3バック、”とりあえずは”失敗

 もうペルー代表のクルサードが気になっちゃって気になっちゃって…。
 終いにはクエバがウェバーに聞こえてしまいました(笑)


 日本代表はスタメンで3-4-3をテスト。
 栗原、今野、伊野波の3バックに右に西、左に安田。
 ボランチに遠藤、長谷部、前田の1トップに岡崎と関口の2シャドーというスタメンでしたね。


 3バックと言っても前回と同様に3.5バック気味のシステム。
 サイドでサイドハーフの選手がプレスに行ける状況では、逆サイドの選手が戻って4バックになる戦術でした。
 また、この試合では相手がトップ下の位置でボールを持っているときには、両サイドハーフが下がって、リベロセンターバックが前に出る動きもしていました。
 5バックになって中盤を薄くしたくない、最終ラインが押し込まれないようにしたい…という意識が強く感じられます。


 先日話した深セントルシエ監督はわりとオーソドックスに、同サイドのSHは比較的低い位置に構えて、ボランチやトップ下がサイドのサポートに行って、逆SHが中に絞ることで、4バックに近い形になる戦術でした。
(ただし、中央を攻め込まれた時は5バック気味になってしまうこともありましたが。)
 広島あたりはボランチが1つ下がって、4バック気味になることも有名ですね。
 このあたりの3バックにおいての工夫は面白いですね。


 オシム監督が日本代表の時は3バックと言うだけで叩かれていましたが、今回は興味深く見守られている印象で羨ましいですね(笑)
 やはり当時はどうにもバッシング先行だった気がします。
 オシム監督が就任してから半年間近く行われた3バックは、悪くない感じだったと思うのですが…。
 むしろその後の4バックの方がしっくりきていなかったんじゃないのかなぁと。



 しかし、ペルー戦の3バックに関しては、なかなかうまく機能しませんでした。
 そのあたりの約束事がうまく浸透していないのか、どうしても守備の約束事が気になってしまうのか、SHの2人が思い切りよくサイドをかけあがるような展開は少なく、中盤でパスを繋いでいてもオーバーラップが遅れてしまったり、逆サイドからの展開でうまく開いて受けられなかったりといった場面が目立っていた印象です。
(どうも逆サイドを攻めている時はSHが絞る意識も強いようなので、そのあたりの約束事があって上手く開けなかったのかもしれませんが。)
 あるいは守備時にも前にプレスに行くのか最終ラインに戻るのか、いまいちはっきりしていない動きが多かった気がします。
 また、中盤の2人の運動量が少なく、3トップとの距離が開いてしまっていたのも気になりました。
 2シャドーが共に(と言ってもタイプは違いますけど)前への仕掛けがウリの選手で、前方にパサータイプの選手がいないという影響もあったたように思います。


 そんな状況だったので後半開始からいつもの4-5-1にして、ボランチと前3人の間にトップ下本田を起用するというのは理にかなった交代だったと思います。
 本田が動き回ってボールを触ることで、中盤と前線の間を埋めた上、本田の動きにつられて2シャドーの運動量も増えていったんじゃないでしょうか。
(本田はこういった劣勢の試合のの方が気合いが入りそうですよね。ロシア国内ではそういった立場のチームではないから、燃えてくるものがないんでしょうか…笑)
 また、サイドバックに下がった安田も前でのプレスへの参加などを考えずに、シンプルな仕事を求められるようになって、迷わず攻撃参加が出来るようになっていった気がします。
 得点こそなかったものの、全体的にみると後半の方がスッキリと戦えていた印象です。



 ただ、個人的にはもう少し3バックをテストするのかなぁ…とも思っていたのですけどね。
(スポンサーとかテレビ的な要因もある程度はあるのかもしれませんけど。)
 4バックで本田や長友あたりを投入していけば、良くなるのはある程度わかっていたこと。
 しかし、今回の試合の趣旨はスタメンを見ても、選手やシステムなどにおける様々なテストだったのではないかなぁと思います。
 まぁ、予選本番でもホームではあえて本田や長友をスタメンで起用せず休ませて、劣勢になったら起用して盛り上げる…なんてこともできるのかもしれませんけど、前半うまくいかなければ焦りが出てしまう可能性もあるし、そこまで器用にできるのかどうか。


 前半うまくいかなかったのは、コンディションの問題と連携面の影響も大きかったと思います。
 SHが前に出ようとして、そこにフォローに行ったシャドーも同じように前に走り出してしまうなど、連携面の課題ははっきりしていたと思います。
 しかし、安田にしろ西にしろ今回がザッケローニ監督になって初の招集なはずで、練習でも2日しか合わせる時間がなかったようですから、そういった問題が起こるのは仕方のないこと。
 関口もこのシステムでは初めてだったはずで、そのあたりの難しさがあったはずです。


 それでもこのように選手を試しておきたかったのは、実際にW杯予選でもこういったことが起こりうると考えているからでしょう。
 「こういったこと」というのは、過密日程により内田や長友、本田などの海外組の選手が動けない、あるいは招集できないという問題が起こる可能性があるということ。
 実際、この試合でもスタメンの長谷部、安田などが試合中に足を痛めていたように、コンディションは決して万全ではなかったはずで。



 そう考えると、メンバーの底上げは必須だったとも思いますし、その中でこういった苦戦した試合が出てしまうのも当然のことと言えるのかもしれません。
 3バックにせよ、今回新しく使われたメンバーにせよ、この試合で結論を出してしまうのは時期尚早でしょう。
 練習内での内容の向上も含めて、チーム全体で戦える日本代表を作っていってほしいですね。