町田が6ゴール目を上げチーム内得点数トップで折り返し

 愛媛戦で町田が今季6ゴール目をあげました。
 これで再びエウトンの5ゴールを上回り、チーム内得点ランキング単独トップでシーズンを折り返すことになります。
 ジェフ加入からこれまで長らく決定力不足に苦しんできた選手なだけに、この活躍には驚きも感じます。
 奇しくもジェフでポジションを争った大塚が川崎で結果を出し始めた年に、町田もジェフで結果を残し始めてきたことになりますね。



 町田が急に結果を出せるようになった理由は、いくつか考えられるのではないかと思います。
 1つには下半身の筋力が増したように見えること。
 未だにフィジカルコンタクトには弱いものの、シュートを放つ時にしっかりと踏ん張れるようになったことでシュートの安定性が増したように感じます。


 また、ダイレクトでのシュートを狙うようになったこと。
 ボールを持ち運んでからのシュートで大きく吹かすことが多かった町田ですが、以前からダイレクトでのプレーは得意な選手だっただけにうまくそれがはまっているように見えます。
 こぼれ球への反応やポジショニングも、良くなっているように思えます。



 上記の2つは以前にも話しましたが、戦術的にも今年のサッカーは町田にあっているように見えます。
 プレスからのハーフカウンターがメインということで、相手が引いて守る前に攻め込む回数が増え、フィジカルコンタクトを避けることが出来ている。
 また、プレスからのボール奪取も得意な選手であり、そのまま攻撃に持ち込めることも大きい。


 加えて今季は昨年のようなパワーサッカーではなく、船山や井出などを中心に足元で素早く仕掛けるサッカーを展開しているだけに、町田も良さが出しやすくなっているように思います。
 特に船山がサイドに移ってからは、船山がチャンスメイクもしてくれるしマークも分散される。
 その分町田はパスワークへの負担が少なくなり、ゴール前の仕事に専念しやすくなったことが大きいのではないでしょうか。
 また1トップのエウトンには強さがあるため、こぼれ球を狙いやすく町田との相性も良いように見えます。



 今季の町田はゴールを上げたことによって、自身を付けたといった精神面も大きいように思います。
 以前、祖母井さんが講演会の講演会を聞いた時、当時ドルトムントで活躍強いて香川が他の選手と何が違うのかと言うと、「自信を持ってプレーできていること」だと話していました。
 実際、マンUに移籍してからの香川は、以前ほどの自信を感じなくなったようにも見えます。
 特に前線の選手は、自信の有無が重要なのかもしれません。


 今季の町田の場合はゴールを上げたことによって自身を付け、更にゴールを上げて自信が増す…と良い循環に入っているところがあるように思います。
 実際、以前までも技術力はあるし、プレーの精度は高かった。
 けれど、ラストプレーだけは大きくミスし外してしまう…というところがあったわけで、一番足りなかったのはそこだったのかもしれません。



 だからこそ、若干心配なのは井出の方かなとも思います。
 一時期は好調でブレイクしかけていたようにも見えましたが、愛媛戦では3試合ぶりのスタメンだったものの、目立つプレーは少なかった。
 途中出場となった清水戦、北九州戦でも、思い切ったプレーはあまり出来ていなかったように思います。


 これも2試合スタメンから外れたことによって、勢いが萎んでしまったのではないかと思わなくもありません。
 若いアタッカーだからこそ勢いや自身が重要あり、それを大事にして欲しいところだと思うのですが、一度これで止まってしまったのかなと。
 関塚監督は以前にも調子の良い井出をスタメンから外して、井出を乗せきれなかったところがあったように思います。



 もちろん井出にも課題はあり、ビルドアップや守備面などでは山本などの方が計算できるでしょう。
 調子にムラがある印象もあり、左SHに船山を起用している分、左右のSHに攻撃的な選手を起用しにくいといった面もあるのかもしれません。
 もっともその分、両SBに守備を重視させているのではないのか…と思わなくもないのですが。


 あまり井出を信用していないのかなという印象は、以前から感じていました。
 それでも愛媛戦では再びスタメンに復帰したわけですから、期待している部分も当然あるのでしょう。
 しかし、東京V戦までは素晴らしい活躍をしていただけに、それ以降の起用法には疑問を感じなくもありません。



 トップチームの監督が若手育成において重要なのは、我慢することではないかと思います。
 細かな技術的な指導力などももちろん重要だとは思いますが、すでにプロ選手となっているだけにそこはある程度は身に付いている場合も多い。
 米倉がSBとしてブレイクしたもきっかけは怪我人が出たからでしたが、その後も鈴木監督が我慢して起用し続けたことが非常に大きかった。
 だから、米倉も鈴木監督に感謝の言葉を述べていたのでしょう。


 もちろん今後も井出にはチャンスがあると思いますし、ここから再び軌道に乗る可能性も十分あるでしょう。
 逆に町田が今後、調子を落とす可能性も否定はできない。
 シーズン前半が良くても後半から悪くなってしまっては将来に不安が残りますし、ここからが大事と言えるのかもしれません。



 もはや若手とは言い難い立場になりつつありますが、2人のような選手が波に乗っていけば"将来"と言わず、今季のチームも勢いに乗っていくのではないでしょうか。
 シーズン後半、二人がチームを牽引できるかどうか。
 以前にも話したようにまだ"ブレイクした"とは言いたくないですし、フルシーズンを通して安定した活躍をできるように期待したいと思います。

優勢に試合を進めるもミスから失点し2連敗

 J's GOALの記事によると、試合前に木山監督は「大きく変わったけどジェフはジェフだな」と話していたそうです。
 文章の流れからするとメンバーは変わったけれど、本質は変わらないというような意味なのかなと思いますが、実際にどういった意味で話していたのか気になるところですね。
 確かに戦術的にはあまり変わっておらず、課題なども大きな変化はないように思います。 
 実際の試合でも、これまでの課題が出てしまったところがあったように思います。


 しかし、個人的には「大きく変わったけど木山監督は木山監督」といった印象も受けます。
 愛媛では選手構成のせいもあってか前へアグレッシブなサッカーには変わったものの、細かな崩しは作れず引かれると弱い。
 今回の試合でもカウンター以外ではアバウトなロングボールが多かったと思います。


 愛媛ではスカウティングを評価されることが多いですが、ジェフ時代には相手対策がうまくいった印象はなかったと思います。
 これもやはり追われる側から追う側に、立場が変わったからなのでしょうか。
 上記の記事にもある通り昨年のジェフ戦は気合を入れて研究してきたようですが、昨日の試合ではジェフ対策も不発でしたね。
■ジェフが優勢も得点を決めきれない前半
 前節北九州では近藤が開始早々に負傷交代し大久保を起用したジェフですが、今節は近藤がメンバー外で若狭がスタメンに。
 アランダも不在で富澤と長澤がボランチ
 井出が3試合ぶりのスタメンとなり、山本がベンチスタート。
 ベンチには小池、勇人が久々に名を連ね、加入直後の丹羽もベンチ入りし、代わりに菅嶋、比嘉が外れました。


 愛媛もメンバーを変えてきており、右サイドの玉林に代わってパク・カンイルがスタメンに。
 河原が外れて安田が入りました。
 安田はそのまま河原のポジションに入り、阪野の1トップに安田と瀬沼の2シャドーといった布陣でした。


 
 立ち上がりから両チーム、ビルドアップが作れずシュートまで行けない展開。
 ボールを持つ時間が長いのはジェフでしたが、序盤は大外からのクロスが多くチャンスには結びつかず。
 しかし、愛媛もボール回しが遅く、縦パスが長くなり攻撃を作れません。


 10分には愛媛の攻撃。
 中盤の高い位置で左サイドの内田がボールを奪うと、素早くアーリークロス
 鋭いボールでしたが、中央であわず。


 14分にはジェフのチャンス。
 後方の富澤から右サイドの船山へ大きな展開。
 船山が1人抜いてクロスを上げ、エウトンがシュートを放ちますが、枠を捉えきれず。



 その後は愛媛が前からのプレスで若干流れを掴みかけますが、26分にはジェフの決定機。
 長澤がタメを作って、町田が右サイドで裏を取ってマイナスのクロス。
 フリーになった井出が低めの位置でダイレクトシュートを放ちますが、決めることが出来ず。


 29分にもジェフの攻撃。
 中盤のプレスからジェフがボールを奪い、後方から町田へ。
 町田がボールをキープして、最後はエウトンがミドルシュートを放ちますが枠外。



 この頃から愛媛は前からの守備がはめきれず、ジェフは楽に縦パスを出せるようになりました。
 愛媛はボランチや中盤付近にもスペースが出来て、ジェフの選手たちを捕まえきれない状況に。
 ただ、ジェフも完全に崩し切るといったところまでは作れませんでした。


 38分にもジェフの攻撃。
 町田が中盤で前を向いて、エウトンに縦パス。
 エウトンはマークに付かれながらも前を向きシュートを放ちますが、ゴール左隅を逸れました。


 後半アディショナルタイムには愛媛の攻撃。
 後方から林堂が長いボールを蹴り、阪野が落としてこぼれ球を小島がミドルシュート
 ゴール左隅を逸れましたが、これが愛媛の初シュートでした。
■ミスからの2失点で敗北
 エウトンのフィジカルを中心にジェフが優勢に攻めながらも、ゴールを決められなかった前半。
 しかし、後半開始直後。
 愛媛の何でもない裏への長いボールを、GK佐藤がまさかの空振り。
 これを瀬沼が詰めて1-0に。
 芝の状況が悪かったとはいえ、軽率なプレーだったと思います。


 その直後にも愛媛の得点。
 右サイドからのCKを頭で繋がれて、最後は安田がゴール。
 「ゴール前で頭で繋がれてはいけない」とよく言われますが、それを象徴するかのようなシーンだったと思います。
 また林堂がゴールライン際の折り返しましたが、GK佐藤がボールが切れると予測して油断してしまった。
 それによってゴールがポッカリと空いてしまいました。



 先に2点を失ったジェフは52分、多々良に代わって丹羽を投入します。
 それ以降ジェフがボールを保持する時間が続きます。
 前半同様に愛媛は引いて守りますが、縦パスを止め切れるわけでもなく隙はあったと思います。
 しかし、ジェフも工夫なく、シュートまで持ち込めない展開に。


 67分、ジェフは長澤に代えて山本を投入します。
 その直後、愛媛の小島が負傷し、河原に交代。
 安田がボランチに下がりました。



 73分には愛媛の攻撃。
 河原が中盤から浮き球のロングパス。
 これにGK佐藤が飛び出し一度は跳ね返しますが、クリアが甘くパクが拾ってシュート。
 無人のゴールとなりましたが、イと若狭が何とかゴール前でクリア。


 75分、ジェフは最後のカード。
 エウトンに代えてオナイウを投入します。
 しかし、その後も攻め手が見つかりません。



 82分、ジェフの攻撃。
 中盤からのFKを阿部が蹴ると、中央の競り合いからファーに流れて富澤に。
 そのままシュートを放ちますが、枠を捉えきれず。
 その直後、愛媛は阪野に代えて白井を投入。


 84分、ジェフが1点を返します。
 山本からオナイウを走らせる裏へのパス。
 中央へつなぐと、町田が走り込んでシュートを放ちゴール。
 丹羽への横パスをワンタッチで縦に出した、山本のパスが見事でした。



 89分、ジェフの攻撃。
 左サイド町田のクロスのこぼれ球を、富澤がミドルシュート
 しかし、相手選手に当たって枠外。
 そのプレーで得たCKをオナイウがファーで落として、町田がヘディングで合わせますが相手選手がブロック。


 試合終盤のジェフはパワープレー。
 後半アディショナルタイムにも、阿部のクロスから上がっていたイがヘディングで合わせますが、決めきれず。
 そのまま1-2で敗れてしまいました。
■ミスを乗り越えて成長できるか
 シュート数は、ジェフが14本で愛媛が4本。
 愛媛は試合を通じて、あまり良い内容ではなかったと思います。
 引いて守ってカウンターと言えば聞こえがいいですが、決して守備の状態は良くなかったというのが素直な印象です。


 この日の愛媛は2シャドーが低めの位置を取り、5-4-1のような状態だった。
 そのため前からのプレスも効かず、ジェフのCBとボランチは楽にボールを供給できた。
 その分後方が固められていればいいのでしょうが、パスコースも中盤のスペースも消し切れず、特に前半は楽に相手の間を取ることが出来ていた。



 加えて、愛媛は攻撃面でも良い展開を作れなかった。
 縦パスは長いボールばかりで、確率の低い攻撃が多かったと思います。
 それがシュート4本という結果に繋がったのでしょう。


 攻撃が作れないから守備の時間が長くなり、さらに苦しい展開になっていった。
 おかげでジェフがプレスを求められる時間帯も、守備力が要求されるのような展開もほとんどなかった印象です。
 そのあたりが、ジェフが試合を優位に進められた一番の要因でしょう。



 しかし、ジェフもそんな愛媛相手を崩し切れなかった。
 シュートは多かったものの、ミドルシュートやセットプレーからの攻撃が多く、完璧な決定機は少なかった。
 攻め込んでも、アタッキングサードでの雑さが目立った試合だったのではないでしょうか。


 ゴール以外での決定機は14分の船山のクロスからエウトンが合わせたシーンと、29分の町田のクロスから井出が合わせたシーンくらいだったと思います。
 どちらも右サイドで裏を取ってのマイナスのクロスということで、ここはジェフのスカウティング通りだったのかもしれません。
 しかし、マイナスのクロスに合わせるということで、シュートコースはそこまでなかったようにも思います。


 前半はエウトン個人の強さによってシュートまで持ち込める場面も作れましたが、完全な決定機ではないだけにシュートは難しいものが多かった。
 愛媛の守備は曖昧な部分も多いだけでなく、強さのある選手たちも少ないないだけに点を奪えるチャンスはあった印象です。
 それだけに、1点に終わったことが非常に残念な試合でした。



 しかし、実際に試合を決定づけたのは、GK佐藤のミスによる失点だったと思います。
 佐藤はこれまでの試合でも決して足元がうまくはなく足が速いタイプでもないのに、積極的に前に出て危険な展開に繋がっていたことがあります。
 もちろんあの場面では前に出るのが正解だったとは思いますが、ダイレクトでクリアを狙う必要があったのかといった疑問がありますし、もっとセーフティーに処理できたのではないかと思います。
 2失点目も先制点を浴びてチーム全体が失速してしまった問題はあるとは思いますが、佐藤の対応もまずかったと思います。


 佐藤は前節も失点につながりかねないミスをしていますし、一度休ませた方が良いのではと思わなくもありません。
 しかし、キャプテンであるということを考えると、変えにくいところもあるのでしょうか。
 もちろん、他のGKがいるのかといった問題もあるのでしょうが。



 GKだけの問題ではない部分もありますし、GKは1つのミスが大きな失点につながる難しいポジションでもあるとは思います。
 ただ、ミスはミスとしてはっきりと評価した上で、次に進まなければ成長はない。
 それがプロのサッカー選手というものだと思いますし、しっかりと反省して次につなげてほしいと思います。

 
 ジェフが優勢に進めた試合ではあったと思いますが、アタッキングサードの拙さを考えれば、あのミスがなくても試合に勝つのは簡単ではなかったかもしれません。
 ただ、あのミスが大きな分岐点だったのも事実。
 ああいったミスも受け止め乗り越えた上で、さらに成長を遂げることできるかどうかが、選手としてもチームとしても大事なところなのではないでしょうか。