで、見方によってはやっていることはたいして変わらないような気もします。


 何かクラブに問題があるから、こういったリークが出回ってしまうのであれば、大問題だとは思います。
 しかし、クラブ内部に問題があることなんて傍から見ていてもわかるわけで、具体的にその問題がなんなのか、どういったところを変えなければいけないのかが、この記事を読んだだけでは分からない。
 そこがわからなければ、外からの意見となんら変わらないと思うのですよね。
 前にも言った通り、クラブに「甘さ」がある。
 じゃあ、その「甘さ」って具体的になんなのか?
 それが明確化しない限りは、いつまでたっても変わらないわけですからね。
 同じように「フロントに問題がある」という話をするとして、いったいどこに問題があるのか。
 それを言えない限りは、曖昧なマスコミにおけるリークと本質は変わらないのかなと。



 一方で、現場レベルで実際に何があったのか。

山口によれば、「ジェフで結果を出せなかったら他のチームに(移籍で)行けばいい」という甘い考えを持つ若手選手も少なからずいたという。

 こんな文章になっていますけれども、実際に試合に出場していたのはベテラン選手の方であって。
 若手の奮起を期待するのも大事だとは思いますけれども、その前に今年昇格できなかったことの反省をしなければ、前には進めないんじゃないでしょうか。



 個人的な今回の記事への疑問の根底は、そこにあると思います。
 確かにフロントに問題があるのは事実。
 若手ももっと頑張ってほしいとは思う。


 けれども少なくともチームレベルでは、山口智が今年のチームの象徴でありそれだけの期待や報酬、チーム内での権限などを得て移籍してきたのだろうから、申し訳ないけれどもそれに応じた責任はあると思います。
 だから、「選手の責任もあるけれども、他にも責任はある」というような山口智としての記事が出たのは、個人的には残念な思いの方が強いです。
 いったい今年のチームの何が足りず、来年以降何が必要なのか。
 山口智の立場を考えれば、そこが先じゃないのかなと。
 これでは責任を転嫁しているのはフロントも選手も同じになってしまうわけで。
 勝者のメンタリティを持つ選手だとか、千葉再建請負人といった言われ方をされていましたけど、最後はチーム全体においての守備の集中力が欠けて失点をし、昇格を逃してしまったわけですから。



 何度も同じことを繰り返すことになりますが、結局今年もいいチーム止まりで終わってしまった。
 そこから先の強みを得ることが出来なかった。
 クラブ運営全体に関しても問題はあるでしょうけど、結果が出なかったことに関しては現場レベルでの責任は逃れられないものだと思いますし、そこへの追及が出来ず曖昧な分析だけで終わってしまえば、ここから先には進めないと思います。
 そして、監督が変わる今チームに残ってそこを追及していけるのは、山口や勇人などベテランでありこのチームの軸となる選手たちではないかなぁと思います。
 まずはぶれずに、そこをやりぬいてほしいと私は思います。