2010年反省会 その2 チーム&監督編2

 ざっくり今期を振り返るシリーズ。
 シーズン後編となります。
■9月の攻撃も継続できず
 W杯中断明け1試合目の札幌戦に0-3で大敗、続く柏戦で引き分けとジェフはリスタートに失敗。
 その後一度結果の方では持ち返しますが、8月中旬の岐阜戦に敗れた後の岡山戦で、攻撃のパターンに変化がありました。
 右サイドに太田を置いて縦に突破させ、左サイドに工藤を回して工藤が左から相手のボランチとCBの間に入って行き、右から真横か若干マイナス気味のクロスを上げるという形(図にするとこんな感じ)。
 また途中からネットの負傷などでチャンスを得た青木孝太も前線から前に飛び足すプレーが出来る選手で、この戦い方に大きなアクセントを加えていました。
 シンプルではありますが、ジェフはそれまでにこういった攻撃における明確なデザインが作れていなかっただけに、個人的には期待感の高まる内容でした。


 苦手としたアウェイゲームでの福岡戦と首位柏戦での連敗もあり結果の面で大きな改善とはいかなかったものの、課題だった攻撃における打開策・組織的な崩しの構築となる可能性は十分にあったのではないかと思っていました。
 しかし、10月9日メンバーを大幅に入れ替えた天皇杯京都戦で大勝すると、2連敗のあと2勝していたリーグ戦でも前線のメンバーを変えてしまいます。
 直後の水戸戦は勝利を収めますが、その翌戦となった横浜FC戦からは今季ワーストの3連敗。
 ジェフでもプレーし今期引退を表明した横浜FCの早川にはネットを潰せば千葉の攻撃は半減すると言われ、見事にやられてしまった印象でした。


 後がなくなったジェフはがむしゃらに戦い、勇人がFWの位置でプレーするような試合も増えましたが、逆に前線のスペースがなくなってしまうことの方が多かったかなと。 
 結局、3連敗の時点で現実的な昇格の可能性はかなり低くなり、最後は草津に敗れてJ2・1年目の4位以下が確定してしまいました。
■「方向性」に関して
 残念ながら最後までチームとしての芯が作れずじまいでした。
 相手のボランチとCBの間を突く…というのは1つのテーマだったとは思うのですが、パスをつないでいってそこを突こうとするのか、サイドからクロスでそこを狙うのか、誰がどうやってどのように使っていくのかといったところを、安定して作ることができなかったかなと思います。
 唯一それが見えたのがちばぎんカップと9月前後の戦い方だったと思うのですが、我慢して継続し積み重ねることはできず。
 結局、個人での得点能力の高い選手に頼る傾向が強い攻撃になってしまった印象でした。
 9月以降のサッカーではその間を突こうという意識も選手達から見えませんでしたし、チームとして作れていたというのではなく、工藤の判断の良さで成り立っていた部分が大きかったようにも思います。
 だから終盤、工藤への批判も多かった気がするのですけど、個人的にはあまり納得はできませんでした
 確かに消極的な印象もあったけれども、可能性のあったあの戦い方を捨ててしまったのは選手ではなく監督の方ですし…。


 江尻監督としては、このチームの選手層が厚すぎることが逆に足かせになったような気がします。
 縦に突破できる深井や太田、パスをつないで飛び出せる工藤や勇人、個人での打開力で得点を奪うことが出来るネットや倉田、フィジカルで勝負できる巻や米倉…。
 多くの可能性があったからこそ悩んでしまったというか、それらをまとめ切れなかった印象があります。


 江尻監督の作ったサッカーは確かに大枠での「方向性」を考えると日本人(ジェフ)らしいサッカーだったとは思うのですが、それにしても曖昧な部分が多くて「方向性を作った」とまでは言えないように思います。
 ベクトルの角度としては正しい方向にあるとは思うのですが、その線をしっかりと一直線に繋ぐには最低でもスタート(チームのベース)と、現在地と、最終目標を明白にしてほしいところだと思うのですが、実際には今期を振り返ってもどれもばらばらで…。
 この「方向性」にクラブを乗せて進んでいくには、あまりにも不確定な部分が多すぎるでしょう。
 ミラー監督が今までのジェフとは大きく異なるサッカーだっただけに、江尻監督のサッカーが正しい「方向性」を作ったようにも見えますが、本来の「方向性」というのは独自性があるものではないと。
 とはいえ、来季に関しては個人的には早期の結果を求めるのであれば、その曖昧な「方向性」をよりはっきりとさせる形で、江尻監督のサッカーの延長線上のモノを作れればチーム作りの時間短縮になるのではないかと思いますし、そのためには実績のある日本人監督が良いのではないかなぁと私は思っていたのですが。



 江尻監督に関しては、少なくとも現段階ではJ1復帰に導ける力量のある監督ではなかったのかなというのが正直な感想です。
 ジェフへの思いが強く感じられた監督であり、それに関してはファンやサポーターとしてはとても嬉しいことだとは思います。
 ただ、それだけではクラブは良い方向に進まないこともあるというのもまた事実だと思います。


 個人的にはコーチやユース年代の指導者として、もう一度頑張ってほしいと思っています。
 それこそミラー監督のように長年リバプールのコーチを務めた指導者やユース年代のスペシャリストだっているわけで、トップチームの監督だけが指導者の終着点ではないと私は思いますし(ジェフでは残念な結果だっただけに、監督としてはどこもとってはくれないだろう…という現実的な問題もありますし)。 
 どういった道を歩むにせよ、江尻監督の今後の活躍を祈りたいと思います。


 さて、無礼千万な反省会。
 次回からは選手個々の話題に移りたいと思います。