”戦術オーロイ”と”戦術深井”と

 先週末行われたジェフ対草津戦は3-1で敗戦。
 残念ながら試合内容も含めて、完敗でしたね…。
 草津戦までの3試合を振り返ると、岡山戦が2-1、熊本戦が1-1、大分戦が3-2となっているわけですが、岡山戦は退場者が出てから巻き返してなんとか勝った試合でしたし、大分戦は後半相手の動きが一気に落ちたからこそ、ああいった展開が作れたはずで。


 ここ数試合を振り返ってみると、決してジェフの試合内容が完璧だったというわけではないと思います。
 それでも大分戦終盤のような押せ押せの展開が作れて試合に勝ててしまったことで、逆にそのあたりがうやむやになってしまっていたような気もします。
 そして、そのツケがこの試合で出てしまったのかなということですね。 
■前半から草津のプラン通り
 ミリガンがオーストラリア代表に選出され不在となったジェフは、CBにゲッセル、左SBに良太を起用。
 ボランチに伊藤を戻して、右ウイングにはラムをスタメンで使ってきました。


 前半の試合展開は五分五分。
 草津はFWのラフィーニャが少し下がってジェフのボランチを見て、ボランチの2人がオーロイの前のスペースを消す守り方をしてきました。
 そして、何よりも草津が運動量でジェフに負けていなかったことが大きかったですね。
 オーロイへもしっかりと体を寄せることで空中戦でも簡単にはプレーさせていなかったですし、球際でのプレーを見ても気持ちのこもった良いプレーを見せていたと思います。


 その守備に対して攻撃が停滞気味になってしまったジェフは、サイドからの深井の単独ドリブルのみが攻撃のポイントになっていた印象でした。
 オーロイあてがうまいくいかず、他に打つ手がないため、独力で突破できる深井に任せざるを得ない展開だったんじゃないでしょうか。



 一方の草津はFWで起用されていたアレックスを右SHで起用し、萬代を前線に起用。
 ジェフの左サイドの守備は課題が見られますから、そこを突こうという狙いもあったのかなと思います。
 ジェフはサイドの守備だけでなく、左CBで起用されたゲッセルのスピード不足もあって、何度かそこでピンチを作られてしまいました。
 例えば前半27分のアレックスのバー直撃のクロスは、その前にラフィーニャがサイドに流れたことでそこを良太が見て、アレックスが中央側を走り込んでいったわけですが、その走り込みにゲッセルが追い付けず裏をとられたところからでした。
 このあたりはミリガンが帰ってくれば、ある程度は解決すると思うのですが、やはりミリガン不在の影響は大きいですね。


 前半はジェフは左ウイングの深井で攻め、草津は右SHのアレックスを中心に攻める。
 中央高めの位置は草津に潰されていて、ジェフはそこを使えていませんでしたし、結果的に両チームは同じようなサッカーの内容になっていました。
 草津としては中央のオーロイを封じておいて、サイドから攻める狙いがあったはずでゲームプラン通り。
 ジェフとしては、これでいいのかな?と感じる状況だったと思います。
■先制され裏をとられて大敗
 後半開始と同時に、ラムに変えて太田を投入。
 前半の悪い流れを変えようという意図があったのでしょうが、大きな変化は作れず…。
 すると、後半5分。
 草津の右サイドのスローインからの展開から、DFラインの裏をとられて、最後はアレックスがヘディングでゴール。



 後半19分、1点ビハインドとなったジェフは太田に変えて久保を投入。
(このあたりはまた明日にでも詳しく。)
 失点してからのジェフは、後方の枚数を削ってでも前に人数をかけていこうとしていました。


 しかし、前節のような試合展開を期待していたのでしょうが、大分戦のようにはいかない。
 まず、大分戦では相手の足が止まって中盤も含めて全体が押し込まれていたからこそ、前に人数をかけても安全ではあったわけですが、草津の選手達はしっかりと最後まで動けていました。
 逆に草津戦ではジェフの選手達が守備から攻撃に移れないことも多く、攻撃がフィニッシュで終われない展開も増え、カウンターを作られるシーンが目立っていたと思います。


 後半37分の失点もカウンターから。
 ジェフはセットプレーのあとも人数をかけ付けますが、守備に転じた際にジェフの選手は戻れず、完全に数的有利を作られて、ラフィーニャに2点目を決められてしまいます。


 続く後半45分。
 ジェフから見て右サイドからのスルーパスに対して萬代がゲッセルの裏をとって抜け出し、そのままゴール。
 良太が左サイドで深く守り過ぎていたのも気にはなりますが、たぶんそれが無くてもオフサイドではなかったと思います。


 最後にPKから深井が決めて1っ点返しますが、反撃らしい反撃の時間帯も作れず。
 悔しい大敗となってしまいました。
■根本的な問題は…
 前節大分戦との一番の違いは、対戦相手が後半も動けていたことじゃないでしょうか。
 この試合前半の停滞感というのはここ数試合見られた傾向で、決して今回が初めてというわけではないですが、それが90分間続いてしまったということですね。
 前節の大分は後半受けに回ってしまって、足も止まってしまいましたが、草津はホームということもあって90分間戦えた。
 それだけの違いだったのかなと思います。


 ようするに、ジェフから見れば、大分戦前半の内容の延長線上にあった、今回の試合内容ということではないかと。
 誰が悪いとかどこが前節に比べて良くなかったとかというよりも、単純に実力不足。
 ここまで結果を出してきたジェフですが、内容はそこまで良くはなかったわけで、この試合展開も決して大きな驚きではないように思います。


 確かにジェフのコンディションが悪かったという問題もあったかとは思いますが、全試合相手に走り勝てるとは思いませんし、そこまで極端に足が止まったような状態でもなかったと思います。
 J1昇格のためには、こういったある程度コンディションの悪い状況でも勝てる力を付けていかなければいけないんじゃないかと思います。
 そのためには相手が崩れかけてしまったところを攻める術だけでなく、自発的に相手を崩す術を身につけていかないと。



 ”戦術オーロイ”も最近は不発で、落したところをしっかりとマークされてしまっていることで、上手くオーロイあてからの攻撃が作れていない印象です。
 また、足元へのパスに関してもオーロイは動き回ってボールを引き出せるタイプではないから、オーロイの前のスペースをしっかりスクリーンされると厳しい状況です。
 ときおりオーロイが下がってきて足元で受けることはありますけど、極端に下がってきたところでポストになっても、効果的な落としにはならないですしね。


 そんな中で、この試合は”戦術深井”のようになっていたかなと。
 ともかくサイドに開いた深井にパスを出して、ドリブルを仕掛けさせると言った展開で。
 しかし、深井はここ数試合、中央に切り込むような形はあまり作れず(意図的になのかもしれませんが)、サイドでの単発ドリブルが目立っている状況です。
 それだけではなかなかチャンスも作れないし、深井のドリブル突破は単調になりがちで、選択肢としても読まれている印象があります。
 ”戦術深井”を作り上げるにしてももっとチームとしてのサポートやそこからの受ける動きを作って行かないと、現状では質の方はもう1つ…といったところではないでしょうか。



 この試合の後半、人数をかけて攻めに転じたのは、少し無謀でもあったのかなぁとも思います。
 相手には前線にスピードがある選手がいますし、何より草津の選手の方が動けていたという部分もあります。
 もう少し冷静にプレーしても良かったのでは…と、思うところもあります。


 しかし、バランスを崩してでも、人数をかけなければ攻撃の形が作れないというのが現状なのかもしれません。
 相手が動けている状況であっても、強引に攻めなければチャンスも作れない。


 そう考えると、やはり根本的な問題は攻撃面なんじゃないでしょうか。
 個人的にはオーロイに早い段階でアーリークロスロングフィードをあてる”戦術オーロイ”と、深井がどんどんドリブルしてサイドをえぐって速いセンタリングを上げる”戦術深井”はだいぶ違うところがあると思っているので、そのあたりの整理(状況に応じた周りのサポート)と起用法などをしっかりと考え直すべき時に来ているのではないかなと思います。
 今のところははどちらも中途半端な状況ではないでしょうか。
 例えば”戦術深井”で行くならもっと深井へのサポートを出来るような形(この日、良太が一度いいオーバーラップを見せていましたが)をチームとして作ってあげたいし、”戦術オーロイ”ならスタメンで久保あたりを起用して、もう1つのターゲットを作ってあげるのも1つの手なのかもしれません。
 または”戦術深井”がメインなら、ターゲットとして逆サイドに飛び込める選手(孝太が怪我なら米倉をまわすとか)なども必要になってくるのではないかと。


 もちろんこのあたりは「例えば」の話であって、「こうすべき」ということを言いたいわけではないのですけど、このままの状況だとじり貧なのではないかと。
 気温が高くなっていけば、大分戦後半のようなハイテンションなサッカーも難しいでしょうし、オーロイなどのスタミナにも不安が出てきます。
 より攻撃の質の部分を高めていく必要があるわけで、そのためには1つの選択肢としてチームにおいて大きな変化も必要になってくるのかもしれません。



 やはり「自信」や「勢い」だけでは限度があったわけで。
 この大敗をきっかけに、もう一歩チームが成長してくれれば…と思います。