木山監督の退任を考える、その前に…

木山隆之監督の退任について(ジェフ公式サイト)


 プレーオフから数日たっていたので、天皇杯後に続投かそうでないのかを発表することになるのかなと思っていたのですが、このタイミングでの発表でしたね。
 来期の準備を考えると退任を早めに発表したかったのかもしれませんし、プレーオフからここまでの数日間でいろいろと検討したということなのでしょうか。
 タイミングに関してはともかく、監督退任に関してはそこまで驚くべきことではないのかなとは思います。


 このまま監督に関してのアナウンスがなければ、このようなことをブログで書こうと思っていました。
監督続投のメリット
・100%の継続性が期待できる
・選手などの大幅な入れ替えが避けられる可能性
・次期監督が大外れする可能性からの回避
・サポーターや外部からの批判逃れ


監督交代のメリット
・完全な継続性は期待できないけれども、大きな変化は期待できる
(ただし、今期の広島やオシム監督以前のジェフのように、監督を交代しても一定の継続性が維持される可能性はある)
・選手の入れ替わりによるチームの一新
(世代交代なども含む)
・次期監督が大当たりする可能性も
・新任の強化部トップが自分の招聘した監督とスタートを切れる


 お互いのメリットが、一方のデメリットにもなっていると考えていただければ。
 「継続性」に関しては、昨オフにも何度も言った通り、「良い状態での継続性」でなければ意味はないはずで。
 「悪い状況を継続する」可能性もあるし、「継続性」によって変化が生まれずに苦しむ可能性も否定はできませんから、「継続性」という言葉だけに囚われてはいけないと思います。
 総じて監督交代は無難な選択ではありますが、一方でこのままでいいのか?ということに関しての検討もされるべき状況だと思います。


 今年に関してはクラブも「J1昇格」を掲げ、木山監督自身も「優勝」を目標としていた上に、あれだけ多くの選手を放出し監督好みのベテラン選手等を補強したにもかかわらず、最終順位は5位。
 これは昨年、監督交代後大きくチームが傾いてからの最終成績である6位と大きく変わらず、一昨年の4位からも1つ下回ることになります。
 結果を見れば目標を達成できなかったことは事実ですから、来期の監督人事に関して一度真っ新な状況にして検討するというのは妥当だと思われます。
 これがもし「長期的な目標」の下、育成などを考え若手主体のメンバーで行くというプランだったのであれば、「1年での監督交代はおかしい」ということになると思います。
 しかし、「長期政権を見据えた木山監督招聘」ではなかったことは、シーズンの開幕前からわかっていたことであり、そこへの疑問を指摘するのであれば、今更感もなくはありません。
 まぁ、シーズン開幕前からそういったことを指摘すると批判を受けるのは、毎年このブログを見ていてもわかると思うので、やめておいたほうが利口なのかもしれませんが…(笑)



 サッカーの内容を見ても、今週ブログで取り上げたように重要なタスクであった「引いた相手から点を取る攻撃」は作れず、期待されていた「ジェフのサッカー」、「ジェフの強み」に関しても確固たるスタイルは築けず、「勝者のメンタリティ」というかチーム全体においての勝利への追及、粘りなども植え付けられなかったように思います。
 「カウンターからの攻撃」や「ゴール前で跳ね返す守備」に関しては形成出来ていたものの、あくまでも個人が主体の大枠のスタイルのみといった感じで。
 しかも、外国人選手は使いこなせなかったというのも大きかったと思います。
 あまり言葉はよくないかもしれませんけれども、木山監督に関して総括させていただくとすれば、"可もなく不可もなく"といった印象でした。
 


 しかし、それでも自分としては、消極的な続投支持派でした。
 理由としては上記に書いたメリットとデメリットに加えて、一番は「現在のジェフが木山監督以上の指導者を招聘できるのか」に対する大きな不安です。
 延いては「優秀な強化部トップを呼ぶことができるのか」に関しても、個人的には不安があります。
 「最終的には監督はクラブで選ぶ」という話ではありますが、リストアップするのは次期強化部トップとなる人物であり、その人のコネがなければ優秀な監督の招聘も難しいでしょう。
 しかし、そういった人材は他クラブを見ても人材不足であり、監督に関してもまずまずの指導者はいたとしても、「フリーで優秀な監督」というのはやはりそうたくさんはいないはずで。




 そのあたりを考える前に、そもそもジェフはどういったチーム作り、クラブ作りを考えているのか…。
 以前のジェフは「有力な選手を補強するよりも優秀な監督を招聘する方が安上がりである」という発想や「予算をかけての補強よりも育成」という考えの下、具体的でブレのないビジョンを作っていました。
 そのためにはこれ以上ジェフでの成長は難しいベテラン選手を、あえて放出するような判断をしていたこともあります。
 この辺りを考えても、恵まれていないからこその工夫ができていたんだなぁと思うわけですが…。


 しかし、現在のジェフは「1年での昇格」を毎年目標として掲げながら、江尻監督、ドワイト監督、木山監督といった実績豊富とは言えない指導者を招聘し、補強選手も失礼ながらJ1で結果が残せなかったJ2上位レベルの選手たちが主体かなといった印象で…。
(比較対象として、昨年のFC東京のようなJ1レベルの補強というのは出来ていなかったと思います。)
 「結果」を追及するのに「育成」で結果を残してきた神戸TDを招聘したことも含めて、総じてクラブとしてのやり方が中途半端であり、ちぐはぐだったと思います。


 個人的には降格して毎年のように言っていますけど、「優秀な監督も招聘できない」、「予算も中途半端にしか集められない」ことを考えれば、やはり歩いて意を時間をかけてでも「育成」をもっと考えていくべきだったのではないのかと思います。
 若手選手がいないといっても、これだけ毎年名前のある大卒の選手を補強し、レンタルでも獲得できているわけで。
 レンタルでもジェフに残りたいと言ってくれた選手はいましたし、数年後の土台になってくれることが目標なわけですから、伸び悩んでいる中堅選手も含めて育てることが大事なのではないかと。
 それだけの環境というのはユナパなど練習場を見ても、そろっているのではないかと思いますし。
 それが今のジェフの数少ない武器だとも思いますしね…。
 例えばそういった方向に行くのであれば、育成に定評のある監督が必要なのかもしれないし、それを基準としてその上で木山監督なども評価・判断をしていかなければいけないはずです。



 「続投か交代か」、「継続性か変化か」、「木山監督が良いのか悪いのか」…
 そういった議論もいいとは思いますけれども、その前にクラブのビジョンはどうあるべきなのか、"ジェフ"にどうあってほしいのか…。
 そこを前提として考えなければ、悪しきクラブ運営の例としてあげられる"短期間のみの考え方"となんら変わらないのではないかなと思います。
 今期開幕前もフロントからは「昇格」と「育成」といった甘い言葉をかけられましたけれども、結局1年ですべてを得るというのは現実的ではないわけで。
 毎年のように言っていますけれど、何よりもまずはそこをはっきりしてほしいところだと思います。



 うーん…。
 しかし、やっぱりジェフの監督には、選手にも、フロントにも、場合によっては親会社やスポンサーにも怒れるような厳しく、自分をもった監督ではないと、ダメなんじゃないかなぁとは改めて感じたシーズンでした。
 本来ならそういった監督でなくても、内部から成長してほしいものではあるわけですが、実際問題として難しいのかなと。
 問題はそういった優秀な次期監督を招聘できるのかどうか、ですが。


 ともかく、木山監督にはありがとうございましたと言いたいですね。
 寂しくなりますが、こういった別れもまたサッカーなのかなと…。