深セン紅テン、攻撃のスイッチと展開力
昨日、中国スーパーリグ第2節深セン対陝西宝栄が行われました。
深セン紅テンの巻、楽山は共にスタメン出場を果たしました。
対戦相手である陝西宝栄には、DFバヤリッツァが所属。
昨日の試合にもスタメン出場し、巻とマッチアップするシーンもありました。
バヤリッツァはストイコビッチ監督とのつながりで、08年から09年まで名古屋でプレー。
ジェフ戦にも出場していたはずで、懐かしい対決となりました。
2010年から中国の河南建業に加入し、シーズン途中から陝西宝栄に移籍したようです。
■押し込まれる時間帯は少ないものの…
深センは前節と同じ3-5-2。
陝西宝栄は4-4-2のフォーメーションでした。
前半早々に深センは中盤でボールを奪われ、左サイドの裏を突かれるシーンを作られてしまいます。
ボールの奪われ方は前回同様、課題が多い印象ですね。
基本的には中盤でショートパスを繋ごうとするサッカーを目指しているだけに、1つでもミスがあると危ないわけですが…。
しかし、それ以降は落ち着いた試合展開。
やはり前節の天津康師傅に比べれば、相手はそこまでの力はない印象でした。
攻撃に関しても天津康師傅ほどの圧力は感じず、ボールの回し方ももう1つでしたし、深センが押し込まれる時間帯も目立ちませんでした。
一方の守備に関してもプレスが緩く、ボールを保持する時間は深センの方が長かったと思います。
ただ、深センは後方ではボールをつなげていましたが、そこからの形がなかなか作れない。
ただつないでいるだけの時間帯が長く、自分達から高い位置までボールを持ちこんで、攻撃を仕掛ける場面がなかなか作れない状況でした。
これではパスを繋げていても、あまり意味がないわけで…。
■前半終了間際にセットプレーから失点
相手もセットプレー以外ではチャンスを作れず対等に戦えていたのですが、前半終了間際。
そのセットプレーの展開から深センが失点してしまいます。
左からのセットプレーに対してラインで守る深セン。
陝西宝栄のキッカーはそのラインから少し引いていた選手にパスすると、深センは一斉にラインをアップ。
すると、最終ラインの裏に多くの相手選手が残る形に。
そのまま放たれたシュートがこぼれたところ、ラインの裏で相手選手が拾って、中央にパスをしゴール。
明らかにオフサイドエリアでパスをしたわけで、オフサイドになるはずですが、そのままゴールが認められてしまいました。
深センの選手も抗議をしたのですが、判定は覆らず0-1で前半を折り返すことに。
(失点シーンの動画はこちらで。)
そこまでは相手の攻撃もさほど怖くなかっただけに、時間帯も含めて非常に残念な展開でした。
それでも一点ビハインドとなったことで、後半からの積極的な攻撃を期待したのですが、深センはなかなかもう一段ギアを上げることができず…。
前半同様、良い形で前にボールを持ち込むことができません。
陝西宝栄は後半途中から疲れてきて、より前にボールを運びやすくなっていったのですが、そこからの攻撃の変化、思い切った仕掛けや中盤からの飛び出しなどは少なく、前半以上にゴールの匂いがしないまま時間だけが経過していきます。
そして、そのまま大きな見せ場もなく、0-1で試合終了となってしまいました。
■攻撃の展開が作れない深セン
前節の天津康師傅では5バック気味になり、全体が押し込まれることによって、攻守において後手を踏んでいた印象でした。
ただ、相手は格上だったわけで、同格のチーム相手となればそういった問題はなくなり、深センの良さも出てくるのではないか、と期待していたのですが…。
確かにサイドが攻め込まれて5バック気味になるようなことは少なく、ボールも持てる状況にはなりました。
しかし、肝心のそこからの攻めの手立てが見えてこなかったことが、非常に残念です。
ようするに、バックの枚数の問題ではないということだと思います。
例えば左サイドの選手がボールを持って前を向き、相手SBと対面したシーン。
トップ下の選手も近くに来ていたのですが、そこからどうやって動いていいのか互いに悩んで足が止まり、結局バックパスを選択する…なんてシーンもありました。
ボランチからの展開もプレスが来ていないのに簡単に後方に戻してしまったり、巻などにボランチからくさびのパスを出すシーンも見え見えの縦パスで相手に奪われたり、くさびのパスが入っても他の選手が受けに行かず戻すしか選択肢がなかったり…。
あるいは、カウンターのシーンでもボールをどう持ち込んでいくか迷って時間がかかり、結局自分達のミスでボールを外に出してしまう…なんてこともありました。
ようするに、中盤の選手の判断力も課題で、チームとしてもどうやって攻撃するかが作れていない。
どこを攻撃のスイッチとするのか。
信頼できるスイッチ(特定の選手がボールを持った場面だとか、くさびのパスだとか)が入った瞬間に、どうやって周りがそれにあわせて動いて行くのか。
そういったところが、なかなか見えてこない印象がります。
トルシエ監督が日本代表の黄金時代を率いた時は、そのあたりの攻撃の展開の基本(くさびのパスが入ったら他の選手が受けに行くとか、サイドチェンジに展開する際は逆サイドが素早く開くとか)が初めから出来ていたのかもしれませんが、深センではより基礎的な部分から指導していく必要があるのかもしれませんね。
監督就任後に「稲本と小野を獲得する」なんて報道が出ていたようで、取るに足らない飛ばし記事だと感じていたのですが、深センの補強ポイントとしては的確な指摘だったのかもしれません。
ようするに中盤でパスもつなげつつ攻守に活躍して前線に飛び出して行けるボランチと、ゲームメイクが出来てラストパスも出せる中盤の選手と。
日本代表時代は中盤の選手がチームの肝だっただけに、2人のような選手がほしくなるところなんじゃないでしょうか。
もちろんない物ねだりをしても仕方なく、このメンバーの中でどういったサッカーが出来るかが大切なわけですが。
それでも前半30分過ぎには右サイドからの展開で巻がCBを背負ってプレーし、FWのキレンや中盤の選手が近づいて細かくパスを回してタメを作った瞬間に、左サイドを選手が飛び出していくシーンがありました。
残念ながらそこにはボールが出なかったわけですけど、可能性は感じるシーンだったと思います。
前節の巻のオフサイドになったゴールシーンもそれに近い形ではありましたし、ああいった形を作っていくことがトルシエ監督の狙いなのではないかと思います。
ただ、あまりにもその形を作れる回数が少なすぎるというのが、深センの実状ですね。
前節とは違ってボールは持てていた状況だっただけに…。
ちなみに巻は後半途中に交代。
楽山はフル出場となりました。
まぁ、選手側にも問題があるとはいえ、チーム全体がこれだとなかなか2人も難しいのかなぁといった印象を受けます。
巻は中盤の選手と交代したようなので、中盤を厚くしたいという戦術的な意味合いもあったのかなと思うのですが。
確かに現状だとキレンも巻もそれなりに1人でも競り勝てるので、ダブルポストにするよりも中盤をどうにかしたくなる…という気持ちもわかります。
ともかく、ちょっとこの先が心配になる試合でした。
相手が同格の状況で、ホームであの試合はいただけないでしょう。
守備は大崩れしなかったですから、問題はやはり攻撃ですね。
まぁ、このままではまずいということが分かったのは収穫とも言えるはずで、ここからの挽回に期待したいと思います。