スペースメイクの必要性

 今週末は今年からJリーグに加入した松本山雅とアウェイで対戦。
 松本山雅のホーム・アルウィンでは、以前ジェフも主催試合を何度か行っていたこともありました。


 松本山雅は昨シーズン途中にGMだった加藤善之氏が監督に就任。
 チームをJリーグ昇格に導きましたが、S級ライセンスを所持していなかったため昨年末で監督職を退任。
 そして、今期は昨年まで湘南を導いていた反町監督が、指揮を執っています。
 これまでのところ、2勝1分5敗で勝点7の17位となっています。



 ジェフの方は前節岡山相手に引き分けたことで、6位にまで後退。
 このあたりの順位はまだまだ接戦となっており、上へも下へも一気に入れ替わる可能性がありますね。


 前節の試合で気になった攻撃面ですけど、木山監督は記者の質問に対してこのように答えていました。

木山隆之監督「まぁ1つじゃないとは思うんですけど、ポゼッションしながら間を突いていって前を向くというところの形が、まずできる回数が少なかった。
(中略)
もちろん、間が空いていない中で前にボールを入れて前向きな選手をサポートしてというやり方もあると思うんですけど、できれば良い形で崩そうとし過ぎて、自分たちがうまくできなかったことが最終的に崩し切れなかったのかなと。」(J's GOAL

 相手選手と選手の間を取る…という考えは、江尻監督も持っていたものですね。
 現在のパスサッカーにおいては、ポピュラーな発想ということなのでしょう。
 木山監督が開幕前に「アーセナルバルセロナの両方を足して2で割ったサッカー」といっていましたけど、今回話している間を取るという部分においては、バルセロナを参考にしているのでしょうか。


 しかし、江尻監督の時も言いましたけど、間を取る…といっても、間がない場合はどうするのか?というのが気になるところです。
 岡山のようにマンマーク気味の場合は、相手選手に付いていくのが基本ですから、選手と選手の間のスペースという発想は理論上はなくなるはずで。
 例えばとしてFWが相手の間を取ろうと下がってみたりサイドに流れてみたりしても、そこにも相手選手がついてくるはずですからね。
 あるいは、ゾーンで守る際も間のスペースというのは当然、気を付けなければいけないポイントの1つなはずで、良い守備をしているチームは間に入った瞬間に潰しにかかってくる…。
(逆説的に言えばゾーンでは間に入られても、そこを潰せるだけの距離間やポジショニングというのが重要なのでしょうが。)
 もちろんピッチ上の全体をケアするのは無理ですが、間を取られたくない危険なエリアでの間に関しては警戒心も強いはずで。


 例えば兵働などはよく間を狙っていおり、初めてセカンドトップ気味の位置でプレーした試合では、うまく相手CBと相手ボランチの間を取れていました。
 しかし、それは直後に監督の交代した横浜FC戦で、あの試合は相手の守備が拙く、間へのケアも後ろへのケアもできておらず、明らかに守備がスカスカだったという点も大きかったはずです。
 その後の試合では兵働へのマークも厳しくなり、うまく間で受けられるスペースもなくなって、もともとフィジカルがそこまで強くないこともあって、兵働が潰されてしまう試合も目立ってきていました。


 基本的には木山監督は兵働を軸としたチームを考えているのではないかと思いますし(深井は戦術的には計算しにくいだろうし、レジナルドもまだ大活躍とまではいっていないし)、兵働が消される試合が増えているというのは、チーム全体においても大きな問題だと思います。
 かといって、あのポジションでうまく間を取ってパスを回せる選手が他にいるのかというと疑問ですし、そこを諦めるとなるとチーム作りも大きく変わってしまうということなのかもしれませんね。
 現在は負傷中のフィジカルの強い米倉ならもう少し狭いエリアでもうまくやれるのかな?とも思うので期待したいところではありますけど、米倉には米倉の課題も多いですからね。
 コンスタントにいいプレーができないとか、パスセンスでは兵働のほうが上でしょうし。



 …で、ようやくタイトルの話になるわけですけど。
 間を取りたいという考えは理解できるわけですけど、間がない場合にどうするかが、なかなか見えてこないように思う試合があります。
 木山監督のコメントにある「前にボールを入れて」という話は、ロングボールを藤田にあてて…ということなのかな?と思うのですけど、あまり藤田も空中戦では強くはないですし(あるいはサイド攻撃も同様で)、岡山のようにしっかりゴール前のスペースを消されていた場合は、単純に前に入れただけでは状況は変わらないように思います。
 それよりも有機的に前目の選手が動いて、囮になる動きや連動した動きが重要になってくるのではないかなぁと。
 ようするに「空いている間を使おう」だけではなく、その前に「間を自分たちから作ろう(スペースメイク)」という意識も、今後はより一層必要になってくるのではないかなと感じています。
 もちろん、それも口で言うほど簡単ではないのでしょうが。


 それに関連していうと「良い形で崩そうとし過ぎた」という話をされていますが、本当に問題なのは「良い形で崩そうとしすぎた(パスサッカーにこだわった)」ことではなく、そもそも「良い形で崩せていない(パスサッカーで点を取れていない)」ことなのではないかなと。
 後者なのであれば、いくら長い時間パスで崩す形にこだわったとしても、得点はなかなか取れないわけで。
 パスを繋ぎ続けて相手のミスでゴールを奪うという可能性はあったとしても偶発的なものとしか言えず、それでは根本的な問題解決には至っていない…というか。



 実際、中盤でのパスワークの工夫は感じるときはあったとしても、アタッキングサードにおいての工夫というのは今のところあまり感じていないところがありますし、そのあたりをより突き詰めて精度を上げていけるかどうかがこのチームの分かれ道になるのではないでしょうか。
 今回の松本山雅も次の富山も3バックで戦ってくる可能性があり、マンマーク気味で間がない状況になるかもしれませんし、間が空いていない状況でどういった攻撃をしていくのかが、非常に気になるポイントとなります。